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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
冒険者ルルロアの復活 

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第6話 戦えルルロアたち

 見たことのない魔物は猿のようにも見えて、そいつらの長い手が伸び縮みするような目の錯覚を起こす縞々模様が腕にある。

 それと、個体に応じて体の色に変化があり、今だと二色で灰色と黒に別れていた。

 灰色が攻撃型。黒は防御型でまとまっていると思う。

 色別で能力に変化が起きる魔物なんて珍しい。 

 同じ姿なのに、同じ魔物じゃないという事なのか?

 オレたちの知識はまだ乏しいらしい。

 分からない事ばかりだ。

 ジークラッドに足を踏み入れた時よりも、未知なる世界に足を踏み入れた気分になる。

 いや、あの時よりもなんか気味が悪い。

 ここは不気味さを感じる場所で、ワクワクを感じねえのは残念だわ。


 「何て名前の魔物なんだろうか・・・」


 洞窟の地形を利用して、壁からも迫りくる25体を撃破した時に俺は呟いた。

 この洞窟から出てくる魔物の数は、俺が経験したどのダンジョンよりも出現する数が多い。

 最初の40体から始まり、次の15。30。25。

 オレたちはすでに110体もの魔物を撃破した。


 「はぁはぁ。厳しいですね・・・強さだけじゃなく数も・・・」


 仲間の為に魔法を行使しているルドーが息切れを起こしていた。

 敵を分断するための闇魔法のせいで魔力切れも起こしている。

 ナディアの援助を受けても、この疲労感は拭えないだろう。

 ユーさんやリュカも、リタの回復を二度受けるくらいに傷を負った。

 全体はもはや疲労のピークを迎えていた。


 「アイス王。敵が同種の者しか来ないのはおかしいのでは?」

 「オレも同じことを思ってた。マリューは、次の手をどう考える?」

 「私は、撤退を視野に入れながら進みます。あの魔物だけであれば対処はしやすいですが、別なものが来れば・・・」

 「ならオレが無茶をする」


 ナディアの探知結界にスキルの地図を混ぜた。

 光の球を奥に放り投げた。


 「・・・はぁはぁ・・・きつい。これは難しい魔法だわ」

 「ルル? どうしたの。今ので疲れるなんて」

 「ああ、コントロールが難しくてな。結界構築に魔力を持っていかれたわ」

 「……そんなに?」

 「ちょっと待ってくれ。奥ではじけた」


 目を瞑り確認。

 頭の中に地図が浮かんでくる。


 この先真っ直ぐで三又に別れて左右は行き止まり。

 やはりここでも道は真っ直ぐらしい。

 

 「……途中に怪しい場所ありだな。そこがカーベントの結界かもしれない。似てる・・・ウルダーナさんの場所にさ。そこまであと少しだな」

 【どれくらいだ】

 「このままの進軍だと、2時間・・ちょいかな」

 【その時間では、まだまだ戦うことになるな……ルル。負担を減らそう】

 「ん?」

 【ルルは攻撃のみで、私たちが防御メインで食い止めよう。ルルはやるべきことを減らしてもらい、すべきことを一点にする。私たちがピンチに陥ろうともとにかく数を減らしてくれ。もうそれしかないと思う。もしくは私とナディアが全力で魔法攻撃に集中するかだ。ルドーはもう、ナディアがいなければここらが限界。後衛に置くしかない。私たちが魔法攻撃でルルの援護をする】

 「なるほどな……わかった。そっちでいこうか。正直俺だけが攻撃にでても数を減らせそうにない」

 【了解した。あとはマリューも中衛を務めてもらおう】

 「はい。私も思ってました。カバーする動きをしていきます」


 全力を出し尽くす戦いが始まった。


 一時間が経過して戦った数は60。

 これは四大ダンジョンでもありえないハイペースな戦い。

 それもこの強さでだ。

 次々と襲い掛かる魔物を、オレたちは撃破していった。

 これは、敵の行動に慣れてきた要因が大きい。

 慣れ。

 そこが一番怖いのがダンジョンなのだ。

 なにせ、二時間が経過したその時、状況は一変したのだ。


 「あれは!? ワイバーンか」


 猿の魔物10体の後ろに控えているのは、ワイバーンに似ている竜。 

 ただ、色が漆黒。そしてワイバーンよりも骨ばってる。

 むしろ・・・・。


 「スカルドラゴン?」


 マリューが呟いた。


 「そんな感じに見えるな。ワイバーンの亜種か?」 

 「わかりません。亜種なんてあるんですか!?」


 オレたちの指示もなく、リュカとユーさんが同時に前に出た。

 その行為普段であれば褒めてあげたい。

 でも見ていてほしかった。

 相手が違うし、行動に出ていたことに・・・。


 猿の魔物が行動に移す前に、スカルドラゴンが口を天井に向けた。


 「ブレスか!?」


 オレの声と同時に敵がブレス攻撃を出した。

 炎の渦を吐き出す。

 その威力は、音だけでも異常だと分かる。

 聞いたことのない轟音と共に灼熱の炎がこちらに向かってきた。


 「間に合わねえ。やべえ。ユーさん。リュカ。下がれ」


 オレの声に。


 「儂はもう無理だな。ここは盾になる。リュカ。儂の後ろに」


 ユーさんの返答は捨て身だった。


 「ユースウッド殿・・・すまん」

 「ふっ。こういう時に素直に後ろに行ってくれるのは助かるぞい」


 ユーさんは生き残るつもりがねえ。

 リュカを助けるつもりで前に出た。


 「ここが私の役目です! プロテクトウォール!」


 リタが渾身の防御魔法を発動。

 敵の炎と、ユーさんの前に壁を設置した。


 「ぐぐぐぐ。お、押されます・・・」

 「リタ! ボクも君に」


 シオラがリタへ魔力渡しをした。

 二人が支え合って魔法の壁の維持に努めた。


 「オレの移動する時間を、よく生み出したぞ。二人とも偉いぞ」


 オレはユーさんとリュカの体を掴んで、後ろに放り投げた。

 二人を助けるにはこれしかない。


 「な!?」「馬鹿なルル!? 何をする気だ」

 「リタ。解除しろ」


 オレはプロテクトウォールの前で魔力を展開。


 「え!?」

 「いい。これはオレが引き受けた。その間に皆は態勢を整えろ」

 「わ、わかりました。3秒後に解除します・・・3・・・2・・・1。解除です」


 オレたちのルール。

 魔法の解除は3秒。

 これを徹底して連携を重ねてきた。

 なぜなら、1秒ではこちらの準備が取れない。

 5秒では向こうも態勢を整える。

 だからちょうどよい塩梅が3秒なのだ。

 

 「いくぞ。陽光のエレメンタル(エヒルファイブ)だ!」


 敵の炎に対して、オレの最大火力魔法を出した。

 これ以上はない!

 なのに、この魔法に対して、この炎の威力はなんと互角!?


 「ありえねえ。オレの最大魔法で互角かよ」


 出力が拮抗したことで、魔法と炎のぶつかり合いが続き、炎からチリチリした音が出て、オレの魔法がミシミシと鳴き始めた。


 「なんだよ。このぶつかり合いはよ。経験したことがねえ。なんで……勝てねえんだ」

  

 【ドッ】

 ぶつかり合う中心から一個の音が出ると、オレの目の前は白光に包まれた。


 「ぐおっ!?」


 そこから光は爆風となり、オレはぶっ飛んだ。


 「ルル!? あ、あたしが・・・ウインド」


 後ろに吹き飛んだオレをナディアが風魔法で減速させながら受け止めてくれた。

 彼女に後ろから抱かれる形でオレは怪我をせずに済む。

 

 「すまねえ。ナディアありがとよ」

 「・・うん。でもルルの魔法が、通じないなんて。あ、ありえない!?」

 「ああ。オレもびっくりだわ。あいつバケモンだぞ」

 「ルルが化け物だと認める敵・・・あたしたち・・・死地に入り込んだのね」


 オレを支えてくれている手が震えていた。

 

 「怖いか」 

 「…うん。少し」

 「そうか。なら、オレが勝つと信じろ」

 「え?」

 「お前が信じてくれれば、オレは負けねえ」

 「うん。信じてるよ」


 ナディアの支えなしで立ち上がったオレは、ドラゴンの動きを注視して指示を出した。

 まだ奥にいるドラゴンのその余裕の態度が若干気に入らねえ。

 表情はないけど、ゆっくり動く感じがめちゃくちゃ気に入らねえ。


 「マリュー! 皆を頼む。オレはあのドラゴンを倒す! 1対1だ。その状況に集中させてくれ。そのかわりきついぞ。皆であの10体を倒してくれ」

 「わかりました。おまかせを。必ず邪魔はさせません」

 「頼んだ。みんなここが勝負どころだ。戦うぞ!」


 オレの応援に。


 「「「 おう! 」」」」

 

 皆は答えた。


 ◇


 謎のドラゴンと領主ルルロアを一対一にするためにマリューは策を立てた。


 「攻撃を広域に展開してあの敵を引っ張り上げますよ。アンナ。あなたがあの中に突っ込んで、全員の視線をもらってください。そこからこちらに全力疾走してください。その際、ユースウッド殿とリュカ王はゆっくり退却し、もっとこちら側に敵を引き寄せます」


 アンナがドラゴン以外の敵の群れの中に入った。

 影に隠れるのが得意なアンナはその逆も出来る。

 反転させる闇魔法の力を使い、周りの空気を吸引した。

 敵の視線がアンナに集中する。


 「そちらにひきます!」

 「お二人とも、アンナからバトンを受けてください」


 足に魔力を集中して疾走するアンナは、二人の後ろに入った。


 「リュカ! 回避しながらひきつけろよ」

 「わかってる。貴殿も気をつけろ。ルルはいないからな」 

 「ああ。いくぞい。必殺打駄々(ダダダ)!」


 ユースウッドのハンマー技。

 打駄々(ダダダ)は、ただの地面への叩きつけ攻撃。

 のように見えて、本当の目的はユースウッドの魔力を帯びた視線集中の技。

 一時の間、敵からヘイトを買う技なのだ。

 

 「8か!? チッ。2足りない。リュカ頼む」

 「うむ。桜火竜 奥義 竜々舞(りゅうりゅうまい)


 刀に灼熱の炎が巻き付かれてからの連続上段切り。

 桜花流 百花繚乱 桜花爛漫と同じ技。

 ただ炎が違う点だ。

 剣筋の一つ一つに纏わりつく炎が。

 その剣技の美しさを際立たせる。


 「残り2は拙者が斬る」


 リュカの渾身の奥義で一体は撃破。だが、もう一体に刃が届かず。

 

 「まずい!?」


 ルドーの叫びの後。マリューがリュカに迫る敵を見つめた。


 「私がやります。ここです! 十色結界(カラフル)


 敵の胴体に対して、様々な色をした結界が四角で出現。

 

 「回します! 回転」

 「眩しいぞ。マリュー」

 「申し訳ありません。リュカ王! しかしこれしか相手を封殺できませんからね。このまま殺します」


 結界が高速回転したことで、球体にも見える。

 複雑な色の混ざり合いのせいで、目がチカチカするのだ。

 リュカはそのせいで文句を言った。

 

 アンナの結界魔法は、相手の肉を切った。

 十色結界(カラフル)

 マリュー渾身の攻撃系結界魔法である。


 「はぁはぁ。やはりあの規模で作るのだけでも魔力消費が・・・ナディア様。お願いします」


 マリューは疲れていても次の指示を忘れていない。


 「うん。まかせて。でも、狙いが・・・」


 ナディアは光の弓と矢を持っていた。

 弓を引く動作をしていたが、狙いが定まらない。

 相手の動きが早いのだ。


 【ならば私がやろう。ナディア外すなよ】

 「わかった」

 【では、蜘蛛の糸(スレッドスパイダー)だ】


 メロウが全魔力を使って蜘蛛の糸(スレッドスパイダー)を放出。

 洞窟内の壁や天井から魔法の糸が相手を縛った。

 敵の動きが止まった瞬間。

 ナディアの目が輝く。


 「いけるわ。どうなるか分からないからみんな離れて。いくわよ」


 ナディアは狙いを定め、光の弓を引いた。


 「星の矢(スターアロー)


 ナディアの光の弓から矢が放出された。

 かつてのナディアたちにはない、四代目ナディアのオリジナル魔法。

 流星群の魔光(シューティングスター)を一点に集約した究極の単体魔法だ。

 その威力は。


 「一射(シュート) 貫け! 光の矢」


 ナディアが放った光の矢が、位置の重なった敵三体の胴体を貫いた。

 

 「いけた! もう一本を・・・くっ」

 

 魔力消費の激しい魔法にナディアの膝が地面に着く。

 魔力が枯渇状態に陥りそうになりながらも、もう一本を準備した。


 「巻き込める敵は。ここね」


 ナディアは敵が重なり合う位置に移動して斉射。敵三体を撃破した。

 その威力、高威力につき、敵は悲鳴を上げる暇さえない。

 瞬間的に相手を殺す。恐ろしい魔法であった。


 「ま。まずい。あと二体・・・だけど魔力が・・・」

 「ボク! ボクが魔力を」「私もです」

 

 後衛にいたシオラと前線から下がってきたアンナが残りの魔力を提供した。

 ナディアは、最後の力を振り絞って、立ち上がる。


 「いくわ。これで最後・・・星の矢(スターアロー)


 射出同時にナディアは倒れる。


 「これでどう・・・ルル、やってやったわよ・・・あたしたちだけでね・・・」


 一気に魔力を消費して、体内の魔力を枯渇させた彼女は倒れる。

 そこをアンナとシオラが支えられる形で飛びついてきた。

 ナディアは地面に優しく置かれた。


 その間、彼女の放った光の矢は敵を貫き。

 ルルロアの仲間たちは、ルルロア抜きで強敵を倒したのである。


 ◇

  

 「斬る!」


 オレはスカルドラゴン(仮)の正面に入った。

 奴の角ばった場所は全て骨だ。

 皮と骨だけに見えるドラゴン。

 防御力もなさそうに見える姿だが、オレの全力の華凛の剣先が突き刺さらなかった。

 

 「弾かれんのかよ。硬すぎて手が痺れたわ」


 奴の顔はオレの方を見ていない。

 洞窟の先。オレたちが通っていった方を見ていた。

 

 「まさか。こいつらの狙いは・・・外? いや、外じゃなくて、あっちの結界か。ファンが作り出した結界の方に向かおうとしているのか。狙いは世界の中心!?」


 この魔物たちの狙いは世界の中心?

 やっぱりあっちには何かがあるんだな。

 クソ。早く、ミーフィさんに会いたいというのにさ。

 邪魔しやがってこのバケモノども。


 「魔力を全開にして。桜花流 乱れ桜」


 華凛がオレの魔力を吸う。刀身がオレのオーラと同じ透明になっていく。

 これが華凛の真の姿らしい。

 美しい刀身が、消える。

 これはもう見えない刃だ。

 

 オレの桜が咲き乱れる。

 スカルドラゴンの骨の部分にも剣を向けてみた所、骨にひびが入った。

 その程度の傷。だけど初めて相手にダメージが入ったと思う。

 スカルドラゴンの瞳が下を向いて、オレの顔を覗きこんできた。


 「効いたか。オレの攻撃が、奴の防御を越えさえすれば、傷はつけられるってことだな。それじゃ・・・いく・・がはっ」


 オレは油断していたわけじゃない。

 意識の外から敵の尻尾が飛んできていたのだ。

 体全部がオレの正面を向いているスカルドラゴンの体勢からではありえない。

 信じられない角度からの尻尾がオレの腹に突き刺さり、どでかく穴が開いた。


 「「「ルル!」」」


 皆の叫び声が聞こえても、オレはここで戦うのをやめられない。

 こいつと皆では実力差がありすぎて、一瞬で壊滅してしまう。 

 だからオレが仕留めねえと・・・。


 「おりゃああああああああああああ。ぐふっ。根性だぁあああ」


 硬い防御を切り裂くにはこれしかない。


 「勇者の剣(レオンハート)


 オレの透明な刀は見えないまま、七色の光が出てきた。

 これはレオンの技とオレの力の融合。

 完全なオレ自身の勇気。

 勇者の剣だ。

 自由な勇者。言ってしまえば・・・・。


 「これはもう勇者の剣(ルルハート)だな。ごふっ・・・時間がねえ。意識が消える前に・・・」


 オレは地に足つけて、全てをかける。


 「桜花流 百花繚乱 散り桜」

 

 桜花流奥義 散り桜。

 咲き誇った桜は散っていく。

 ひらひらと。ひらひらと。

 一つが風に揺られて、もう一つは肩に落ちる・・・また一つはあなたのどこかへ。


 散り桜は緩急のついた中段連続斬り。

 オレの最強の剣技はスカルドラゴンを斬り刻んでいく。

 硬くて歯が立たなかった骨の部分も見事に斬っていった。


 「最後の一撃は・・・お前の脳天だ。消えろバケモン。桜花流 満開」


 全体重までもかけた渾身の一刀両断。

 これ以上はない一撃を放ったといえる。

 これでもうオレは動けない。

 敵を倒した感触を得た瞬間、敵の断末魔も聞こえなくなっていく・・・。

 皆の声も・・・そして、意識も消えていく・・・。


 強敵に勝てたんだという実感と、皆を守れたんだという満足感だけを残して。

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