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第3話 宴会

 世界の南西にある大陸【ジーバード大陸】

 砂がメインの大地で、砂漠が大陸の半分を占める。

 特に北側が砂地であって、バイスピラミッドもその北部にある迷宮ダンジョンだ。


 そして、ジーバード大陸中央にあるのが大都市ファルテ。

 大陸最大規模を誇るオアシスと平原の境目にある都市で、人々に癒しを与える都市でもある。

 この大陸には国家がなく、自治政府として存在しているのが冒険者ギルドだ。

 四大大陸を行き来することが出来るのがギルドなので、他大陸の情報を得られないという事がないので、別に国がなくても、各々がしっかりしていれば、人々は無事に生きていけるわけだ。


 希望の星(ジェンテミュール)は、攻略の為に、ここに拠点を構えていて、バイスピラミッドと拠点を行き来していた。

 

 ◇


 ファルテにある希望の星(ジェンテミュール)のホーム。

 お疲れ様会は、最初から盛り上がっていた。


 「ほらほら。ぱあっと行こうぜ! どんと飲め! お前らぁ」


 仲間たちに豪快に酒を飲めと騒ぐのが、団長であるレオン。

 勇者レオンの一声は、普段の時でも、抜群の効果を発揮する。

 皆の士気が最高潮になっていった。


 ファミリーのメンバーは、暴れるようにして飲み比べをしだして、宴会が始まったばかりなのに、べろべろに酔っぱらっていく。

 偉業達成の嬉しさが、ここで爆発した形だろう。

 オレも当然嬉しいけどその輪には加わらない。

 ホームの隅の誰も使わない六人テーブルの端に一人でいた。

 誰にも迷惑が掛からないからちょうどいい。

 

 しかし、遠慮してここにいたのに、超人四人が許可なく勝手に座ってくる。

 宴会の主役である四人は、どうしてもオレのそばにいたがるのだ。


 「お前ら。オレの所に来るなよ。お前らが主役なんだぞ」 

 「ルル。はいどうぞ」


 ニコニコの笑顔のエルミナは、オレの好物だけを皿によそって持って来た。

 これを断るのは男じゃない。なので受け取る。


 「ありがとう。エル」

 

 エルミナがオレの隣の席に座ると同時に、いっぱい食べてくださいとも、言っていた。


 「ルル。お前のおかげだぜ。助かったわ」


 酔っぱらっても感謝を述べてくるのは俺の正面に座ったレオンだ。

 酒瓶片手に持っているのでまだ飲む気だ。 


 「いや、俺の力なんて大したことない。オレはね。お前らの偉業にちょいと乗っかっているだけなの」


 レオンは、酔っぱらってるくせにここだけは真剣な表情になる。


 「そんなことはない。俺らはいつもルルに感謝してるぜ。そもそもお前が居ないと俺たちは、始まらねえからな。まあとりあえずさ、これを飲め飲め。この後、酒場に行って、麗しい女性たちに会いに行くのよ。前回、お前は恥ずかしくなっちまって、顔を真っ赤にして終わったからな。今度は酔った勢いでいこうぜ! な!」


 勇者レオンの頭の中は、戦うこと以外だと女しかない。

 それ以外は何もない空っぽの頭だ。

 恥ずかしい思考能力で、限界を極めている。

 だけどオレのことを認めてくれる数少ない友人なんだ。


 オレの左隣に座ったイージスが目を擦った。

  

 「・・・ねむい・・・」

 「ああ、はいはい。ほら、ケチャップついてるよ。イー」


 頭がふらふらしているイージスは、スプーンで取ったオムライスを、口の中に運ばずに、ほっぺたに運んでいた。

 べチャッとついたケチャップを、オレがすかさず、アイテムボックスから取り出したハンカチで拭いてやる。

 綺麗に拭き取ったら、半分寝ながらお礼を言ってきた。


 「・・・ありがと・・・ルル・・・」


 この言葉と同時に、レオンの隣に座ったミヒャルが話し出す。


 「あんたこそ。いつも世話焼きのお母さんみたいじゃん。ふん」

 「ん? いや、お前の口調は確実にお母さんだろ。お前が女である分、お前がお母さんだ」

 「う、うちは、お母さんじゃないもん。そんな歳じゃない」

 「はいはい。そりゃあね。俺たちはまだ十八だけどさ。そろそろ結婚してもいい年でもあるわけじゃん。お前、いい人いないのか? せめて彼氏いないのかよ」

 「い、いるわけないだろ・・うちは大賢者だ。釣り合う男がいない!」

 「ああ、はいはい。そうですか。それはようございましたね。付き合えない言い訳ができて。よかったですな。大賢者様」

 「・・・ルル! 嫌い!」


 少しキレ気味のミヒャル。

 ちょいと、からかい過ぎたかと思ったら、隣のエルミナが俺のおでこをつつく。


 「駄目ですよ。お年頃の女性にそんな冗談は。気にしちゃいます。私も同じ歳ですし、私も彼氏がいませんよ。欲しいです」


 最後に欲望が聞こえた気がしたが、オレは謝る事にした。


 「……ごめん。エル。君に言ったわけじゃない。すまない」

 「私に素直に謝ってどうするんですか。ミヒャルに言いなさい。ミヒャルに」

 「ごめ・・・無理だな。ミーにはな」


 エルミナには素直に謝ることが出来るが、ミヒャルは無理だ。

 生意気ガールにはお灸を据えて置かないといけない。


 「んだと。てめえ! ルル! 表出ろや」

 「まあまあ。別にいいじゃないか。ミヒャル。そういう粗暴に振舞おうとしても無駄だぞ。お前の声が可愛いから、全然怖くないのさ! はははは」


 レオンが間に入ったけども、その言い方だと若干馬鹿にしたように聞こえなくもない。


 「うるせえ、勇者が浮ついた気持ちで女の子をたぶらかすんじゃねぇや。お前と付き合ってる子らが可哀そうだわ! 屑男! 少しはルルを見習えよ」


 それはどういう意味でしょうか。

 オレが誰とも付き合っていないのを見習えって事? 

 モテない奴を見習えってことですか!

 傷つきます。


 「待て! ミヒャル。俺は浮ついていないぞ。俺は、全ての女性を等しく愛しているのだ!」

 「クソが! 良いように言うんじゃない! このド屑が!」


 この二人のいつもの喧嘩が始まったので、オレとエルミナとイージスはいつもの談笑となった。

 大体にして、この二人は戦わせておいた方がいい。

 しばし喧嘩が続く。



 ◇


 ある程度戦え終えたら、レオンが仕切り直しで皆に話しかけてきた。

 

 「はぁ。よくやったよ……俺たちさ。あんな小さな村からこのどデカイ偉業を成し遂げたんだな」

 「そうだな。田舎の子供の夢にしちゃ。出来過ぎだな。レオ」


 レオンの意見に賛成だ。

 オレたちは本当にただの片田舎のガキだったんだ。

 鼻水垂らすくらいのクソガキだったのにさ。今では最強冒険者の一角だ。

 

 「うちら・・・マジで強くなったもんな」

 「ええ。私たち、頑張りましたね」

 「・・・う・・・うん・・・zzzz」

 「「「「 おいおい 」」」」


 完全に眠ったイージスにオレたちはツッコミを入れた。



 ◇


 オレらは、同じ村で、同い年で、同じ時を生きてきた幼馴染である。

 村では仲良し五人組で有名で、悪戯も、遊びも、村の手伝いも、いつも一緒だった。

 いつも同じ感覚で、いつも元気に、一緒にやって来た。

 だけど、ある時の出来事から、事情が変わってしまった。

 それが俺たちの絆を駄目に……するわけがなかった。

 その人生最大の事件があっても、オレたちの友情は、変わらずにずっと続いていた。

 このSランク冒険者ファミリーとなって、大出世した今でもだ。



 「団長。こんなところで飲んでないで、俺たちの所にも来てくださいよ」


 絡み酒のハイスマン。

 勇者レオンの肩を組んで、全体の輪の中に方に連れて行った。


 「そうですよ。あなたも来てください。大賢者様も」


 淡々としているスカナが大賢者ミヒャルを連れていった。


 「あなた様もです。女神」


 カッコつけのキザールが聖女エルミナを連れ去っていってしまった。

 オレの唯一の癒しを連れて行ったキザールだけは許さないとしよう。



 と思ったけど、オレは眠ってしまったイージスを見張ることにした。

 寝相が悪いことでも有名なので、暴れられても大変だから、ここで世話をする。



 ファミリーの仲間たちは、オレの幼馴染の四人を尊敬してる。

 当然だ。

 この四人は伝説のジョブを会得している上に使いこなしている。 

 世界でも稀有な四人なんだ。

 それが、オレの幼馴染だったという奇跡。

 これは正しく、三大クエストを成し遂げろとの神の思し召しであるんだとオレは思っている。


 そんな彼らのことを人々が尊敬するのはよく分かるんだ。

 オレだってさ。

 たぶん、幼馴染じゃなかったら、仲間のこいつらと同じように尊敬していることだろう。

 でもオレは、別に感謝していても、この四人のことを尊敬していない。


 いつまでも村から続く友達だと思っていて、こいつらの事を最後まで応援し続けたいと思っている。

 オレは、この四人が何かを成し遂げる人物だと信じている。

 この四人が、とんでもない力を世界に示すのだと思っているんだ。

 だからオレは、それを陰ながら支えるだけでいいんだ。

 まあ、それが出来なくとも、コッソリ草葉の陰からでもこいつらを見ているだけでもいいんだ。

 だって、面白いんだぜ。こいつらは!


 「・・・zzzzzz、眠い・・・」

 「おいおい。寝てんのによ。寝言でも眠いって言葉がでんの!?」


 イージスの鼻提灯が消えて、寝言が出てきた。深い眠りに入る前後だ。


 「ルル・・・・なんか食べたい」

 「マジで寝てんのか。こいつ・・・なぁ、イー」


 疑いの目を向けてオレは、寝ながらでも食べられるものなのか。

 半信半疑で試してみる事にした。

 イージスの口の前にウインナーを持っていくと。


 「・・・んぐ! うまい・・・zzzz」


 パクっと一口で食べた。


 「寝て食べたわ! すげえ」


 面白くなってきたので、オレは次々とイージスの口に食事を運んだ。



 ◇


 三人がいなくなり、一人が眠ると、オレの周りには人が完全にいなくなる。

 そうなると、このファミリーでは恒例の行事が開催される事となる。

 それが・・・。


 「あいつってなんで、英雄様たちのそばにいるの」

 「そうだよな。あいつって所詮、準だよな。あくまでさ。特級じゃないよな」

 「実は、英雄様たちのおかげで、おこぼれで準までいったって話なんだぜ」

 「マジかよ。ズルじゃん。いいよな。俺もおこぼれ受けたいわ」

 「でもあいつさ。弱いのに英雄様たちにも命令するらしいぞ」

 「ほんとか。俺たちだけじゃなくか」

 「そうみたい。二級の先輩から聞いた」


 悪口パーティーの始まりだ。

 これらは、ファミリーに入ったばかりの奴らに多い。

 オレへの悪口が、最初に覚える事みたいになっている。

 まあ、どうせ、一級や準一級の奴らの愚痴が影響しているのだろう。

 彼らがする噂が、火達磨式に燃え上がって、彼らに飛び火しているんだ。


 彼らがオレを嫌う理由。


 それは、何も出来ないと言われてしまう無職なオレだから。

 それは、四人から信頼をもらい、特別扱いを受けているオレだから。

 それは、ファミリー全体の指揮を執るのが、無職のオレだからだ。


 たぶん、これら全てが仲間たちにとって気に入らないのだと思う。

 それに、あいつらの力だけで、オレが準特級になったとでも思っているんだろう。

 

 彼らも、上級冒険者として有名な職種についているものだから、馬鹿にしてくるのだ。

 それは自分を基準にして人を判断しているからだと思う。

 無職。

 これが差別対象になってる。

 オレだって、好きでこの職業になったわけじゃないのにだ。

 人は見た目だけじゃなくて、役職でも判断するってことなのさ。


 「ふぅ~。好きで、無職になったわけじゃないのにな・・・・ほんとにさ。なぁ、イー」


 人々の冷ややかな声と視線をもらい、イージスの頭を撫でていると、ふと昔の事が思い出された。

 

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