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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
アレスロア VS 連合軍

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第1話 会議

 ルルロアたちの会議から20日前の話。


 「メロウはどこに行ったの? メロウがいないんじゃ、ルルと連絡が取れないじゃん。まだあっちにいるのかしら。そう言えば、ルドーもいない。もしかして、メロウの家の方で一緒に研究しているのかも」

 

 ナディアはアレスロアの重要施設を巡ってメロウを探していた。

 いざという時に、ルルへの連絡手段がないのが不安で。

 メロウがそばにいればひとまず安心だから、自分のそばに置いておこうとしたのだが、彼がどこかにいなくなっていた。

 彼女が最後に向かったのは会議室。

 そこの入り口の扉に手をかけると、アンナがこちらに向かって歩いてきたのが見えた。


 「アンナ。どこ行ってたの?」

 「あ、ナディア様。はい。今は城壁の設計資料を考えていまして、予定地を見学してました」 

 「城壁?」

 「はい。ルルロア様から指示を受けていたので、この際一挙に防衛を考えた方がいいとマーゼンさんがですね」

 「マーゼンがね」


 マーゼンとルドーは仲間になった時からナディアについての現状を知らせてある。

 だから二人とも彼女の情報は外部には漏らさせないと誓ってくれた。

 それと今のナディアは外に出る時などは、目などを変化させて変装をするのだが。

 そもそも百年も彼女が表に出ていないので、長命の種族以外は彼女の容姿を知らない者がチラホラとアレスロアの町にもいたりする。

 獣人族や亜人族の一部、ヒュームなどは容姿を知らない人が多いのだ。


 「どういう計画なの」


 ナディアが聞きながら、入り口を開ける。


 「ええ。一応最大区画を確保してから余裕をもって城壁を作ろうかと。今は工房でストックが出来るくらいに頑強な壁の素材を作ってますからね。通常ペースで建てるとなると一カ月ほどで城壁を作れます」

 「ふ~ん。そんなにすぐに建てられるものなの?」

 「ええ。メロウの魔法は有効なのです。あれはイメージで建物を作れる上に、ドワーフたちの元々の建築の腕前を再現できるらしく頑丈に作りやすいのだそうです。しかも今はドワーフの方たちが増えてくれましたからね。今いる建築者は100名近くいるのですよ。全員が壁の建築にいけばその半分くらいでいけるんじゃないですかね」

 「へ~。凄いわね。そんなスピードじゃ普通は出来ないわよね」


 入口から入り応接室を抜けて、二人は二階の会議室に向かった。


 「ええ。これもそれも全てはルルロア様がお考えになった事。彼は先を見通す天才ですから」

 「そ・・・そうかな」


 ナディアは返答に困ってから答えた。


 「あたし、ルルはそんなに先を考えているわけじゃないと思うけどな。たまたまだと思うよ。いや、絶対にたまたまよ。あの人って、やりたいことをその都度やって、うまくいっている感じがする。あとね。後先も考えてないわよ」 

 「そうですか? んんん。そうなのですか・・・まあ、ナディア様が言うのならそうなのかもしれませんね」

 「ええ。たぶんそうよ。ルルっていい加減な面があるからね。あと、あまり計画に縛られないわよ。自由が好きだからね。あたしの事も自由に野放しだもん。もう少し縛ってくれてもいいのに・・・ねぇ」


 ナディアはルルロアを理解していた。

 ルルロアは万能ではない。

 行き当たりばったりなところが多々ある。

 それでも上手く行くのは彼には信念があるからだ。

 それと仲間たちを信じている事だ。

 一人の力で全てを解決することはない。

 この先の困難は、全員で打破するものだと思っているのだ。


 「アンナさん! あ、ナディア様!?」


 慌てているリヴァンが会議室に入ってきた。


 「お二人とも、ちょうどよかった。ローレンさんと私で怪しい動きを捉えました。連合が軍を動かしています」

 「え!?」

 「報告したいのですが。皆さんを集めた方がいいですか」

 「そうですね。その方がいいでしょう。会議室を開けましょう」


 アンナの指令の通りにリヴァンが動く。


 ◇


 会議室にルルロア以外の集まれる仲間たちが集まる。

 アンナ。マーゼン。ナディア。ユースウッド。アマゲン。リヴァン。ローレン。フーリーズンたちである。


 「私が事態を説明します。アンナさんは私の補助でお願いします」


 マーゼンが司会進行兼軍師となった。

 戦場の盤面計算をしたことがないアンナよりも、マーゼンの方が戦いに関することが詳しいからだ。


 「では、どのような局面になったのでしょう。ローレンさん、リヴァンさん。偵察の内容を詳しく言ってください」


 マーゼンは慌てることなく冷静に聞き出す。

 

 「はい。私から」

 

 リヴァンが立ち上がる。


 「現在、北方面の偵察はいらないと、ルルさんから助言がありましたので。私たちは南の連合軍の方を入念に偵察していました。私は西でローレンが東です。そこで」


 リヴァンが咳払いをして話を再開させる。


 「南西方面のジャリコに軍が集結しているとの連絡を受けて、私も偵察に行くと、連合は3万の軍を準備していました。ならばと思い、もう一つの大都市も帰りがてらに、少し迂回して寄っていき、連合の本拠地シューカルにも行きましたところ。あそこには6万の軍がありました。この数はさすがに戦闘の・・・」


 大軍の出現にリヴァンはここで報告をとめた。


 「はいありがとうございます。まずここからは事態を把握してから考えましょう。次ローレンさん。報告をどうぞ」

 「はい。自分は東です。ナルズで軍が展開。そこは3万で、エルフのフルカンタラでも1万の兵が出てきたと偵察兵が教えてくれました」

 「そうですか。他に何か異変に気付いた方いますか?」


 マーゼンが聞くと。


 「おいら、昨日ルスタルでもそんな話を聞いたよ。なんだかね。兵の徴集が激しくなったとかさ。もしかしたら、近隣の町や村の人達が兵として集まっているのかも」

 「そうですか。その数の用意は、確かに。都市のみでは出来ませんしね。連合軍の領土全体が兵を集めている。これはありえる話です」


 フーリーズンの意見も貴重だとマーゼンは頷く。

 俯き加減になるマーゼンは思考をし始めた。


 「ん~。連合はファイナの洗礼を死守したい。そして何より、第三次の苦い思い出がある。目的はおそらく先手を打つことかもしれない」

 「先手を打つ? どういうことでしょう、マーゼンさん」

 

 隣にいるアンナがマーゼンに聞いてきた。


 「はい。現在解放軍は軍を準備しています。しかしまだそれは奥地での準備です。アルランは焦ってしまった。フィリアグレースを探すために。軍を慌てて準備したせいで、連合軍に察知されてしまった」


 マーゼンは淡々と予想を話し始めた。


 「しかし連合の立場からすると、この準備だけでも、開戦するのだと考えた。そこでもし解放軍に先に攻撃を受ければ大変だとして、連合軍も慌てて緊急招集をする。戦争の準備だけをすればよいかと思ったが。ここに来て、先にやられるくらいならばと……解放軍が先手を取らずとも動くのが・・・」

 「まさか。先に連合軍が動く!?」


 アンナが驚いてると、周りの者たちも気づく。


 「待て。その場合。儂らに来るかもしれない兵は結構いるよな。おそらく、3万は来るとみていいな」

 「はい。そう考えられるかと」


 マーゼンとユースウッドは意見が一致していた。


 「うむ。おそらくシューカルの兵はそのまま北上はせんと思う。奇襲を仕掛けるならばガイルハイゼンにいくために別れる。あの城塞都市を連合軍の領土の場所に置いておきながら解放軍のイナシスを攻め込むとは考えられない。そうだろマーゼン」

 「はい。ユースウッド殿の言う通り。防御を疎かにして攻撃のみを考えるのは愚の骨頂。それに氷の大地で大軍を一気に動かすのは難しいので、一度に9万の兵がこちらに来るのは考えられない。おそらく最大で4万です」


 敵の出兵限界値を見極めた。


 「でも彼らがここに来てどうするの。あたしたちと戦うの?」

 「はい。ナディア様。そこです。判断をどうするか。軍を通すにしても無条件ではないでしょう。彼らはこの町の規模を知っています。兵をよこせとも言ってくるかもしれません」  

 「なるほど。私はそこを考えてなかったです。考えが足りてませんね」


 アンナがマーゼンの意見にハッとさせられた。

 思いもよらない意見だった。

 兵の徴集をここでもする。

 その意図はあなたたちはどちらの勢力ですかだ。

 連合軍に参加するなら良し、解放軍に協力するような素振りなら潰す。

 この連合軍の進軍により、連合軍の立場なら両方の選択を容易に出来るのだ。

 

 「私は徹底抗戦が一番いいと考えてます。それも時間をかけた形が良いでしょう」

 「なぜだ」


 端的にユースウッドが聞くと、マーゼンは話を続ける。


 「はい。これほどの広範囲の規模で軍が展開するならば、おそらく連合軍は、解放軍全体に仕掛けるのです。攻撃する前に、先に仕掛ける。それも同時多発です。ガイルハイゼン。あとはパスティーノ。こちらは先の戦争で奪われた都市ですからここを奪取するのがメインの計画になるでしょう。そして、ここを奪うためには、本拠地にも攻めてくるのかもと解放軍に意識してもらいたいので、中央を攻めようとします。なのでギランドヴァニア平原を突き進む軍が必要です」


 本命を悟らせないための軍がこちらに来る。

 マーゼンの読みである。


 「おいらたちの町にも攻撃が来るって話はそういうことか・・・とばっちりだ」

 「ええ。そうなりますが、我々はどうしますか。軍と戦う? それとも通す? これは皆さんが決めた方がいいでしょう。どうですか?」


 マーゼンはあくまでも自分は部外者だとしていた。

 皆に話を振った。


 「儂は戦う。それしかないわ」

 「あたしもそう思う」

 「私も」「自分も」

 「おいらは・・・うん。戦うしかないかな」

 

 皆の意見は賛成で、アンナも無言で頷いたが。

 ただ一人手を挙げた。アマゲンだ。


 「儂は戦うにしても城壁が必要だと思うぞ。防衛戦争にするにも、平原での野戦のようにするには厳しいぞ・・・それとそうだとすると勿体ない」


 アンナはアマゲンの前に計画書を置いた。


 「ええ。でしたら私に計画があります。これを急遽やりますか。アマゲン。作れますか」

 「ちょっと待ってくれ。読んでみる」


 数分後。


 「いけるな。モルゲンがいなくとも儂が指揮、ユースウッドが全体を統率して、寝ずにやれば、一週間くらいか。マーゼン、その期間でここに軍が来る可能性はあるか」

 「ありません。おそらくジャリコから直接はこちらに来ません。一度シューカルへ行き、編成をしてからこちらに来ると思います。そうなると最速で10日はかかります。でも私の予測はもっと遅い。さすがに強行軍ではこちらに来ません」

 「わかった。今から準備をすれば城壁を回せるはずだ。最悪、北側を疎かにしてでも先に南側を完成させるか。どうだ。ユースウッド」

 「うむ。儂がドワーフ部隊を引き入れよう。運搬にフーリーズン。頼むぞ」

 「うん。資材の運搬はおいらに任せてよ」


 ルルロアがいなくともアレスロアの皆は協力して町を守ろうとしていた。



 ◇


 全員の話が終わり。

 マーゼンから。


 「皆さん、私の予想を先に言います。この戦争、序盤を上手く凌げれば、長い防衛に入れると思います。そうなれば兵糧の問題などで、こちらが勝つことはできるはずです。こちらの魔法部隊は強い。近接の部隊もです。ですが数がありません。質が遥かに上回っていても、数で押されると思いますから、正念場はそこになると思います。ですから戦うと言っても希望がないわけではないです。頑張れるはずです。時間があればルルロア様も帰ってくるでしょうしね」


 最後に。


 「ナディア様。お声がけを」


 ナディアに進言した。


 「え。あたし!? なんで?」

 「それはもちろん。ルルロア様の代理はナディア様しかいないのです」

 「ええ。ユースウッドがいるじゃない」

 「儂はルルの片腕だ。代理にはなれん。ナディアの方が適任だ。いずれは伴侶なのだからな」

 「はははは。伴侶!?・・・あたしが」


 ナディアは立ち上がって驚く。

 周りの皆は微動だにせずにいる。


 「当り前なことで驚くな。ナディア。お前さんもこの町で重要な人物となった方がいい。いつも控えめに後ろに下がっているが、こうして戦になるならば、もうお前さんを隠しても仕方ないと思う。アンナ。お前はルルに判断を託されたんだろ。そこはどう考えている」

 「はい。ユースウッド様と同じ意見です。大軍がこちらにやってくるならば、ナディア様をもう隠す意味がないでしょう。ならば、こちらにはナディア様とユースウッド様がいると逆に連合軍に教えてやった方がいい。あなたたちのかつての盟主はこちらにいるのだと」


 それでもこちらを攻撃できるのかと。

 脅すつもりなのだ。


 「・・・え、ええ。あたしがね・・・うん。やってみるわ」

 「それじゃあ、一つ。儂らにたのむぞ。ナディア」


 ナディアが皆の前に立った。

 注目を浴びて一言。


 「ルルのためにも。あたしたちだけで乗り越えると、ここに宣言するわ。あたしたちはアレスロアを守りましょう!」

 「「「おおおお」」」


 アレスロアは、ルルロア抜きで、困難に立ち向かう事を決めた。


 

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