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第13話 誓い

 「そんじゃあ。オレの願いを二個。聞いてもらってもいいよな」

 「あ、あなた。急に」

 「あれ? 約束は守らんの? いいの? 四天王なのにさ」

 「いっ。ま、守るわ。どんなお願いなの?」


 彼女もまたオレと一緒で、負けず嫌いだと思う。

 人への誘惑と外面の話し方以外は、ナディアに近しい雰囲気があると思った通りだった。

 戦いに熱くなるタイプだったからすぐにわかるよ。

 挑発すれば乗ってくる。


 「それじゃあ。一つ目。オレのスキルを一つ受け入れて行動をする事を願いたい」

 「スキル?」

 「ああ。オレはジーバードのヒュームだ。こちらの人間じゃあない」 

 「な!? なんですって!? ジーバードですって」


 彼女は首を細かく左右に振った。

 嘘だと言いたそうだった。


 「どうよ。受け入れてくれるか」

 「・・・私は、何の行動をすることになるの」

 「オレのスキル『誓い』で行動することになる。これは元々大王のスキルだけどな。このスキルであんたを縛る。オレ、あんまり人を縛るのは好きじゃないんだけどさ。オレのやりたいことが終わったら解除するからさ。これをかけさせてくれ」


 大王のスキル『誓い』

 相手に決まりを誓わせる。

 行動に制限をかけることが出来る約束のようなもの。

 破った場合は相手のスキルが封印となる。

 強い大王だと相手のジョブごと封印させたことがあるらしい。

 相手にとっては凶悪なスキルだ。


 「その名称なら、私は何を誓うのぉ」

 「オレに関する情報を他人に言えない。教えることが出来ない。これを誓いにしよう」

 「え?」

 「今のオレは、あんたを完全信用できねえからさ。これであんたを縛る。悪いけどこれを破ると、あんた、魔力が死ぬからな。気を付けてね」

 「・・ええええええ??」

 「本来はスキルが封鎖されるんだけど、あんたの場合はスキルがないから魔力だ。これが封印される」

 「・・・リスク有り過ぎね。あとの一つは」


 話の展開が速くて助かる。


 「あんたの従者にして、会議に入れてくれ。あんたら、戦うなら戦いの前に会議があるだろ。そこにオレをねじ込んでくれ」

 「な!? え!?」

 「オレはあまり戦いを好まないのよ。人同士は出来るだけ協力をした方がいい。魔物とか何やらで大変な世の中なのに、なんで人同士で争わなきゃならんのか。オレにはよく分からん。こちらの大陸はあまり魔物がいないから、人同士で争っているのかは知らないけどさ、あ、後は食料問題とかでも争ってるのかな。まあ、そっちはオレが解決させるから、ここは戦争を回避させたい。てことでこの二つの協力をしてくれねえかな」


 彼女はう~んと言いながら、下唇を噛んで目を瞑った。

 願いを聞き入れると言ったとしても。

 思いもよらない願いであるのだとオレは予想している。


 「……そのスキル。私があなたに従順になるってこと? あなたの意思の通りに動かないと駄目なの」

 「それはない。オレに関する情報を言えないとか、紙とかに情報を書けなくなるくらいなだけだ。オレの正体を言えないと言い換えてもいいや。オレ、あんたの従者になりたいからさ。ここを黙ってろって事よ。それとあんたがオレのスキルを受け入れてくれたら、計画を話すから、ここも漏らさせないよ」

 「わかったわ。私は私って事ね。私の誘惑のようにはならないのよね。相手を封じるような」

 「そうだ。でもオレ。あんたの誘惑がどういったものかがわからない。どうなるの?」

 「やってみてもいい。全力であなたを誘惑してもいい?」

 「いいよ。やってみて」


 彼女は、肩の部分をずらしてお色気全開でオレを隣に誘った。

 オレがちょこんと隣に座ると。

 彼女の腕がオレの腕に絡まり、彼女の頭がオレの左肩に置かれ、魔力が出てきた。

 甘い香りのする魔力だった。


 「どう! これで落ちるんだけど」

 「んんん。温かい!」

 「なによぉ。それぇ!」

 「あんたの温もりしか感じない。正直それしか感じない」

 「良い気分とかにならないの」

 「んん、別に。綺麗な人に抱き着かれたな。ってくらいの感想しかないな」

 「・・んんんん。どうして効かないのよ」

 「知らん! あんた。まだ甘かったんじゃないの。もっと誘惑の技術を磨けばよかったんじゃね。自分磨きが必要だったんだよ。はははは」

 「んんんんんんんんん。面白くない! でもその返しは好き! あなたみたいな人。面白いわ。今度こそ負けないわよ。全部ね」

 「おお。受けてたとう。このガルドウォーもまたやろう。今度は賭け事なしでな」

 「あら。やってくれるのね。じゃあ、あなたの願いを受けましょう。そのかわり、事情を話して頂戴。協力はするけど、事情が聞きたいわ」


 オレはこうしてアイヴィスに完全勝利した。



 ◇


 「それで計画はなに? 解放軍の四天王を捕まえて、何をする気なの」

 「さっき言ったように、オレはその会議に入り込みたいんだ。戦争をやめさせるためにな」

 「そんな事できるの? アルランを止められないわよ」

 「絶対止める。その方法を行ってから考える」

 「嘘ぉ。あなた度胸ありすぎ。考えなしに行くの!? 信じられない!?」

 「ああ。でもそこに行くわ。行ってみてから、駄目なら戦うしかないや」

 「ふふふ。面白いわね・・・アルランと戦おうと思うヒュームがいるなんてね」

 「ああ。しょうがねえ。話し合いでいきたかったんだけどさ。それが出来ねえなら仕方ないだろ」

 

 彼女は口を押さえて笑っていた。

 こうして見ると普通の女性に見える。

 なんだか大人びて見えたのは、背伸びしている人だったからかもしれない。


 「あんたさ。誓いをやる前に、聞いてほしい事がある」

 「ん?」

 「アルランに娘がいることを知っているか?」

 「知らない・・・アルランに子供っているの? いつも一人だったけど」

 「そうか。四天王でも知らないのに、クヴァロだけが知っているという事か」

 「クヴァちゃん? あの子が知ってる?」

 「ああ。オレさ。ちょっと待って、やっぱ誓いを先にやろう。いいかな」

 「ええ。いいわよ。どうぞ」


 目を瞑った彼女のおでこにオレは人差し指を置いた。


 「アイヴィス、ごめんよ。汝よ。我に誓え ルルロアに関する情報は一切外部に漏らさないと」

 「はい」

 

 彼女の体が淡く光る。

 これにて彼女はオレとオレの仲間以外に、オレの情報を話すことが出来なくなった。


 「変わった感じある?」

 「ないわ。別に私のままよ」

 「よし。成功だろう」


 体に変調がない。

 誓いのスキルが成功した証だ。


 「それじゃあ、話の続きね。オレ、クヴァロをぶっ飛ばしたんだ」

 「ええ? クヴァちゃんを! じゃあ、あなたが、クヴァちゃんが牢屋に入った原因だったのね」


 アイヴィスが驚いていた。

 オレの情報はなかったようだ。


 「ああ。あいつにさ。ちょっとばかしムカついて空の彼方へぶっ飛ばしたんだけど、あいつがその時に匿っていた女の子をオレが保護したんだ。そしてその女の子の事をアルランの子とクヴァロが言ってさ。フィリアグレースって言うんだけど、たぶん。今のアルランの探し人はその子だ。オレが保護してる」

 「え!? じゃ、じゃあ。あなたが戦争原因を持っているという事?」

 「そうみたい。オレ、アルランに返してもいいと思ってるんだけど。でも彼女。磔にあってたんだよね。それだとアルランの元に返すとまた同じようなことをされるのかと思ってさ。ちょいと返しにくいのよ」


 そうアルランがどういった人物か知らないから。

 返しにくいんだ。


 「なるほどね・・・あなたはたった一人の女の子の為だけに。戦争を止めることに命をかけるのね。だってその子を差し出せば戦争なんて回避確実なのにね」

 「まあね。あの子には、幸せに生きてほしいからさ。本当の家に帰って幸せになるなら返すよ」

 「ふふふ。普通の子を返すみたいな言い方。もしアルランの子なら特別な子なのに・・・」


 アイヴィスはクスクスと笑った。

 ひとしきり笑い終えると、彼女から話してくれた。


 「それじゃあ、止める際に四天王があなたの味方になった方が良くない。どうせ、その感じだと、アースちゃんも味方でしょ。あなたの」

 「あ。バレた!」

 「バレバレよ。ここにすんなりあなたが来たのもそういう事でしょ」

 「ああ。そうなんだ。リュカもオレの味方だ」


 リュカが味方というだけで安心感はかなりある。

 なにせ、この女性とクヴァロの屑とあっちの男性よりも、リュカの方が確実に強いからだ。

 敵対せずにいてくれるだけ助かる存在だ。


 「それじゃあ、クヴァちゃんは無理だから、ヴァイスちゃんを味方にしましょう」

 「え? できるのか? 四天王だぞ」

 「たぶんできるわ。あなたがヴァイスちゃんに勝てばいいのよ。あの子、決闘大好きだからね。そうねぇ。あと、アルランに連絡を入れてアースちゃんの説得に時間がかかるって言ってしまえば、解放軍の会議を遅らせることが出来るわ。その間にヴァイスちゃんの説得をすればいいのよ」

 「なるほど・・・面白い。その策乗った。ちょっとリュカにも相談してくる」

 「ええ。じゃあここで待ってるわよ。ルルちゃん」

 「ああ。サンキュー。またな」


 とオレは手を振り返してくれたアイヴィスに感謝した。

 話してみれば案外面白い人だった。


 

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