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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
冒険者ルルロアの復活 

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第5話 シャルバからハリカの洞窟

 「ではいってきます」

 「はい。皆さんお気をつけて・・・厳しいでしょうが。ご無事を祈っております」


 そう言ったワルターさんは、左手にある結界をオレたちが通れる分だけ解除した。

 ここから先は、ミーフィさんがいる場所へと繋がる。


 「ありがとうございます。待っててください。戻りますので」

 「はい」

 

 オレの挨拶の後。 

 皆がワルターさんに頭を下げた。

 一人一人に丁寧に頭を下げるワルターさんは最後まで紳士だった。


 ハリカの洞窟に一歩入る。


 「これは、寒い!? 温度が違うな」

 「氷の影響かしら?」

  

 隣のナディアの意見に賛成だ。

 でも、この洞窟に氷はない。

 

 「奥にあるのかもしれんな」


 ユーさんの後に、リュカが言う。


 「この環境・・・拙者が住むリュカに近いのかもしれない・・・いや、それよりも禍々しいような」 


 【ルル。嫌な風は奥からだな。魔物がいると言っていたしな】 


 皆の意見が正しいと思う。かなり強い魔物がいそうだ。


 「そうだな。気をつけよう。アンナ。君の偵察は無しだ。ここからはリュカとユーさんの二人が先頭で目視警戒だ。ゆっくり前進しよう」

 

 世界を知るために、オレたちは進む。


 ◇


 ハリカの洞窟を進んで、五分後……。


 「来たぞ!?」

 

 リュカが叫ぶ。

 パーティー全員が身構えた。


 奥から猛烈な速度でこちらに向かってくるのは、手が長い猿みたいな魔物だ。

 全身が毛むくじゃらで四足や二足で移動している。

 でも赤い瞳であるから動物ではないことは確定。

 見たことがない魔物だ!


 「なんだあれは!?」

 「僕の知識にもないです。でもいきますよ。先手を取ります。闇の小部屋(グラビティゾーン)


 ルドーが敵の群れに対して魔法を発動。

 彼の素晴らしさは、オレやマリューの指示を聞かずとも的確な判断をしたことだ。


 敵の群れの40体の内、後方部隊20に対してだけ魔法を発動させた。

 狙いは敵の分断。

 後方の敵を止める魔法を繰り出したのに、それでもこちらに向かってくる。


 「な!? す、進んでくるのですね・・・まずい。ナディア様。力を貸して頂けないでしょうか」 

 「うん。いいよ。魔力渡しをする」

 

 ナディアがルドーの肩に触れて、魔力を供給。

 魔力が増加したことで、ルドーの魔法の威力が上がった。 

 敵の動きを完全に止めるほどの魔法に切り替わる。

 

 「よくやった二人とも、ナイスカバーだ」

 

 オレが褒めると二人は頷いた。

 オレが指示を出す前に、マリューから的確な指示が出る。

 

 「私から! リュカ王。ユースウッド殿。ひきつけを頼みます。アンナ! 敵の背後をついて乱してください‥‥私とアイス王は、前線のお二人の背中を守ります。そして、最後尾! シオラ。 あなたはリタを守りなさい」

 「わかりました」


 未知の強敵に出くわしても、このパーティーは自発的に行動が出来る。

 最強の冒険者パーティーになっている。

 オレの理想がここにあるぜ!


 「よし。みんな! 頑張っていくぞ。気合い入れろ」

 「「「 おおおおおお 」」」

 

 オレは鼓舞だけすればよし。応援だけでいいなんてな。

 オレの負担も少なくて、戦いに集中できる環境だぞ。これはさ!?



 ◇


 敵20体が、ユーさんとリュカに到達。

 二人が同時に戦闘に入った。


 「おおおおお」


 ユーさんは多くの敵を巻き込むために巨大ハンマーを振り回した。

 一度に5体を巻き込めた・・・のだが、敵にダメージが入らない。


 「ぬ!? なんだこいつらは」

 「ぎゃぎゃぎゃ」


 独特な笑い声の魔物。

 ユーさんの攻撃をその身に受けたのに、まったく動じてない。

 あれが効かないなんて、誰もが信じられないと一瞬だけ呆然とした。

 

 「拙者もいく。桜火竜 火竜爪」

  

 魔物の喉に突き刺す。

 だが、弾かれた。

 リュカの鋭い突きを、防御もせずに跳ね返すのも信じられない。


 二人は動揺しながらも敵の攻撃だけいなし続けた。

 戦闘技術はこちらが上らしい。


 「これはやべえ。マリュー。防衛ばかりだと死だ。オレが攻撃を担当するから、指揮を頼む」


 指揮を丸投げした後、オレが魔物の群れに走っていく。


 「わかりました。では、アンナは攪乱だけでいい。攻撃はしないで、敵の視界に入り続けてください。あとはリュカ王、ユースウッド殿も攻撃じゃなく防御の立ち回りで。攻撃は全てアイス王が務めます」


 マリューからの指示は続けて飛ぶ。

 

 「メロウ。タイミングを合わせて、魔法を」

 【うむ。準備はしている】


 ◇


 「オレが行く。桜花流 乱れ桜」


 高速移動からの乱れ切り。

 久しぶりの全力攻撃で、敵を斬り刻んだ。

 だが。


 「なんだこの防御力・・・この華凛で!? 切り落とすのがやっとかよ」


 オレは驚くしかできない。

 全力の乱れ桜の10連撃で、やっと四肢を切り落とせるレベルの魔物。

 今まで出会った魔物の中でも桁違いの強さだ。


 「オレでやっとか! なら、ユーさん。リュカ。無理はするな。絶対に前に出ないでくれ」

 「「了解だ」」


 二人には更に防御メインの立ち回りに変えてもらう。

 二人に群がる敵をオレが全力で攻撃。

 10体を撃破した。

 その時、後ろの20体が少しずつ前に出てきた。ルドーの魔法が弱まっているらしい。

 

 「まずいな・・・・ルドー! ナディア! まだその魔法を頼む。ナディア、魔力渡しを全力に切り替えてくれ」

 「わかった! いくよ。ルドー」

 「はい。僕も出し続けます」


 二人の連携により、敵の足が再び止まる。

 重力に負けて前に進みずらくなった敵は、こちらを睨むだけに終わっている。


 【ルル。カバーする。蜘蛛の糸(スレッドスパイダー)


 目に見える魔法の糸が、敵の集団に出現。

 粘着性のある糸で、敵の行動を制限した。

 

 「これなら! リュカ。ユーさん。攻撃に転進だ。進んでくれ」

 「「了解!」」


 二人も全力攻撃を仕掛けて、オレと共に三人で突き進む。

 残り10体を撃破……。

 だが、まだ奥に20体がいる。


 「ルドー。魔法を解除。オレたちが戦う」

 「わかりました。3秒後に解除します。・・・3・・2・・1。解除しました」


 ルドーが魔法を解除すると、奥にいた20体の魔物たちはいっせいに飛び掛かってきた。


 「影縫い」


 敵の移動の列の隙間にアンナが現れる。

 敵の影に魔法の針を突き刺した。

 彼女のおかげで敵の動きが一瞬止まる。


 「アンナ。ナイスだ。桜花流 満開」

 

 オレの声に頷いたアンナは目線だけで次の標的を知らせる。

 この後のオレたちの連携は圧倒的だった。

 攻撃全てが通るようになり、そこから一瞬で敵を撃破出来た。


 ◇


 全てを倒した後。

 小休憩に入る。


 「つ、強い・・・・拙者の力でも及ばずか」

 「うむ。儂もだ」

 

 二人の意見に皆が頷く。

 この場の魔物の強さに下を向く仲間たちだった。


 「でも大丈夫。皆で力を合わせれば勝てるぞ。下を向くな。いける。このメンバーならな・・・オレは良かったと思ってるよ。他の奴らを連れて来ていたら脱落者が出たと思うわ。でも真実は伝える」


 正直な話。

 他の仲間では厳しかったと思う。

 死人が出た恐れがある。


 「たぶん、オレで奴らと互角の実力だ・・・んで、皆だと、正直に言うけど。たぶん二枚くらい落ちてる。だから無理をしないでいこう。でもまだまだ二枚程度の格落ちなら勝てる。これが三枚だったら厳しいけど、力を合わせればいけるぞ」

 「うん。わかった。ルルを信じてるよ」

 「ああ。ナディアもこれで回復しておけ」


 全力で魔力を使用したナディアにはマジックポーションを渡した。


 「アイス王。移動時間。距離。これが分からない現状で進むべきでしょうか?」

 「うん。マリュー。君のその意見は正しい。だけど、ここはいくしかない。いずれはいかないといけないんだ。だったらここで引いていれば、オレたちは一生事件の真相に近づけないぞ。行くしかない」

 「わ、わかりました」


 今のオレの言葉を聞いて、マリューは考え始めた。

 たぶん戦略の組み立てをしているのだと思う。

 戦える状況を上手く作ろうと必死になっていた。


 「ぼ・・・ボクがもうちょっと動ければ・・・・」

 「シオラ。そこは気にするな。今の役目はリタの護衛だけでいいんだ。それだけを考えてくれ。厳しい状況は変わらないけど、やれることだけはやろう。オレは君にそういう指導をしたぞ」

 「はい……わかりました」

 

 シオラは素直に頷いた。


 「私が回復を」

 「まて、リタは回復魔法を節約で頼む。ここからは継戦する形をとる。バランスを見て回復だ。ユーさんとリュカは怪我と言えるほどのは傷を負ってない。二人とも、まだいけるだろ」

 「儂は大丈夫だ」

 「かすり傷程度だからな。大丈夫だ」


 二人の戦闘経験が飛びぬけていて助かる部分が今の状況。

 これはおそらく、魔力のみで戦う人間だった場合。

 ここで大けがを負っていてもおかしくないのだ。


 「よし。次もこんな感じで突き進む。慎重に・・・でもゆっくりと進むわけじゃないからな。気を引き締めていこう」

 「「「 了解だ 」」」


 オレはここに来て生死と隣り合わせの冒険。

 久々に緊張感のある冒険に出くわしたのであった

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