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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
ルルロア VS 解放軍

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第19話 アルラン 1

 五種族戦争の末期。

 私は、魔人族の一員として戦っていた。

 魔人族は、他種族に比べても強い。

 ただ魔人族は、横並びになることを嫌うために、軍としてはうまく機能せずで、戦争参加したとしても、敵よりも圧倒的に優位に戦場を支配したわけじゃなかった。

 我々は個人が強くても、集団での戦いでは苦戦していたのだ。

 協調性の無さが仇となっていた。



 三千年前のジークラッドとジーバードが別れる数年前の事。

 五種族戦争の話し合いがなされた。

 内容は停戦のはずなのだが。

 蓋を開けてみると、別な話し合いだった。


 「二つに別れる!? なぜ!」


 話の中身が信じられず。

 私は話の途中だというのに、イヴァンに聞いてしまった。

 知りえない情報。ありえない情報。

 大陸が壊れて、二つになるという情報は、当時の人間にとって寝耳に水だった。


 「事情は……言えねえんだわ。すまん。それでも信じてくれ。アルラン。オレの話をさ」

 

 イヴァン。

 彼はヒュームの王だった者だ。

 魔人族らのような最強クラスの戦闘力を持ってないヒューム。

 それなのに、数々の戦闘技術を開発して、私たち魔人族を含めた四種族を苦しめてきた伝説の王だ。

 魔力や体の弱さは、戦いの弱さとは結び付かない。

 強さとは意思であると体現した人だ。

 彼がいたから、ヒュームは存在していた。


 「アルラン。残念だけど本当の事なのよ。だから、私たちもイヴァンたちと共に話し合って、停戦することにしたの。あなたも信じてほしい。お願いします」


 冷静にものを言ったのはナディア・クオンタール。

 容姿も声も美しく。

 誰しもがこの人に憧れるような女性だ。

 初代ナディア。

 当時は赤い瞳が特徴的だった。

 

 「アルラン。お前の気持ちは、うちにだってわかるぜ。最初、あいつらに聞かされた時はさ。目ん玉飛び出るかと思ったんよ。でもな。今はうちらが争ってる暇がねえんだわ。今すぐ避難を開始しねえといけねえんだわ」


 凛々しい顔つきのファンは、女性でありながら男から見てもカッコよかった人だ。

 魔人族を引っ張ってきたのがファン。

 魔人族の英雄であった。

 バラバラだった魔人族をマシな程度にまでまとめ上げたのは、彼女が勇ましい人だったから。

 私も、彼女のような魔法使いになりたいと思ったくらいの天才だ。

 でも足元にも及ばなかった。

 彼女の偉大さは、永遠に語り継がれるだろうな。

 それくらいに強かった。


 「避難とは。いったいどこへ?」


 亜人族の頂点。

 竜人種のマイルセン・リュカは冷静であった。

 長刀を携えている彼は背中に愛刀を装備していた。

 唐突な事を言っているイヴァンたちを気にもしていない様子だった。


 「そうだ。リュカの疑問通りである。今のジーバードの荒れ具合から見ても避難なんてする場所はな・・・限られてるのだぞ。逃げるのならば、ジークラッドしかないぞよ」


 獣人族の頭。

 ノルン・カイエンも冷静に意見を述べた。

 ジークラッドもジーバードもこのところ災害が増えてきた。

 モンスターの大量発生や、ダンジョンと呼ばれる洞窟や塔などが出現したのだ。

 特にジーバードの方の荒れ具合は大変なものだった。


 この会議には、他にもドワーフのグスタフ、カーベントのミーフィ。

 魚人のマリーナ。鳥人のサヤカ。などなど。

 次世代の子らがいくつかいたのだが、その中でも私が一番の未熟者であった。

 大物たちの会議で、小物が意見するなど。

 緊急事態であるのに時間を取らせてしまっていた。 

 それくらいに私も若造であった。


 「いいか。皆。オレたちはジークラッドに移動しよう・・・そして、オレの優秀な仲間たちはジーバードに残す」


 イヴァンの最終意見に皆が驚く。


 「何言ってんだ。ヒュームをジーバードにだと!? 馬鹿か。イヴァン!」


 ファンが怒ったように言った。

 

 「まあ、聞いてくれ。ファン。オレはアルクスと話し合ってさ。今のジーバードの過酷な環境に身を置くのはヒュームしかいねえと思ってるんだ。オレたちは器用だ。それと、アルクスが向こうで、ヒュームが生き残れるような準備をしてくれると言ったんだわ。それでいつか。あの事態を回避してくれる術を持ってくれるだろうとな。信じるわ。むしろあちらから出現してくれれば、いいんだけどな」


 イヴァンは何かに期待していた。

 あの言い方が、何かを待ち望んでいる感じがしたのだ。

 それとアルクスという聞いた事のない名前。

 一体誰と協力してそんな事をしようとしているのか。

 教えてはくれなかった。


 「まあ、こっちとしてもあの問題を解決してくれる人を長い時をかけて作り上げるんだよ。両方で人を育てて。それにレミアレスもアルクスと同じように手伝ってくれると、言ってくれたんだ。オレたちはそこに賭けるしかねえのよ。未来に賭けるんだ! レミアレス。アルクス。そしてジーバードに残ることになるヒューム達。そんで、オレたちジークラッドに移動する者が、いずれ力を合わせて。あれを止めてみせるんだ! ここを守るんだよ! 皆でな!」


 やはり話の重要な部分がよくわからない。

 イヴァンが話す。

 レミアレスとアルクス。

 事態を回避とは、何を指しているのか。

 私にはまったくわからなかった。

 いや、ファンとナディア以外もだ。

 皆が首を傾げていた。


 「し、しかし。イヴァン!? お前たち。ヒュームは体が弱いんだぞ。あっちは過酷な環境になんだぞ!」


 ジーバードの民たちは、モンスター被害に悩まされていた。

 戦争中だろうが関係なしに、大陸に訪れる災害は戦争を一時中断させるほどだった。

 だからファンが心配するのも無理もなかった。


 「そこは心配でありますね。私たちのような魔力があるわけでもないですからね」


 ナディアも同じくである。


 「いいや。そこで、ヒュームが生き残れないようなら、この世界はもう終わってんだよ。彼らが駄目になるのなら、そっちは諦めよう。でも、だからこそ信じるんだ。それでも、オレたちが世界に抗える力をつけるとな。乗り越えなきゃ、世界は救われない!」


 ファン。イヴァン。ナディア。

 この三人は何かを知っていた。

 この先に何が起こるのかも知っていたし。

 これから先のもっと先でも、何かが起こる事を危惧してた。

 三人だけが停戦の先の先。

 皆とは違う目をしていたのだ。



 この後。

 本当に天変地異が起きて、大陸は二つに分かれた。

 ジーバードとジークラッドの間にある川から大陸が裂けていくのを私は見た。

 一つだったものが二つに分かれるところをただ茫然と見ていた。

 無力だと思った。

 人は自然の前では・・・・無力なんだ。




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