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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
アレスロア VS 連合軍

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第11話 アレスロア防衛戦争 ⑤

 二日目の夜。

 この日もフーリーズンとママロンはオルタナ軍をおもてなししていた。

 しかし前夜とは違う点がある。

 それがアンナがこちらに来ていないこと。

 彼女は、全体会議をしていたから来られなかったのだ。


  

 アレスロア中央。

 会議室でナディアを横にして休ませて、ローレンとマーゼンは近くの部屋で傷の治療をしている。

 その他の幹部で会議が始まった。

 アンナが司会をする。


 「これは・・・マーゼンさんが予測していた事態よりもおそらく悪い。こちらの最大戦力の疲労がピークを迎える所か。越えていますよ。どうしましょうか」

 「うむ。エルフ魔法部隊の疲労。そして切り札ナディアを使用してしまい。最後に重要な軍師マーゼンの離脱だ。儂らには厳しい現状だな」


 ユースウッドはアンナの意見に同意した。

 

 「そうだな。儂らも戦えるドワーフがいればよかったがな。今はユースウッドと数名しかいないからな。近接部隊も強いと言ってもな。向こうの数がな」

 

 アマゲンも憂いていた。


 「しかし、それでも戦うしかない。私たちはここが好きなんですよ。ルルさんが好きなんですよ」


 リヴァンの声に皆が頷いた。

 思いは一緒でも、守るための一手がない。


 【うむ。こうなると私が考えた試作機を使おう】

 「え、なんですか。それは?」


 アンナが聞くと。


 【魔導砲だ。私とルドーで完成までいっている。量産が出来ていないが二個。いけるぞ】

 「魔導砲? 何をするものなのだ」


 ユースウッドが聞いた。


 【これは魔力を装填させて、魔力の塊を弾として撃つのだ。これの利点は、近接部隊の魔力でも攻撃ができる点だ。魔法部隊を必要とせずに強力な一撃を生み出せる】

 「そ・・そんなものをか」

 【ああ。この町。皆が鍛えていることを考えると。これを作っておけば、別に兵士じゃなくとも戦うことができるだろうと思ってな。これは脅しの為の一発でもいい。こちらにはまだ強烈な一撃を持っているんだと相手に知らせることができる。ただし連弾ができなくてな。次の争点までの間に砲門を掃除せねばならんのだ。面倒な代物だ】


 威力は十分であるが、弱点はまだある。

 改良点があるけども、完成はしていると、メロウは説明した。


 「そうか。凄いものを作ったな」

 【うむ。今持ってきて、アマゲンたちに南の城壁に固定してもらおう。あれは威力がありすぎて砲弾を発射すると、勝手に魔導砲が後ろに下がってしまうから危険なのだ】

 「わかった。儂に任せろ」


 アマゲンが答えた。


 【よし。あとでそれをやろう。ルドーも連れてくる】


 話の中で希望が一つ生まれた頃に、会議室の扉が開く。

 満身創痍のマーゼンが隣の部屋からやってきた。

 

 「み、みなさん」

 「「「 マーゼン!? 」」」

 

 彼女は、よたよたと歩き席に座る。


 「ここから、わ、私の策を。おそらく、今の敵は動揺しています。もしかしたら敵は最初動かないかもしれません」

 「なに!? どうしてだ。マーゼン?」


 ユースウッドが聞く。


 「ナディア様がこちらにいると宣言したためです。おそらく敵の中にナディア様と戦う事を躊躇する者がいるはずです。半分・・・いや、四分の一は戦意が無くなっていると思います。そこをつきます」


 マーゼンは紙とペンを求めた。

 リヴァンが持ってきた紙に、図を書く。


 「先程の魔導砲とやらは、魔力の塊を発射するのですよね。強力な形でですよね?」

 【そうだ。かなりの威力だ。小さな丘なら消し飛ばせる。それを二発まで出せる】

 「そ、それならば、我々はハッタリをかまします。ナディア様は古代魔法を二発も使用しました。これはそう簡単に魔力が回復しません。ナディア様は明日くらいまで。おそらく普通の魔法しか使用できません。ならば、それを使います。古代魔法だと豪語します」


 威力が凄まじいのならば、嘘をつく。

 マーゼンの戦略だった。


 【なるほど。マーゼンは頭がいいな。要は魔導砲をナディアの古代魔法のようにして使うつもりなのだな】

 「はい、そうです・・しかもそれを当てなくていいのです。威嚇に使用する。それだけで敵は躊躇します。一日または二日。敵を機能停止させれば、ナディア様とエルフたちの魔力が回復します」


 時間稼ぎに使用する作戦だった。


 【・・なるほど。そこまで考えているか。マーゼンよ。お前は・・・天才だな】

 「いいえ。私は大したことないです。私の策は全て。師の教えですからね」

 【お前の師?】

 「はい。私の師はウルダーナ様です」

 【ん? リュカではなく】

 「ええ。カーベントのウルダーナ。カーベント族の長の女性です」

 【カーベントだと!? どこにいるのだ? 奴らは今、大陸にいたのか】

 「はい。隠れ里にいます。誰にも教えられませんがね」

 【そうか】


 カーベント。

 エルフとドワーフと同じ。

 妖精族。

 エルフは魔法が主体。

 ドワーフは近接と鍛冶。

 カーベントは、結界と特殊魔法が得意な種族。

 彼らは小さな体の背に羽を生やしている。

 パタパタと飛ぶ姿はとても可愛らしい。


 【よくまあ。珍しい種族とつながりがあるな】

 「はい。生きていけない赤子だった私を彼女が助けてくれましてね。そこからの縁で大きくなるまで育ててもらいました」

 【ふむ……なるほどな。その頭のキレ具合でわかるな。竜人種は真っ直ぐな戦いをするからな。計略をすることがない。面白いな。カーベントに育てられた竜人種か】

 

 メロウは感心していた。


 「それで、私たちは、耐え続けて敵の進軍を止めた先の停戦を狙います。耐えるしかないのは、こちらの数が少ないから、せめて後数千ほどあれば」

 「そこはしかたない。まだできたばかりの町だからな」


 ユースウッドが言った後。

 ナディアが起きてきた。


 「そう。でも今のでもよく戦っていると思うわ。あたし、あそこに立って脅せばいいのよね。やってみるわ」

 「……はい。やってみましょう。そこにしかチャンスはないです。魔導砲の魔力はもちろん」

 【そうだな。近接部隊の魔力を使う。それで魔法部隊の回復を待つだな】

 「そうです。あとはナディア様の脅し次第。敵の行動を制限させます」

 

 作戦は一つとなった。

 あとはナディア次第になるのであった。


 ◇


 翌朝。

 南門に敵兵が向かって来ない。

 ナディアと戦えるのかという戸惑いが気持ちの中にあるのだろう。

 

 あそこにはナディアがいる。

 敬うべき人がそこにいる事実が、兵士たちの躊躇を生んでいた。

 仲間ならこの上ない味方だが、敵ならば強敵すぎて挑みづらい。


 ナディアは南門の上に立った。

 その姿は威風堂々のようにみえて、実の所、仲間によって背中を支えられて立っていた。

 数人のエルフが敵には見えないように後ろを支えていたのだ。

 立つのもやっとな彼女は敵が移動してくるのを待っていた。

 時間はお昼ごろとなる。


 「いったい。どのタイミングよ・・・って、あたし。つ、疲れてるのね。立つのもやっとなんて」


 古代魔法二連発。

 しかも範囲を大きく展開したことで、ナディアの魔力は空っぽになってしまっていた。


 「う。動いてきますよ・・・まだ、敵は諦めない。特にあのジャバルという男。絶対にあきらめるような性格ではない」


 マーゼンは城壁の縁に肘を置いて、壁で体を支えながら敵を観察した。

 体力の限界でも町を守るために身を粉にする所存だ。


 「ん! あれは、魔力だな。ナディア。今だ」


 ユースウッドの言葉で、ナディアが話し出す。

 声に残された魔力を乗せて、大きな声にする。


 「連合軍よ。まだ懲りないのですか。仕掛ける気であるならば、こちらからいきますよ。ナディアの新たな魔法をその身に受けたいのでしょうか。食らいたくなければ、下がりなさい!」


 敵陣からざわざわと声が聞こえる。

 ナディアの新たな魔法。

 聞いたことのないワードだ。

 ナディアは継承からの伝統で、初代ナディア特有の魔法か、古代に生きた人々の魔法を使うのに、新しい魔法を開発したのかと皆は恐怖した。

 

 【装填は出来ている。あとはタイミングを合わせるだけだ】


 城壁よりも離れた位置にある魔導砲の砲門は空を向いている。

 若干上に打ち上げて、敵の陣のどこかに落下させる作戦だ。

 直撃させないのには訳がある。

 それは、この砲台の存在を敵から見えないようにするためである。


 「来ますか! 仕方ありません・・・食らいなさい。神の鉄槌 魔弾エルボレア!」


 皆の目にも見える敵の魔法部隊の魔力が増大したそのタイミングでナディアが指示を出した。

 後ろに控えていた。

 メロウとルドーは同時に魔導砲を発射。

 二個の白い光の砲弾が空を飛ぶ。

 南門の城壁の上から、二つの光は山を描いて敵陣に到達。


 一個は手前に。一個は敵の右に、攻撃が逸れてしまったが。

 敵は恐れ慄く。

 なぜなら、目の前に出来た穴が深い!

 底知れぬ威力を誇っていた。


 敵陣では・・・。

 慌てる味方を宥めながら、ジャバルは撤退を指示。


 「下がれ。一時撤退で陣まで戻れ。もう一度あれを食らえば、ひとたまりもない」


 ジャバルの指示に従えるだけまだ冷静さがあったジャバル軍。

 彼らは、ナディアの見せかけの攻撃に恐れたのだ。

 彼らは怯んだのだ。

 ここで押せば勝てたのに・・・。

 判断を誤ったジャバル軍が立ち往生した。

 それが、アレスロア防衛戦争三日目の出来事である。


 

 

  

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