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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
アレスロア VS 連合軍

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SS 盟友

 「ルル!」


 とある日。

 プラプラと町中を歩くルルを捕まえた。

 

 「どしたの。ユーさん? 急にさ」

 「おう。ちょっといいか。儂の工房まで」

 「お。いいね。いくよ。久しぶりだな。今どうなってんの?」


 急に誘われても嫌な顔一つもしないルルのこういう人懐っこい所がいい。

 いつどんな時でも気兼ねなく話かけられるのだ。


 「ユーさんって。今、物作ってんの?」

 「いや作っていない。工房で特殊なものを加工しているだけにしている」

 「特殊なもの?」

 「ああ。魔鋼鉄を圧縮して、マダイトと呼ばれる特殊鉄にしている」

 「マダイト?」


 ルルはジーバードの人間だから、こちらの常識を知らない。

 そのかわり、儂らだって向こうの常識を知らない。

 だから儂らはお互いの知識を交換するのだ。


 「こいつはな。強度が凄い。そして、全種類の魔法に適応が出来るようになる鉄だ。だから作るのが難しい。儂と、ドワーフの一部の職人しか作れない」

 「へ~。すげえ代物なんだな」

 「そうだ。しかも工程が複雑でな。時間もかかるから大量生産も出来ないぞ。正直に言うと、職人として腕を見せるには冥利に尽きるが、商売としては採算が取れんわ。ガハハハ」

 「そうなんだ。でもここなら没頭できるよな、別にユーさん商売人じゃないし」

 「まあな。ルルのおかげであれだけに集中できているからな。自分勝手に作ってるわ」

 「いいのいいの。好きな事やってよ。オレとユーさんの仲でしょ」


 とここもいい所だ。

 何一つ製作していないのに、儂の自由にしてくれるところもいい点だ。



 二人で儂の工房に到着。

 特殊工房は至ってシンプルな家のような構造だ。

 表面はお店。

 中層は工房で、奥が儂の寝床である。


 「ユーさん。作った物は売らないのか? 入口さ。お店の様な作りだよね」

 「まあ。いずれは武具を売ろうとは思ってるぞ」

 「そっか。それならこの作りがいいね」

 「うむ。それじゃあ、ここからだ」


 もう一つの扉を開けるとそこが工房。

 ルルは、マダイトに目を向けて、早速手に持った。


 「こいつか。頑丈そうだな」


 ルルがマダイトを拳の甲で叩く。

 硬さに驚いていた。

  

 「そうだ。頑丈さでも通常の鉄よりも強い」

 「やっぱり。そんでこれを何に使う気なの。ユーさんのハンマー?」

 「あれにはもう使ってあるわ」

 「へぇ。そうなんだ。あれに使ってあるのか・・・」

 「そこで、儂はな。ルルに刀を作ってやろうとな」

 「刀? 俺、持ってるよ。これ」


 ルルはマジックボックスから脇差を取り出した。

 美しい刀身に、つばの部分も精巧に作られている。

 腕のいい職人が作った物には間違いないのだ


 「まあそうだが、この脇差。ルルにとって大切なものなんだろう?」

 「ああ。めちゃくちゃ大切だ。オレの師で姉のような人から借りている刀だからな」

 「そうか・・・ならば。今後は使わんほうがいいと思う」

 「え? なんで???」

 「儂の予想だが……お主がこいつを使う時に力を解放しているのであれば、間違いなく。この脇差がお主の力に耐えきれんはずだ」


 ルルの魔力と、ルルのスキルとかいう奴の能力が異常に強い。

 そばにいるから、能力が桁違いになっているのが分かるのだ。

 最初の頃よりも遥かに強くなっているのだ。

 たぶん、この花嵐という刀の刀身がルルの力に耐えられないと思う。


 「な、なるほど。たしかにな。それは怖えな」 

 「そうだろ。その刀。消滅してしまえば治すことが出来ん。そこで儂からお主に新しいのを作ってやろう」

 「え。いいのかよ。大変じゃね」

 「いい。ルルは儂の盟友だろ。とっておきのをプレゼントしてやる」

 「それはそう。オレとユーさんは最初の友。盟友と呼ぶにふさわしいのよ。はははは。じゃあ、お願いしようかな」

 「うむ。まかせておけ」


 ルルの為に、儂は渾身の刀を作ることを決めたのだった。

 マダイトは、圧縮された鉄。

 それを更に、圧縮してコアを作り出す。

 ここにその人物の魔力を同調させていくと、特殊鋼鉄マダイトになる。

 そこで、核となる部分に。


 「ルル。これに魔力を込めてくれ」

 「おう。いいよ」


 ルルが魔力を込めると、特殊鋼鉄マダイトが割れた。

 ナディアが魔力を込めても壊れないはずのマダイトすらもルルは壊してしまった。

 儂は驚くしか出来なかった。


 「おいおい。こいつを破壊するのか。ルルの魔力はもうすでに怪物級なのでは・・・ナディアやメロウでも出来ないぞ」

 「そうなの? オレってやっぱ魔力もすんげえ伸びてるのかな」

 「そりゃあな。これを破壊するのだ。ありえん……日に日に強くなっておるわ」

 「そうか。皆へ指導してるからか。あれ、正直チートだよな。皆が頑張った分、オレの方にも来るのはさ」 

 「どうするか。マダイトではダメだという事か」

 「ほんじゃ。メロウとルドーに頼むか。ちょっと話聞いてもらおうよ」

 「それはいい提案だ」


 儂らは研究部門の二人を呼んだ。



 ◇


 【ユースウッド、どうしたのだ?】

 「これを見てくれ。メロウ。ルドー。これを」


 砕けたマダイトを見せた。


 【ほう。マダイトだな。それも純度もある】

 「ルルが壊したのだ。魔力同調してもらおうと、力を込めたらな」

 【な!? これを破壊だと・・・ありえん・・・しかしルルなら出来るか】


 メロウはこんなことはありえんと思っていても、ルルならしでかすだろうと思ってくれた。

 正直、皆同じ気持ちである。

 ルルなら、やってやれないことはないと。

 そういう期待感と呆れ度があるのだ。


 「へぇ。これは良きマダイトだ・・・これをユースウッドさんが作成なされたのですか?」

 「そうだ。それ、純度もあるだろ?」

 「はい、ありますね。なのに、コアの部分が破壊されるなんて、よほどの魔力量と質だったのでしょうね・・・ならば、衝撃吸収材が必要かもしれませんね。あとは魔力保有の石が必要です」

 「なんだそれは?」


 儂が聞くと、ルドーは答えてくれる。

 いつもながらの冷静な物言いだ。


 「まず、衝撃吸収材にギオレイスという魔物が持っている布が欲しいです。あれがあらゆるものの衝撃を吸収する性質を持っています。次に魔力保有の石。これはガイロの森のどこかにあるピースウェルのピンクの石が欲しいです。ピースウェルには色別で効果がありまして、ピンクが保有。スカイブルーが増強。ヴァイオレットが反発です。珍しい効果が出ます」

 「ほ~う。知らん石だな。よく知ってるな、ルドーは」 

 「僕はリュカの図書館の本を全部読んでますからね。リュカ王も、色々なところから本をもらってきてくれますし、それで情報を手に入れてますね。でもその知識を持っていて、実際には見に行ったことがないので、僕も外に出たかったってのがありますね。でも今はメロウさんの助手になれて幸せですね」

 【そうか。可愛い奴め。この男、非常に優秀で私は助かっているぞ】

 「そうだろうな。お主の物がどんどん改良されているものな」

 【そうだ。ルドーの研究意欲は私を越えているからな。そのおかげで、私が研究していた、とあるものまで完成の域に入りそうなのだ】

 「どんなものだ?」

 【防衛用の切り札だ。実用化まではいきたいと思っているが、試作機で暴発してな。まだまだ改良が必要だが、ルドーのおかげで何とかなるだろう】

 

 凄いものを開発しているらしいが、儂にはまだ教えてくれないみたいだ。

 二人とも研究をするのが好きなのだろう。

 似たような性格で息が合っていた。


 「儂ら、素材集めをいつかしないといけないのだな」

 「らしいね」


 ルルが頷いた。


 「ユーさん。じゃあさ。ギオレイスがどこにいるか知らんけど。ガイロの森なら行く予定があるから、一緒にいこうぜ。俺たちの冒険の始まりはそこからだな。重要そうだもんなガイロの森。俺もそこに行くために準備するわ。だからユーさん、俺の特訓に付き合ってよ。修行にさ」

 「おお。儂もそこに行くために鍛えようかな。ルル、やるか」

 「うん。さっそくやっか!」


 儂とルルはこうして模擬戦闘を繰り返した。

 魔力を鍛えるだけになってしまっては、体が訛るとして、ルルは儂と同じ土俵に立って訓練を重ねてくれた。


 「重突進の先(ハンマーオブスレイ)

 「よっと」


 普通の兵ならば、儂の魔力の圧力に、体が硬直する。

 だが、ルルはいとも簡単に躱すのだ。


 「これ、弱点あんな」

 「なに!?」


 儂の隣に立ったルル。

 拳を儂の右の腹に置いていた。


 「これ、側面と背後が弱いな。ユーさん。これは広い戦場で使っちゃだめだわ」

 「ん?」

 「これは敵が正面にいる時だけ。あとは相手が逃げられない時にだけ使った方がいいな。ユーさんの魔力が全面だけに集中しちゃってて、こういう横っ腹とかに攻撃が入ると、逆に大ダメージだわ」

 「そ。そうか。気をつけよう」

 「うん。気を付けた方がいい。休憩しようぜ」


 平原の上で寝そべって、儂とルルが談笑する。


 「あのさ。ユーさんってドアルドワーフだって話だったじゃん」

 「そうだ」

 「あれ、戦闘と鍛冶で、能力が別れてるの? それともさ。小さいバージョンとかでも戦えるのかな? ドヴォークだっけ?」 

 「うむ。戦えなくはないが、パワーは出ないぞ」

 「速度は?」

 「小回りは効くようになる」

 

 最後の答えの後、ルルは目を閉じで考え事をした。

 ルルの口が尖っている時は、考え事の時なのを儂は知っている。

 付き合いが長くなってきたからな。ルルの考えていることはだいぶ分かってきた。


 「んじゃあさ。ドルヴァンとドヴォークへの形態変化ってどんくらい?」

 「1分はかかるな」

 「そっか。あのさ、それ3秒に出来ねえかな」

 「は!?」

 「ユーさんはさ。もっと相手をかく乱して戦えるようになった方がいいよ。例えば、小さい状態で懐に入り込んで、一撃当てる前に大きくなるとかさ。その逆で小さくなって相手の攻撃から身を守るとかさ。たぶん、これをやれれば、ユーさんの戦いに幅が出来ると思う。獣人族のさ。獣身化(フォームチェンジ)って、修行したことで大体3秒~5秒くらいの時間にまで短くなったじゃんか。それと同じくらいの速度でやれれば、ユーさんはかなり強くなると思うんだよね」


 この柔軟な物の考え方が面白い。

 既存の考えに囚われないのが、変わっている証拠だ。

 ドワーフにだって思いつかないのだ。

 儂が悪いわけじゃないぞ。ガハハハ


 「そうか。獣身化(フォームチェンジ)みたいにな。練習してみるか」

 「うん。そんで小回りが利くなら横につけた後とかに変身して一撃とかね。真正面で戦うだけが戦いじゃないからさ。もっと汚く戦ってもいいな」

 「ふっ。儂は真っ正直ってわけか」

 「ああ。そうだよ。ユーさんのいい所でもあるけど、弱点でもある。オレみたいなずるい奴になれれば、ユーさんは最強さ。はははは」

 「ガハハハ。そうか!!」


 やはり儂は、この男を気に入っているようだ。

 この真っ直ぐな思いをすぐに伝えてくれる青年をな。

 歳は三百歳も違うのにな。

 儂はこの男を尊敬しているぞ。

 口には言わんけどな。

 だって、盟友だからな!!!



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