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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
侍の里 剣聖の師は無職

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第9話 重要な小噺

 「ルル殿。その小鳥は?」

 「いや、それがですね。庭の木に引っかかってるところを助けたら懐いてきましてね。オレの肩を住処にしやがったんですよ。そしたらね。こんな感じになりました。はい、すみません」

 

 ブランさんに聞かれたのでオレはこんな感じで適当な言い訳を並べた。

 すると。


 「余の住処はここじゃないのじゃ! 帰りたいのじゃ。いつか! 帰らしてくれなのじゃ」

 

 ああ。そうですか。

 と思ってもオレは口には出していない。

 どうやらこの声はオレにしか聞こえないらしい。

 だから、ここで会話をしてしまったら、皆がオレのことを不気味に思うだろう。

 だから、無視をしたのだ。

 でも、この鳥、うるせい! 

 ずっとうるさい。黙ってる時間がないわ。


 それにこれがもし、オレの心の声とかだったりしたら、やばいよ。

 オレの頭、どうかしたのかもしれない。

 

 「元気な鳥さんですね」


 ルナさんはこう言ったので、おそらくレミさんの声は、皆には『ピーピー』と鳴いているように聞こえているのかもしれない。


 「鳥! 拙者の肩にも乗るか!」

 

 修行の疲れが癒えたのか、元気になったアマルはこう言ったので。


 「ほれ、レミさん。行きなよ。アマルのところにさ」

 「おお。レミさんというのか」

 「そうみたい」

 「?????」


 オレの言い分のせいでアマルが混乱した。

 オレの言い方だと、レミさんという名をオレがつけた感じがしないからだ。


 レミさんは大人しくアマルの肩に乗る。

 アマルは意外にも動物が好きみたいで、頭を撫でたりして嬉しそうにしていた。

 こいつ基本がクソガキだけど、本当は心優しい子ではないのかとオレは思った。

 動物好きに悪い奴はいないのである。

 勝手な自論である。


 

 「綺麗で賢いな。レミさん!」

 「おお! この小僧は見込みがあるのじゃ。なんでこっちに声が聞こえないのじゃ。ちょっとなんでじゃ、そちは余の話をよく聞くのじゃ。おい! そち!」

 「どっちかと言ったら、オレもそう思うわ」

 

 オレはレミさんについついツッコミを入れてしまった。

 オレの話の中身が、奇跡的にアマルの話と噛み合ってよかった。


 「ん? どうしたおぬし? 疲れているな」

 「ああ、気にすんなアマル! これは独り言よ…‥いいか。ここでは、お前の疲れが取れればいいのよ。オレの事は気にすんな」

 「そ、そうか。でも・・・大丈夫か? 顔色が・・・」

  

 アマルが気にしてくれたが、オレはこの小鳥が気になって疲れが取れません!!

 むしろ、元々そんなに疲れてなかったのに、疲れがどっと出てきた気がした。

 

 「レミさんは、ご飯は食べるのか」

 「そうだな・・・食べるのかな?」

 

 オレは疑問に思う。

 この小鳥、普通の鳥じゃないよね?

 ご飯って食べるの?


 「食べるのじゃ!! ご飯、食べたいのじゃ!!!」


 レミさんはアマルの肩の上で翼を広げて踊っていた。


 「食べたいらしいよ。どうする?」

 「今、鳥用の餌はないぞ。普通のご飯しか」


 しょんぼりしたアマルは悲しそうに下を向いた。


 「普通のご飯でいいのじゃ・・お米くれ!」

 「アマル、米でいいんだってさ」

 「え? 鳥に? それは・・・さすがに・・・喉が詰まるんじゃないのか」

 「だよな」


 オレもアマルと同じ意見だった。 

 でも。


 「食べられるのじゃ! 余はレミさんなのじゃ!」

 

 ああ、そうですか。

 と思ったオレは、ご飯粒一粒を丸めて。

 レミさんにあげてみた。


 「うまい。うまい。うまいのじゃ!」

 

 ほう。よかったですな。

 美味しそうに食いやがっています。


 「アマル。食えるみたいだぞ。ご飯粒!」

 「おお。では拙者も」


 アマルが世話し始めたおかげで、満足そうにレミさんはご飯をバクバク食べていった。

 嬉しそうにしているアマルを見て、今日のオレは晩御飯を食べたのであった。



 ◇

 

 食後。

 レミさんはオレの肩に乗った。

 そっちいけよ。

 って思ったけど、レミさんは話の通じるオレが良いみたいである。

 当然か。

 話せないよりは話せた方がいいもんな。

 

 「あ! レミさん」

 

 寂しそうな顔をしたアマルにオレは、


 「アマル。明日もレミさんを連れて来てやるから。今日はここらでな」


 約束をした。


 「そうか。じゃあ、我慢しよう」

 「おう。お前はいい子だな。じゃ! ちょっとオレ、疲れてるみたいなんで寝るわ。ブランさん、ルナさん。先に寝ますね。すみません」

 「我らはお気になさらず。ごゆっくり」

 「ルル、疲れているなら早めに眠るのですよ~」


 二人はそう言ってくれたので俺は早めに寝ることにした。

 部屋に入って布団に入って数秒後・・・。


 「なに、寝ようとしてんのじゃ! そちはまだ不思議体験の真っ最中じゃろ」

 「うっさいわ! オレはね。不思議過ぎて寝ようとしてんの! 疲れてるかなって思ってな!!!」


 頭の上でレミさんが騒いでる。

 やかましいったらありゃしないので、オレは布団から飛び出した。

 レミさんの前で胡坐を掻く。

 

 「話聞け! 小僧!」

 「オレは小僧じゃない。ルルロアだ。ルルだ!」

 「そうか! じゃ、ルル!」

 「なんだ。レミさん!」

 「助けてくれじゃ」

 「またそれかい! ってやっぱ同じことを繰り返しているみたいだから・・・これはきっと夢の中だ。そうだ。そうなのだ! ということで寝よう。きっと夢なんだ」


 オレはまた布団に潜り込んだ。


 「夢じゃない!!!!! のじゃ!」

 「ぐべ」


 レミさんは、オレのお腹にダイビングしてきた。

 びたっと羽を広げている。


 「なんで、あんた強いのよ」

 「当り前じゃ、余は神鳥じゃ! そんじょそこらの鳥とは違うのじゃ」

 「ああ。はいはい。そういう設定ですね・・・」

 「設定じゃない! のじゃ!」

 「ぐべ!」


 レミさんの小さな体のボディプレスでオレの身体はワンバンした。

 威力絶大である。


 「いてえ。レミさん、割とマジで加減してくれよ。オレ、人間だよ。神様ならもう少し加減しなさいよ」

 「む、スマンのじゃ。久しぶりに誰かと話せたので、テンション上がってしまったのじゃ」

 「そうですか・・・それはお辛かったですね。お久しぶりでしたか。何年ぶりですか?」

 「そうなのじゃ。かれこれ、もう何百年年以上も・・・・話してないかもじゃ・・・」

 「そうでしたか。ってことで、オレは明日も話してやるから、寝るわ」

 「おい! 何隙あらば寝ようとしてるのじゃ」

 「ああもう。うっさい鳥だわ」

 「なんだと。余はレミ、あ・・・じゃなかった。レミさんじゃ」

 「ああ。はいはい。レミさんはお偉い方なんですね。では」


 布団掛けに手をかけると、レミさんが暴れ出す。


 「ではじゃないのじゃ。また寝ようとするなじゃ」

 「んもう! なによ。うるさいなぁ~。もうやかましいったらありゃしないわ」

 「話聞くのじゃ。ルル!」

 「はぁ~。しゃあねぇ。じゃあ、どうぞ。お話ししてください」

 「うむ・・・」


 レミさんは、オレの腹の上で話し出した。

 謎の小鳥レミさん。

 訳あって力を失った姿となったらしい。

 本当のレミさんは、神鳥と呼ばれていて、薄い紫じゃなくて濃い紫の体だったらしい。

 大きな翼と威厳あるその姿から神鳥と呼ばれたんだそう。

 それで、力を失った状態では故郷に帰れないので。

 力を取り戻したいらしい。

 そうするためには、とある場所に連れて行ってくれとのことだった。


 「んで、それはどこよ。寝たい」

 「本音をしまえなのじゃ。寝たいは余計じゃ」

 「ほれほれ。どこよ。眠い」

 「だから眠いも余計じゃ。はぁ。もういいのじゃ。余が行きたいのはジークラッドの聖なる泉じゃ!」

 「ん? どこよ、そこ?」

 「知らんのじゃ?」

 「知らん!」


 レミさんが言った場所は、頭の中に浮かばせた世界地図の中にない場所だった。

 やっぱ妄想か。

 オレの妄想のせいでこの鳥と会話出来ているのか。

 そう思った。


 「やっぱ疲れてんだな。知らんもん。そんな泉とその場所」

 「ジークラッドを知らんのじゃ? ここより北の大陸じゃぞ」


 ジョーよりも北って・・・・まさか。


 「は? 北の大陸? ここより北っていやあ、魔大陸の事か?」

 「魔大陸??? ジークラッドじゃぞ?」

 「待ってくれ。レミさん。ジークラッドって薄い白のベールに包まれた先にある大陸の事か?」

 「そうじゃぞ。ファイナの洗礼を超えるのじゃぞ。知らんのじゃ?」

 「ファイナの洗礼。ん? なんだそれ。やっぱオレって夢を見てるんか」


 目を擦ってみた。

 レミさんは存在している。

 真っ直ぐな瞳でオレを見つめている。


 「夢じゃないのじゃ! あれはファイナの洗礼と言って、かつて、ジークラッドにいた英雄らが作ったのじゃ。今もジークラッドの民が維持しておると思うのじゃがの。そうじゃ。こっちの人間って、大陸間移動できておらんじゃろ?」

 「そうだ。移動方法が分からんのよ」

 「まあ、こっちの人間があっちに行ってもいいことないんじゃ。おそらく昔の人間は移動方法を伝授しなかったのじゃな」

 「そうなんだな・・・・って、移動方法があるのか!」

 「何個かあるのじゃが、言えんわ。あっちの子らが必死に守っておるし、こっちの子らがあっちに行っても可哀そうじゃしな。だから、こっちの人間はいかん方がいいのじゃ」

 「はあ。そうすか・・・じゃ、オレってレミさんを手伝えないじゃん」

 「なんで、そうなるのじゃ」

 「だってあなたが言うこっち側の人間ですよ。オレ! ということはそちらには行けないので、ジークラッドの聖なる泉とかいう場所にあなたをお連れできません。なので寝ますね。おやすみ!」

 「おお。おやすみ・・・そうじゃな・・・そういうことになるじゃな・・・・いやでも、無事に突破する方法があるのじゃが・・・っておい! 何、寝てんのじゃ!! もうちょっと話してけろじゃ」


 こうしてオレは、レミさんの尋問に耐えて眠ったのである。

 レミさんが言う事が本当だとしたら、オレはとんでもないことを聞いたような気がした。

 

 魔大陸に名称があったのか。

 ジークラッド大陸。

 聖なる泉。

 ファイナの洗礼。

 聞いた事のないワードがたくさん出てきたようだけど。

 オレはもう疲れているらしいから、明日の元気なオレに考えてもらう事にして、早めに寝たのである。


 

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