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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
無職の再出発 大王の先生編

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第19話 英雄と無職 ⑥

 初手から全開。


 「雄叫び(ウォークライ)。おおおおおおおおおおおおおおおおお」


 オレの声が洞窟内を駆け巡る。

 雄叫び(ウォークライ)の敵を引き付ける効果は、耳だけでなく目も肝心だ。

 だから、目の前にいる奴らにだけしかこのスキルは、効果がないのだが、それでもオレは怒りに任せて叫んでいた。

 冷静な判断はここになかった。


 十三体のゴブリンが一斉にこちらを見て、オレを敵と認めた。

 圧倒的な数の違いを感じているから、余裕の笑みがある。


 「おい。自信がある奴から、かかってこいよ!」


 脇差を抜いて、仁王立ちに構える。

 この構えを『無』と呼ぶらしい。

 ルナさん曰く、敵からカウンターを取りにいくには、一番反応がいい状態にすることが大切であると口酸っぱく言われて、嫌という程に体に叩きこまれた。

 

 彼女は、パンケーキを食べられなくても、オレに技を教えてくれたんだ。

 師匠が絶対に奢ってくれないのに、教えてくれたんだ。

 なんて、可哀そうな人なんだ。

 

 と余計な事を考えてしまったオレは、右手に脇差を持ったまま立ち止まった。 

 そこに一気に雄叫び(ウォークライ)に釣られてきたゴブリンが襲い掛かってくる。 

 右に左に上に下にと、オレの視界いっぱいに映るゴブリンたちは、臆することなく挑んでくる。

 それらを、オレは全て斬る。


 「花は咲けども、実りはしない。桜花流 枝垂桜」


 と同時にスキル『片手剣』を発動した。

 軽戦士の初期スキル『片手剣』

 片手武器に対する能力上昇。扱いもスムーズになる。

 オレは、さっき出した雄叫び《ウォークライ》で戦闘能力をさらに強化している。

 その上で、片手剣が重なって、枝垂桜を発動。

 ルナさんのカウンター技は、最強のカウンターに変化した。

 桜花流、乱れ桜は移動型の連続攻撃で。

 枝垂桜はカウンターの連続攻撃である。

 


 「ぎゃ」「ばひゃ」「どぐ」

 

 奇声を発して近づくゴブリンたちは、オレに飛び掛かると、両手両足だけを斬り落とされる。

 胴体だけのゴブリンが仰向けに倒れた。

 十三体が同時に呻き声をあげた。


 「「「「あああああああああああ」」」」


 まだ生きている。オレはわざと生かした。


 「お前らに地獄を見せると言ったんだ。まだ生きてもらわなければならん」


 そう吐き捨てるように言って、ママルさんに駆け寄った。


 「ママルさん! 大丈夫ですか」

 「・・あ、あなたは・・ルルロアさんの声?」


 目隠しされた彼女は状況を把握できていなかった。


 「ええ。大丈夫です。今、目隠しを取ります。あとマジックボックスから上着を取り出すので、着てください。こいつらのせいで服がないですから」

 「ああ・・・はい。ううう」

 

 ママルさんの目隠しを外してあげると同時に、目からぽろぽろと涙が出た。

 攫われた恐怖を思い出しての事だ。

 これは仕方ない。一般の人には、ゴブリンは怖いはずだ。

 それに襲われる時には、目を隠されていたんだ。

 その恐怖は、倍増になっていたかもしれない。

 

 「ひぃえ。ゴ、ゴブリンが・・・」

 

 目を開けることが出来た彼女は、仰向けに倒れるゴブリンの姿に驚いた。


 「ええ。全部倒しました」

 「こ、殺してない・・なぜ」

 「これから地獄を見せるので、わざと生かしてます。あと少し、ここで待ってもらってもいいですか」

 「…は、はい」

 

 脇で死んでいる人たちを廃棄用のマジックボックスに収納。

 遺体回収をして見た。

 オレは、実際に出来るかどうかわからないけど、試しにやってみたのだ。

 死んだ人を持ち帰ることは、軍でもほとんどできなかったことだ。 

 あのモンスターウエーブの時は、モンスターのせいで戦場がぐちゃぐちゃにされてしまい、誰が誰だかわからないし、そもそも遺体の損傷が激しくて、連れて帰っても無駄であった。

 でも今回の死体の損傷程度であれば、行方不明者を探している人が分かってくれるはずだと思った。

 持って帰れば、この人たちの魂が安らかに眠ってくれると思う。

 それに、帰ってくると信じている人たちの為にも、オレは遺体だけでも持ち帰ろうと思ったんだ。



 「それでは、ママルさん。今から暴れるので、オレのそばにいてもらえますか。あなたを守りながら、戦いますから。信じてもらえますかね?」

 「は、はい?」

 「ここにいる全てのゴブリンをあの状態にします。そして・・・こうです」


 マジックボックスから四角の小さな箱を取り出した。

 上部に導火線がついている爆弾を設置する。

 オレの最強の隠し武器で、地形破壊に使うものだ。


 「そ、それは、なんですか?」

 「小型爆弾です」

 「ば、爆弾!?!?」

 「ええ。こいつで、この洞窟を木っ端みじんに破壊して、二度とゴブリンたちが住めないようにします。たぶん、ここで全滅させただけでは、おそらく外部からまたゴブリンみたいな奴がここを根城にするでしょう。だったら、ここを一生使えないようにします。もう二度と同じ事件を起こさせない! 今後の治安を守ります」

 「・・・え、ええ????」


 驚きすぎて顎が外れているママルさんは、果たしてオレの話を信じてくれるのだろうか。

 ちょっと不安だけど、準備をしていく。

 

 オレが持つこの爆弾は、これもスキルで作ったものだ。

 『道具屋(ボマー)』の上級職の一つ『爆弾兵(ボマー)』が持つスキルだ。

 爆弾兵(ボマー)の初期スキルは、『爆弾作成』と『遠投』

 二つとも名称通りの効果である。

 単純な分、器用さと腕力と背筋力が必須のスキルたちである。

 


 「ついてきてください。おねがいします」

 「は、はい。わかりました。こ、こちらこそお願いします」 

 「ええ。大丈夫です。オレを信じてください。怖かったら、こっちの左手を握ってもらっても大丈夫ですよ。それでも守りながら戦えますからね」

 「そ、それなら。お願いします」


 頬が少し赤いママルさんは、オレの手を嫌がらずに握ってくれた。


 しかしこの行為、少しでも彼女の不安を取り除こうとしたのだが、なんだから彼女の脈が心なしか速いように見える。

 診断で状態を把握しているから分かる。

 オレは彼女を余計に緊張させてしまったかもしれないと思って反省した。


 

 そして、オレたちは洞窟内を回りながら、主要の箇所に爆弾を設置。

 爆弾の設置場所付近には、四肢を切り落としたゴブリンも設置。

 オレはわざとゴブリンをそこに配置していた。



 ◇


 二人で洞窟を出る。

 

 「ルルロアさん。こ。ここから。どうするんですか」

 「はい。この洞窟に一個目の爆弾を遠投します。洞窟の壁にこれさえ当たれば、そこから一気に壁が崩れていきますからね。その衝撃で他の爆弾も連動していきます。それで洞窟全体を完全破壊しますよ。では、衝撃が凄いので、耳を塞いでください」

 「わ、わかりました」


 洞窟に体を向けて、スキル『遠投』を発動させる。


 「んじゃ。死にな。ゴブリンども。動けないその体で、自分と仲間が潰れていく様を最期の時まで見るんだな! ここより貴様らに地獄を見せる」

 

 ゴブリンの最期を想像する。

 動けない体で、迫る天井の壁を見る。

 自分が潰されなければ、次々と仲間たちの悲鳴が聞こえるだろう。

 これは、奴らがオレたちにやってきたことのお返しだ。

 やったことはやられる。

 倍にして返されるのだという事を思い知れ。


 「くらえ! 爆弾投擲だぁあああああああああああああ」

 


 剛速球で投げた爆弾は洞窟の中ではじけ飛んだ。

 洞窟内部に轟音が反響して、入口付近に爆風と共に跳ね返って来た。


 洞窟内にある音圧と風圧の中に、ゴブリンの悲鳴が混じっている。


 「それが地獄だ・・・でも貴様らの罰としてはまだぬるいな。しかし、今のオレだと、こんな技しか出来ないのが残念だ。許せん!」


 無念である。

 オレがもっと強ければ、もっといい手があったのかもしれない。

 彼女をおんぶして皆の元へと移動している間、そんな事を思っていた。



 ◇


 「な、なんだ。エルの魔法か?」


 ミヒャルは大きく揺れる地面に驚き、エルミナに聞いた。


 「違います。私の魔法は、モンスターの肉体を消滅させても、地形に変化を起こすような衝撃のようなものはありません」


 エルミナは、しっかりと答えた。


 「じゃあ、なんだよ。これはすげえ揺れだ」

 「・・・下だ。音がする。爆発したような音・・・」


 イージスが聞き耳を立てて、原因を探る。

 五感に優れる仙人は、下の振動の原因を聞き当てた。


 「なんだって。何が起きたんだ。こいつはよ」

 「下というと、ルルでは? ルルは斜面を下りましたよ」

 

 エルミナはルルロアの顔がすぐに浮かんだ。

 このような大規模な事を起こすのはあの人しかいないと思っていた。


 「そうか。ルルか。なんかしでかしたな。あいつ、怒ってたもんな」

 「ええ。女性を攫ったのです。ルルならば当然に怒るでしょう」

 「そうだな。あいつって優しいからな」

 「・・・当然だ・・・ルルは優しい・・・おらが寝てても怒らない」


 イージスは本気でこう思っていた。


 「「いやそれは・・・いつも怒ってるような」」


 ミヒャルとエルミナは、同じ感想が同じタイミングで出た。 

 

 

 ◇


 「くらえ! このでかぶ・・・つ・・・って、何だこれ」


 レオンとオークキングが、ぶつかり合う寸前。

 突如として足場が揺らいでしまう。

 激しく揺れる地面に対応しようとレオンは動きを止めてバランスの立て直しを図った。

 

 揺れに対応したレオンが、目の前のオークキングを見ると、そっちは大きくバランスを崩しているのが分かった。

 体が大きい分、踏ん張りがきかなかったようだ。


 「こいつはチャンス! まあ、なんだ。どうせ、この地震もどきは、ルルの仕業だろ」


 こんな異常事態を引き起こすのは、どうせルルロアだろう。

 勇者レオンは今の現状に動じていない。


 「だったらなあ。ここまでお膳立てしてもらったんだ。俺が倒さねば、いかんな。仕切り直していくぜ。デカブツ!!!」


 レオンは揺れている地面を蹴って、大きく飛び跳ねた。

 

 「くらえ。勇者の剣(レオンハート)


 三色に輝く剣が、オークキングの頭上に入ると、そのまま真っ二つに切り裂いた。

 勇者レオンは、鋼のような防御力を誇っていたオークキングをいとも簡単に斬り伏せたのであった。


 「よっしゃ。俺もCランク位は倒せるってことだな。ってはぁ~。疲れた」


 レオンは、自分の実力に満足して剣を納めたのであった。



 ◇


 こうしてオレたちの最初のクエストは、成功に終わった。

 しかし、達成したのは良かったのだが、これが前人未到の領域になってしまったのが大変な事に繋がる。

 それがどういう事かというと。


 本来。

 オレたちのクエストランクは、Dランクの護衛任務だった。

 Dランクの護衛任務のモンスターは、通常Eランク相当の出現レベルでなければならない。


 なのに、今回の依頼はそのレベルのものじゃなく、Dランク帯のモンスターであった。

 ならば今回の依頼は、本当はCランク相当の護衛任務となる。


 しかし、ここで問題が重なっていく。

 それが、今回の戦闘は、モンスターパレードであったことだ。

 モンスターパレードで出現するモンスターのランクが、たとえEランクであったとしても、四級の冒険者だけで遭遇した場合は確実に死である。

 それがモンスターパレードというエンカウントバトルである。

 量に対抗できずに何も出来ずに死ぬのが通常なのだ。


 そして、今回出てきたモンスターパレードのランクは、Dランクで、その上で護衛任務であった。

 ということは、護衛任務のランクとしては、二つ難易度が上がってBランク相当の任務となるのだ。


 そして、また問題がある。

 レオンが対峙したモンスターだ。

 あれはCランクだった。

 これもまた護衛任務の中に組み込まれるので、任務ランクはまたまたBランク相当となる。

 

 よって、俺たちはこの護衛任務を同時に二つ引き受けたのと同じ事になり、準一級冒険者以上の実力がある四級冒険者だとギルドの人々に評価されることになった。


 だからギルドに帰った後の冒険者ギルドでは、お祭り騒ぎとなった。

 褒め讃える職員を宥めるのにレオンは苦労していた。

 ざまあみろ。

 と思う反面、オレは誇らしげになっていた。

 大切な友人が、皆から賞賛されるのがとても嬉しかったんだ。



 そして。

 レオンたちはこの事で、ランクが一気に駆け上がって、二級冒険者となった。

 初クエスト達成だけで、二ランクアップは冒険者にとって初の出来事だった。

 それほどの偉業である。


 レオンたちが二階級もいきなり上がったのは、より早く上位の任務に就いてもらおうとするギルドのお偉さん方の思惑があった。

 異例のスピード出世にはこのような意図があったのだ。



 そしてオレは、そのままの四級冒険者のままであった。

 なぜなら、オレは任務中に戦わずして、ただ指示を出していただけだったと認定されてしまい、さらに皆がモンスターにとどめを刺す頃には、その現場におらず、実質メンバーから外れたことになっていたからだ。

 冒険者ギルドから見ると、オレは参加していないように見えたのだ。

 

 それでオレだけが仲間外れとなった評価を受けたが、オレはそれでも満足だった。

 だって。


 「ありがとうございます。ありがとうございます。あなた様のおかげで私の身体は無事でした。身を汚されなくて済みました。本当にありがとうございました」


 ママルさんがやたらと早口でお礼を言っていた。

 少し顔を赤らめているのだが、オレの元に急いで走って来たのかな?

 なんて思ったりした。


 「いえいえ。あれは護衛任務、あなたの無事も守らねばなりません。当たり前のことですからね。だから全くお気になさらずで。あなたがとにかく健康で無事でよかったですよ。あと、余談ですけど、あそこの山に行くときは、もう少し、良いランクの冒険者を付けることをお勧めします。会社に進言してくださいね。最低でも二級くらいはあった方がいいですよ!」

 「わかりました。そのようにします。ほんとうに・・・ほんとうに・・・本当にありがとうございました。ルルロアさん・・・素敵でした。ありがとうございます」


 素敵でした???

 お礼の中に謎の言葉があった。

 理解が出来ず、オレは首を傾げそうになったけど、ママルさんに笑顔で返事をした。


 「ええ。お元気で。ママルさん」


 とオレは彼女から多大な感謝を受けたから。

 オレ的には自分の階級などどうでもよかったんだ。

 人の役に立てば、別に四級とか二級とか、レオンたちとは立場が違うとか。

 どうでもいいことなのである。


 依頼にはその人の願いがある。

 だから別に、オレの出世とかは関係ない。

 オレって奴は、人の願いを叶える冒険者になりたいらしい。

 誰かの評価を得たいんじゃないみたいだ。

 

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