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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
無職の再出発 大王の先生編

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第22話 変わり者のスキル

 ジャックは軍施設を見上げて目を輝かせた。


 「うわあ。大きな施設ですね。あそこに兵士さんたちがたくさんいますね」

 「そうだな」


 自分も子供の時に来た時はこの施設の大きさに驚いたっけ。

 ちなみに、オレが目を輝かせていたかは、自分の事だから分からない。


 「う~す。ルル。早速来たか」

 「あ。師匠。わざわざ出迎えをしてくれたんですか。そんなことしなくても、こちらから師匠の所まで行ったのに」

 「なぁに。子供連れで来るんだ。いくらお前が出入り自由でもな。『なんで?』って兵たちがなるだろ」

 「確かにそうですね」

 「だから。俺が重要ってもんよ。な! ガキども」

  

 三人が口を開けて驚いていた。

 ほぼ同時に、顎が外れそうになっている。


 「ああ。そうか。この子らも一緒か」


 オレも思ったことをこの子らも思っているんだと思った。

 そう。師匠が先生と目以外が瓜二つである事だ。

 この驚きは誰しもが通る道だろう。


 「だ、だれですの・・・ホンナーさんでは」

 「先生?」

 「む~~~むむむ」


 大体言いたいことが分かるのである。


 「こちらの方は、ホンナーさんの双子の弟のグンナーさんだ。オレの師匠でここの軍の優秀な司令官だぞ。挨拶しな。練習した通りにだぞ」

 

 三人の背を押した。

 

 「ホンナー先生ではない・・・ぐ、グンナーさん?・・・・わ、私は、ジャックです」

 「むむむ!!!」

 「ワタクシは、フ、フレンでありますわ」


 師匠は三人の顔をじっくり見て笑った。


 「おうよ。俺はグンナーだぞ。お前らの先生の弟だ。お前があの……そうかじゃあ、お前は今、フレンと言えて偉いな。ここではそれで通せよ」

 「は、はい」


 先生と同じ顔だから、フレデリカは素直に返事をした。


 「こっちがジャックか。なかなかだな。いい感じに育ってんな」

 「へ? あ、はい」

 「まあ、そんなにかしこまんなって」

 「ぐっ・・・ぐ」


 師匠はジャックのほっぺたを引っ張った後にクルスを見た。

 

 「で、こいつがクルスだな」

 「む!!」

 「そうか。マジで話さんのな。聞いてた通りだ」

 「むむむ!!!」

 「でもまあ、こいつが一番伸びるな・・・おもろいぞ。ガハハハ」


 師匠はクルスをそう評した。

 師匠には、軍師のスキル『成長曲線』というスキルがある。

 これは、相手の成長の余地を知ることができるというスキルで、軍師を極めた者に得られる特殊スキルだ。

 師匠は軍師としては基本のジョブだが、能力的には上位の軍師と変わりない努力の人であるのだ。


 「そんじゃ、いこうか。マインに案内させるからな。マイン!」

 

 訓練場で兵士訓練をしていたマイン補佐官が、小走りで入口まで来た。

 敬礼をして、師匠に挨拶する。


 「はっ! グンナー司令お呼びでしょうか」

 「おう。マイン。この三人を案内してくれ。こいつらは兄貴の生徒だ」

 「そうでございますか。ホンナー様の。では案内します。お三方、私についてきてください」

 

 マインさんの朗らかな笑顔に三人の緊張が解けたらしい。

 彼女に大人しくついていった。


 「で、なんのようだ? 兄貴があいつらを寄こすって急に言って来たからな」

 「それが・・・指令室お借りしてもいいですか?」

 「そうか。わかった。いいぜ」


 

 ◇


 指令室にて。

 オレと師匠はテーブルに対面に座る。

 紅茶が大好きな師匠は、オレの分も入れてくれた。

 美味しい紅茶を一口すすりながら、会話する。


 「師匠。あの子に視線が入ってるの。気付いていますか」

 「・・・そうだな。斜めから入ってる気がするな」

 「師匠も、先生と同じことを言ってますね」

 「お! 兄貴もそう言ってたか。なら、予想じゃなく、正解でいいな」


 ずっと感じていたが、師匠は先生のことをかなり信頼している。 

 双子であるから似たような考えだろうけど。

 どっちかというと自分の勘よりも先生の勘を信じているような気がするんだ。


 「そうか。その視線の在り処が知りたいんだな。わかった。リョージを呼ぶ!」


 師匠は索敵と通信のスペシャリストを呼んだ。

 部屋に入ってきたリョージさんは、部屋の外ですればいいもののいきなりあくびをした。


 「ふわぁ・・・指令。なんすか」

 「お前。今寝てたな。昼寝してたな。リョージ」


 寝て起きたばかりなのが一目瞭然に分かってしまう。

 リョージさんは、金色の髪を爆発させていた。


 彼は索敵と通信のスペシャリストで、『通信士』という特殊職である。

 一度俺も勉強させてもらったけど、この人のスキルは会得出来なかった。

 おそらく、この人の考えを理解できなかったからだ。

 掴みどころのない性格の人なのだ。


 「で・・・なんすか。司令。怒るのはナシっすよ」

 「呼び出したのは説教じゃない。お前に協力して欲しいのよ」 

 「ん?」

 「索敵してくれ。人を探し出して欲しい」

 「人を? そうすか……どこらへんの町すか。それとも洞窟とか、ダンジョンすか。どこに出向けばいいんすかね」

 「いや。ここだ。ここにいるからよ」

 「げ!? え。ここ軍施設っすよ。もしかして敵の侵入を許したんすか」

 「いや違うんだ。なんか視線があるんだよ」 

 「視線がある?」

 「ああ。ルルも俺も兄貴も、あそこで見学してる女の子にな。ちょっと刺すような視線を感じるんだよ」 

 「ほんとすか・・・どれどれ」


 指令室の窓からリョージさんは、訓練所にいるフレデリカを見た。

 ジーっと見ている視線はどんどん上に流れていく。


 「ほんとすね。何かが見てますね」

 「だろ。頼むわ」

 「そうですね。女の子に視線がいくのは良くないっすね。教育上! しかもまだ子供ですよ。絶対に見つけましょう! さてと……どんな変態が待ち受けているのやら。ロリコンかな」

 「いや、そんなんじゃないんだけどな」


 師匠が呆れるくらいにリョージさんは掴みどころがないのだ。


 「いきますか。オープン!」


 独特の空気が指令室中に充満する。

 彼のスキルが展開された。


 「くっ。かなり上にいるんすね。円じゃ駄目だな。長方形で追うか。それに大きくないと、駄目かも。よし。チェンジ」


 リョージさんのスキル。

 『探知領域展開』

 これは人を探し出すスキルである。

 リョージさんのイメージする形で、範囲内の人を探しだせるという便利スキル。

 このスキルは、直接攻撃を仕掛けるものではない。

 ただ単に人を探すだけのスキルなのだ。

 しかしながらこのスキル、探知系統としては抜群に優秀で、『忍び足』や、『隠れ蓑』の様な隠れる系統のスキルや魔法すらも無効化できて、人物を探ることが出来るのだ。

 リョージさんは、施設内の人間を選別し始めた。

 

 「うう・・・ここも違うな。建物二階は兵士だけ・・・三も・・四も・・・屋上は誰もいない・・・まだ上なら空か・・・まさか。どうやって」

 「リョージさん?」


 リョージさんは窓から空を眺めた。


 「と、飛び跳ねている!?」

 「なに!?」


 師匠が驚き。


 「え。まさか。空を!?」


 オレも慌てて、リョージさんが見ている先を見た。


 「リョージさん。どこらへんですか。オレも目で捉えたい」

 「おお。ルル、いたのか。ビックリしたぞ」

 「いや、いたのかってね。最初からいましたよ。リョージさん。で、どこらへんですか」

  

 本当に掴みどころがない人だ。


 「・・・あそこらへんだぞ」

 

 リョージさんが空を指さした。


 「わかりました。スキルを展開します」


 スキル『鷹の目』を発動。

 ロックハンター初期スキル『鷹の目』

 一度視認した物をロックする。

 解除するまで、視線を送らずともずっと追いかけることが出来るハンターでも最高クラスの視認スキルだ。


 「いた! なに!? 人が飛んでる!?」


 オレは人が飛んでいるという光景に驚きを隠せなかった。

 曇り空の中で、人が空中で反復横跳びをしていたのだ。


 「師匠。オレだけで上に行きます。屋上であいつを捕まえるので、フォローはいりません。秘密裏にやります。指令室から見ていてください」

 「おう。任せた。ただ無茶はすんなよ」

 「わかりました。いってきます」


 敵を捕えるために、オレは指令室から屋上へと向かったのである。


 

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