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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
アレスロア VS 連合軍

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第13話 アレスロア防衛戦争 ⑦

 少し前。


 「なに!? おい。そこのあんた、オレの町に軍が来てんのか!」

 「・・・は? 誰だ?」


 想定外の事態に、オレは振り返って、解放軍の伝令兵に思わず聞き返していた。

 伝令兵は【誰だこいつ】の顔を当然する。

 招待されていない男をアルランのそばで見たら、誰だってそうなるだろう。


 「アレスロアにまでか。それはまずいな。苦しい戦況になるはずだ」

 

 リュカが同じ感想を言ってくれた。


 「・・・たしかにまずいな。お前の町に軍が来てるのだとしたら、すでに軍を通しているはずだな。そして、こちらの本拠地にまで奴らの軍が迫っているか」


 左隣のヴァイスが通常意見を言ったけど、オレが否定しておく。


 「いや、それはないと信じている。オレの町に居る連中はちょっとやそっとじゃ動じねえ。あいつらだったら、戦いに出るはずだ。無条件降伏なんかして、敵をやり過ごすなんて・・・そんな肝っ玉が小せえ連中じゃねえ」


 そうオレと共に生きてくれた人たちは、諦めが悪い連中だ。

 絶対に戦うはず。だからある意味で不安があるのよ。


 「ルルちゃん、仲間を信じてるのね」

 「ああ。当たり前だ。あそこにはドワーフキングとエルフの女王がいるんだぞ。何もしないで負けを認めるような軟な人間はあそこにいない。オレが育てた兵士たちだって諦めるはずがねえ」


 オレの言葉にアイヴィスは微笑んでいた。


 「どうするつもりだ。お前は。どう動く」


 この緊急事態にアルランはあくまで冷静。

 さすがは解放軍のリーダーだ。

 状況が悪くても慌てることはない。


 「ああ。ちょっと待ってな。アルランたちとも連携を取りたいから。今すぐ、考える」


 結局、戦争は避けられなかった。

 でもオレの町の奴らなら戦っているのは確定だ。

 ここが曖昧になるわけがない。

 オレの信じる仲間はこんな事には負けねえからな。


 でも、オレの街は大丈夫でも、あっちの解放軍の二都市が間違いなく陥落するだろう。

 一つが落ちている状況ではもう一つも落ちるのは確定だ。

 あとは前線に残るのが、都市ジュズランになる。

 奴らはあそこを無視して、森の北を移動して解放軍をえぐり込むような手は考えないはず。

 それに、それを成してもほぼ意味がない。

 ジュズランが残っていれば、逆に深い位置に入り込んだことで反撃を食らうからだ。

 向こうが逆に難しいかじ取りをしないといけなくなる。

 敵が馬鹿じゃない限り、次に狙うのはジュズランだけなんだ。

 そしてオレの町が敵の軍を止めている状況なら。戦局は逆転可能なはずだな。


 「よし。策はこれしかないな。アルラン! クヴァロを使う気があるのか!」

 「ん? 奴をか」

 「ああ。あいつは戦闘だけは使える。他は塵だけどな」

 「まあそうだな。お前はあいつをどう使う気だ」


 同じ感想有難い。

 アルランも本音では使いたくないんだな。


 「今すぐ、ジュズランにアイヴィスとヴァイスの二人が出撃だ。そんでアイヴィスが将になって、クヴァロを上手く使いながらジュズランの防衛に回ろう。アルランが、戦争するために集めた二軍をそのままジュズランに集結させていい!」

 「ん? お前の町の方に兵を回さないでいいのか? 解放軍が守った方がよいのでは?」

 「いらない。オレの町のことは、オレがなんとかする。それにもう敵がいるなら、軍をここから出しても意味がない。それと、ジュズランが取られるのがまずいからな、まだ攻められていない間に軍を入れておきたい」

 「・・わかった」


 アルランが了承した。


 「拙者にはなぜ指示がない?」

 「リュカはさ。ここにいてくれ。アルランと連携をしてほしい。リュカにはこいつを渡す」

 

 メロウのアクセサリーを俺は投げ渡した。

 リュカが片手でキャッチした。

 

 「ん? これは?」

 「そいつは通信が出来る。連絡を入れられるアクセサリーだ。こっちとそっちの情報をやりとりしよう。メロウがいればできるからさ! それと、リュカの兵をイナシス防衛に回してくれ。連合はここを攻めるつもりでオレの所を攻めてきているからな。ここにはまだ時間の余裕があるから、リュカから兵がこちらに来ればいい。まだ間に合うぞ!」

 「なるほどな・・・大臣共に連絡を入れよう」

 「ああ。そんじゃ、クルーナの輝石。あれを使いたいが、ここではダメなんだろ? アルラン、なんでダメなんだ?」

 

 イナシスはクルーナの輝石での移動が禁止であった。

 本当は四天王の皆も、その移動方法で本拠地と自分の住む都市を繋げたいはず。

 なのに、ここでは禁止事項で不便な状態だ。

 そりでの移動が義務付けられているからな。


 「それは、無理だ。クオルターナの導きの邪魔をされたくなくてな。魔法陣は禁止事項にしていた。あれらは結界系統の魔法だからな。万が一だが、干渉されたら困る」

 「なるほどな。それはたしかにだわ。そっちが最優先に決まってるよな」

 「そうだ。連携に不便が起きても、あれらは使用できない」

 「わかった。ならどこの距離からなら使ってもいいんだ?」

 「都市外だ。イナシスの都市外なら使ってもいい」

 「了解だ。今からいってくる」

 「わかった。連絡を待つ」


 アルランの言葉の後。リュカが話しかけてきた。


 「ルル、待て。クルーナを使うのか?」

 「ああ」

 「壊れるぞ」

 「しょうがない。だからあとでこいつをもらってもいいか」

 

 クルーナの輝石を指でつまんで、リュカにもう一個また欲しいですっとアピールした。


 「無論だ。拙者が新しいのを届けよう」

 「サンキュ。もらえたら、後でリュカとアレスロアを繋げるわ」

 「うむ。頑張って来い」

 「ああ。じゃあな。急ぐわ」


 と言ってオレは解放軍を後にした。

  

 城を出て、都市外を目指し走る。


 「クルーナの輝石。めちゃくちゃ勿体ないけど。ここで使わないと駄目だ」


 魔法陣の上でない場合、石を使用すれば砕け散る。

 でも、ここで幸いなのは、このイナシスの都市がリュカの都市よりもオレの町に近い事だ。

 ここでこいつを使えば、クルーナの輝石が優先するのは・・・。


 「オレの町だ!」


 都市の外に出たオレは石を砕けさせて、アレスロアに帰還した。



 ◇


 会議室に到着する。

 外に出て皆の様子を確認。

 町の中は忙しく働いているわりには冷静だ。いつも通りに近い。

 ママロンさんたちが慌ただしく料理を作っているだけで、他は何も変わりがないくらいだ。

 でも、やけに料理を作っている人たちが多いと思うのだが、戦時中だからか?

 

 オレは、日常を確認するのはここでやめて、上空から見るために飛んだ。


 町をぐるりと見渡して確認。

 町全体を囲う城壁に、左右の沼。

 こんなのいつの間に出来たのかと思う。

 たったの20日余りだぞ。

 この短期間で、オレの味方はとんでもねえことをしたもんだ。

 そうか、戦争が起きるかもしれないと伝えておいたから、アンナさんが急ピッチで仕上げたのかもしれない。

 さすがはアンナさんだ。

 

 空から見ているから、さらに奥も把握できた。

 北と南に、敵の軍が展開されているのがわかった。

 でもなぜか、北は膠着状態だ。

 あれほどの数の敵がいて、こちらは義勇兵でもない一般人たちが並んでいるのに、互角とはなぜだろう。

 アンナさんが何かをしたのか?

 相手と密約か何かをしたのかもしれない。

 策にしてはおかしい。

 敵の攻撃が本気には見えないからだ。


 だからオレは南に集中する。

 するとみんながボロボロになっていた。

 劣勢。そして疲労困憊状態。

 数の違いで押され過ぎている。

 体力も回復してないようだから、魔力も限界を迎えてそうだ。

 だから、みんなが継戦状態を維持できていない。

 当たり前だ。

 後ろに下がって一旦回復しながらなんて出来ない。

 ひっきりなしに戦ったんだろう。

 こっちは兵が3000しかいないんだ。

 どれくらい耐えたかは知らないけど、よくやったと思う。

 でもここからならまだまだやれる。

 一手を導き出せる。

 オレは彼らの上空へと移動した。



 ◇


 魔力でオレの声を反響させた。

 だから今のオレの声はこの南の城壁以降の人間全てに届いているはずだ。


 「やるぞ。皆。ほれ、下を向くなよ。ここから反撃だ」


 オレの言葉で仲間たちは一斉に空を見た。

 

 「アレスロアの民よ! 耳を塞げ! ここはオレにまかせろ!」


 仲間たち全員が、両手で自分の耳を塞いだ。


 「聞け。連合軍! オレの町に手を出すとはどういう事かを思い知れ・・・・下がれ!」


 ビリビリっと相手を威圧する言葉の王魂と、一瞬で相手をビビらせる威風を同時発動。

 全体威嚇攻撃になってしまい、二つの効果は個々人に対してやや弱めになるけど、一般兵くらいの実力ならバッチリ刺さる!

 敵軍は意図せず足を後ろに引き、攻撃の手を止めた。

 この僅かに出来た空白の間にこちらの行動を立てなおす。


 「ユーさん! そこの土台を破壊する。城壁まで引け!」

 「うむ。わかった」


 ユーさんが下がると同時にオレは。


 「陽光のエレメンタル(エヒルファイブ)だ」


 五属性の俺の最大火力魔法を土の階段に放つ。

 土の階段。

 ユーさんたちの時代の戦争の話を前に聞いておいてよかったぜ。


 オレ、実物を見て結構わくわくしている。

 これは、オレたちの世界で言う梯子の役割だ。

 城壁に侵入するための攻城兵器のひとつとして使っているみたいだな。

 坂になっているから梯子よりも楽に、しかも大勢で登ることができるが、あの奥にいる魔法使い部隊がこの土の階段を維持しないといけないのか。

 あれは魔力消費が結構ありそうだ。

 魔法部隊の人数がいるからこそ出来る魔法みたいだ。

 オレの感覚的に言えばマジックタンク。

 飛空艇の動力維持に近い魔力を流し続けるみたいだ!

 



 オレは陽光のエレメンタル(エヒルファイブ)を土の階段の土台に当てた。

 一撃必殺の最強魔法は当たった瞬間に土の階段を崩した。

 どろどろと崩れ落ちる階段。

 その上にいた兵士らも、崩れた土と共に落ちていく。


 「ローレン、リヴァン! こっちまで引け。メロウ。出てこい!」


 空で敵と戦うローレンとリヴァンを後退させて、オレはメロウをそばに呼んだ。

 戻ってくる二人の前にメロウに指示を出す。


 「メロウ。あっちの鳥の人を進入禁止にさせる魔法を展開してくれ。オレと特訓した時の奴がいい」

 【了解だ。ローレンたちの背後に出現させる千糸針(サウザンドフォース)


 ◇


 逃げ惑うようにして左右に動きながら飛んでいるローレンとリヴァン。

 体が上手く動かないローレンを、リヴァンは支えながら部隊も指揮して撤退する。

 

 「ルルさんが言っているのです。下がりますよ。ローレン」

 「わ、分かってる。領主様の指示だ・・く、悔しいけどな」

 

 二人の背後から悲鳴が聞こえた。

 振り向きながら町へ飛ぶ。


 「な、なんだ!? 何が起きている?」

 「今のうちに逃げますよ」


 追いかけてきていたエルサムの部隊は、体が糸に絡まり、血を噴き出して地面へと落ちていく。

 敵はメロウの見えない糸で何も出来なくなった。

 

 ◇


 「上出来だ。メロウ。ローレンたちを誘導してくれ」

 【任せろ。お前はどうするんだ?】

 「次の指示はマーカスだ。あそこの敵を追い出す」

 【お前の魔法でか?】

 「あれは駄目だ。オレは皆で勝つからさ! 力は使わねえ」

 【フッ・・そうか。いってこい。こっちはまかせろ】

 「ああ」


 オレは空中から城壁に降りた。マーカスのそばに近づいた。


 「マーカス。諦めんなよ。弓の準備だ」

 「了解だ。領主様」


 マーカスの部隊が弓を準備。

 オレの王魂によってまだ足を止めている敵を捉える。

 

 「サリュー。盾はいい。攻撃でヒットアンドアウェイだ。隊列攻撃を仕掛けろ。一撃……全力攻撃したら引け」

 「はっ」


 サリューの部隊に指示。

 一列目が渾身の一撃を繰り出して、敵を倒して一番最後の列に下がる。

 そこから二列目が同じ行動を起こして、三列目と交代。

 三列目が下がった瞬間。


 「マーカス。今だ。弓で支援。相手を押しこめ」

 「了解だ。弓だ。一斉斉射だ」


 マーカスの部隊が矢を放ち、サリュー部隊の防御を担う。

 敵の反撃は交代時に来る。

 だからその隙を彼らで埋める。


 「まだまだ。ここからこれでいけるぞ。やるぞ。みんな!!!」

 「「「おおおおおおおおおおお」」」


 オレの鼓舞と指揮がこいつらには効く。

 オレのことを信頼してくれる仲間たちだからだ。



 ここから勢いを取り戻したアレスロア軍は敵を退けた。


 夜となる一歩手前の空。

 鐘の音が鳴り響いた。


 「撤退だな。やはりな・・・夜まで攻撃するバカはいねえもんな」


 夜となれば引くしかない。

 さすがにここまでの反撃をもらいながら、敵はこちらを攻め続けはしなかった。

 皆の力が発揮された展開は、オレの想像通りのもの。

 後は敵を知ることが出来れば、特に性格を読み切れば、オレたちはこの戦争を乗り切れるだろう。

 

 

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