エピローグ 守るために帰らねば
イナシスにて。
城が見える位置でレミさんに聞いてみた。
「レミさん。どこに隠したのよ」
「うむ・・・・・さて・・・・どこじゃろ?」
「は!?」
「余。地面に埋めたのは覚えているのじゃが・・・だけど、どこに行ったのかまではな・・・当時と景色が違うし」
「おいこら。ポンコツ鳥! 埋めた場所もわからねえのかよ。あんたしか知らんから頼りにしてんのに。やっぱアホじゃん」
「なんじゃと。ルル・・・くらえ!」
「ぐべ!?」
レミさんは自在に形態変化出来るみたいだ。
今は小さな状態になっているレミさんが、オレの腹にキックをかましてきた。
「ど、どこにあんだよ・・・」
「ルルよ。ここは解放軍の本拠地だ。古くからここにいるアルランに聞いてみればいいんじゃないか」
「・・・そうだな。りゅ、リュカの意見に賛成だ。そうしよう」
オレの心配してくれたリュカの提案通りに、皆でアルランの元に行った。
◇
「アルラン」
「何故ルルがここに!? 冒険はどうした?」
「まあさ。ちょっと問題があってさ。アルラン、鍵を見かけなかったか」
「鍵?」
「うん。ここの大地に埋めたらしいんだけど。この馬鹿鳥がさ」
「誰が馬鹿鳥じゃ」
「ぐべ」
顔を蹴られたけどオレは、レミさんを手の平に乗っけて紹介した。
アルランはレミさんの声にも反応している。
もしかしたらレミさんが真の力を手に入れたから、言葉が届くのかもしれない。
「鍵とはどんなものだ?」
「鍵は……水晶玉だ。ここに埋めたのは何色? レミさん」
「イナシスは灰色だ」
「そうなんだ。灰色だって。アルラン知ってるか?」
アルランは腕を組んで思い出していた。
「レミさんが、3000年近く前に埋めてるんだよ。どっかで見てないかな」
「・・・まさか・・・あれではないか?」
心当たりのあるアルランが、オレたちを案内してくれた。
◇
氷の城の右の塔。
クオルターナの導きが発動している塔に、オレとレミさんとウルダーナで、アルランの案内で入った。
他の皆は休憩で、旅からすぐの事だから、疲れを取ってもらう事にしていた。
「ルルロア。ここだ」
扉を開けたその先は魔法陣と、結界の大元があった。
こちらの結界は・・・。
「面白い。透明な結界だな」
ウルダーナが頷きながら結界を探っていた。
「そう言えば、これは誰だ?」
「ウルダーナだ。ミーフィの親分みたいな人だ」
「・・・ミーフィ・・・なに!? あのカーベントのミーフィか!?」
「そう。その人のボスよ。カーベントのウルダーナだ」
アルランが驚く。
当然だ。ミーフィなんて、3000年ぶりに聞いただろうからな。
「これじゃな。ルルよ」
いつの間にかレミさんは部屋の中央にいた。
「なに。まさか」
「常時発動させるには依り代が必要でな。ちょうどよいのがこれだった・・・すまぬ。私が使っていたみたいだ。この塔を建設する前の地面に埋まっていたから、何かの思し召しかと思って使ってしまっていたんだ。悪かったな」
「そうか。まあいいよ。アルランのせいじゃないしさ。悪いのは、誰にも何も言わないで埋めたレミさんだから。そんで、これってさ。今も鍵の役割を果たしているのかな? どうなのレミさん、ウル?」
二人に聞くと、解析を済ませているウルダーナが。
「うむ。これは奇跡的に、ファイナの洗礼の中に組み込まれているな・・・クオルターナの導きか・・・わっちが元を作っているから、ファイナの洗礼と相性が良いのだろう」
「なに!? この秘術、作ったのはナディアではなかったのか?」
滅多に感情を動かさないアルランが驚いた。
「そうだ。ナディアに頼まれて作ったわっちの秘術だ。時を止める秘術。これにより、氷の大地の病に効くように作ったのだが。ただ、これはあの時よりも改良してあって、これにより氷の大地の浸食速度まで影響しているな。うんうん。お前さん、なかなかやるな」
「・・・あ、ありがとうございます」
素直に返事を返すアルラン。
「うむ。それだと、この鍵を取るのはまずいな。これを最後とした方がよいな」
ウルダーナがオレの元に戻ってきた。
左肩に乗って、右肩にはレミさんがいる。
「あの。なんで二人ともオレの肩に乗ってんの?」
「居心地いいからじゃ」
「わっちも同じく。乗りやすい」
この人たちさ。
人の肩をベンチみたいに言うなよ!
憩いの場所じゃねえぞ!!
「はぁ。まあいいや。それじゃ、ジーバードの方を手に入れないと駄目か・・・そうか。これはさ。オレが一旦実家に帰らないといけないな。アルラン。この水晶玉は絶対に死守してくれ。時が来るまでな」
「どういうことだ?」
「うん。事情を説明するわ」
オレはアルランに説明した。
世界の成り立ちと、彼らの行動の意味である。
オレは誓約がないので、ペナルティがない。
「なるほど。事情は分かった。そして提案がある。解放軍の精鋭をそちらに送ろう」
「ん?」
「ルルロア。お前が兵士を育ててくれないか。強さの土台を作って、そこから我らが教育して力を引き上げるのはどうだ」
「なるほど……精鋭を育てて各地で強くするか・・・連合でもやればいいってことだな」
「そうだ。同じように鍛えるんだ。私たちも戦うんだ。お前たちに全てを任せるのはよろしくない。全体で立ち向かっていこう。これは人類の存亡をかけた戦いだ」
「ああ。ありがとう。アルラン。オレはあんたと友になれて良かったぜ。じゃあ、その準備をするよ。じゃあな」
「うむ。こちらこそ。また会おう友よ」
オレとアルランは握手をした。
兵を強くする計画は新しく立てることにした。
◇
その後、オレたちはアレスロアに戻り、連合軍と解放軍に連絡をして、情報の全てを世界に開示した。
これを徹底するのに、2か月が必要となり、オレたちはその間も色々な準備をした。
そこから1か月後。
【出来たぞ。ルル。やってみよう】
「なにが?」
執務室に来たのは、メロウとルドーだ。
「ルルさん。出来ました。超長距離連絡盤です」
「ん?」
オレが首を傾げると、両肩にいる二人も首を傾げた。
というよりも、当然の如くオレの肩にいる二人は何なんでしょう。
家にいるとき以外は、ここ最近ほぼ一緒にいます。
【ルルよ。お前のその左耳のアクセサリーは、あちらの仲間のものだと聞いた】
「ああ。そうだよ。リョージさんって人のものだ」
【その者の魔力を遠距離でたどるのだ。声を飛ばすんだ】
「なに。通信が出来るってわけか。これで?」
盤の準備をルドーが始めた。
「遠いのでその方の魔力を探るのは難しいです・・・けどルルさんなら出来るかもしれません。こちらの手を置く場所に置いてみてください」
盤には手形のような部分があった。
オレはそこに両手を嵌めこむ。
「これでどうすんの?」
「その人の魔力を探ってみてください・・・」
「魔力かよ・・・ムズイな。リョージさんに魔力があんのか」
【ある。ジーバードの者にも必ずあるはずだ】
「そっか。そうだよな。アルクスがジョブを付与したとしても、少なからずヒュームにも魔力があるか。でもオレ、あっちで生きていた時、魔力を探るのは上手くなくてな・・でもやってみっか」
オレは言われたとおりに探ることにした。
このイヤリングに、リョージさんの魔力がかすかに残ってる気がする感じがした。
ほんの僅かだけどな。
魔力残滓があるのかもしれない。
今のオレの探知能力はすげえかも・・・。
「どれどれこれを・・・・」
「ルルさん。この中央の透明な玉の色が変化しますからよく見てください。その方と繋がると青色になります。繋がらないとそのままですね」
「なるほど・・・お!?」
色が青くなった。
「繋がったのか」
【そうみたいだが・・・】
「ピ―――――――――――・・・ボ――――――――」
雑音が流れていた。
でも繋がっているらしい。
「リョージさん! 返事してくれ。リョージさん!!!」
「ピ―――――――――――・・・ボ――――――――」
「これは駄目か?」
【駄目ではないと思う。ただ、あちらの声が、こっちに届かないだけかもしれん】
「なら、一応伝えよう。オレたちの現状をさ。やってみる」
オレはリョージさんに出来る限りの情報を伝えてみた。
これが意味あることになるかは分からない。
でも伝わればいいな。
世界を変えるには向こうの力も必要なんだ。
特にレオンたちの英雄の力がさ。
世界を守るために、ここから世界が集結しないといけない。
全世界の人で、この困難に立ち向かわないといけないのさ。
英雄だけが世界を救うなんて無理だ。
全員が同じ意志の元で戦っていけば、なんとかなる。
なんて言ったって、オレたちは、自由になるために戦うんだからな!!
全員で勝ち取らないと意味がない!!




