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第6話 四天王の領地

 アンナさんがオレの家に来た。

 訪問してきた理由は、アースヴェインがいる大都市リュカ。

 ここへの訪問が決定となったことの報告だった。

 いつもそういう雑事を手回ししてくれる。

 彼女の有能さは、いまだ健在である。

 ジェンテミュールにもこういう人が欲しかった。

 採用してなかったオレの間違いはそこにある。


 「ルルロア様。許可が取れました。リュカへの入山及びリュカへの訪問はいつでもよいと」


 入山も許可制なのか。

 オレも知らない事実だった。


 「ありがとうございます。許可を取る際の理由を気にしていたのですが、オレたちの説明はなんて?」

 「はい。我々は新たに出来た町。アレスロア。連合でも解放でもない完全中立を貫く町ですと、説明しました」

 「・・・そ、そんな理由で、リュカにはいけますかね?」

 「大丈夫でしょう。アースヴェインは至って冷静な男です。おそらく彼は解放軍の中でもかなりの戦闘慎重派です。滅多なことでは戦いませんし。相手の居場所を消すような戦い方をしません。なので安全かと思います。我々は無事にリュカにいけると思います」

 「そうですか。それならいいですね・・・あ、そうだ、アイス食べます? 気に入ってましたよね」

 「食べます!!!」

 

 オレはアンナさんの好みをだいぶ掴んできた。

 うんうん。

 甘いもんが好きだね。この人!


 ◇


 会議室にて。


 「よし。今回のリュカ遠征メンバーを発表する。オレ、アンナさん。ユーさん。モルゲンさん。メロウ。エルドレアさんだ。以上」


 オレが発表すると手が挙がる。

 遠慮がちなエルドレアさんだった。


 「あ、あの。なぜ私も・・・あれ、なぜでしょう?」

 「はい。それはもし相手に質問された場合にですね。エルドレアさんは今回農業担当の人として作物関連の受け答えをしてほしいんですよ。あ、それじゃあ。ここで一つ皆さんに言っておきたいことがあります」

 

 皆が頷く。


 「いいですか。今回の訪問。おそらくオレたちの事について、だいぶ聞かれると思います。そこでですね。オレが相手の人たちと会話するのではなく、担当者の皆さんがあちらの方たちと会話してほしいと思ってます。大規模な交流会のような感じでいきたいんですよ。それで各担当が、武器系統でユーさん。工事系でモルゲンさん。戦闘系でメロウ。その他でアンナさん。そして農業と料理でエルドレアさんです。この部門別でおそらく向こうの担当者と会話することになると思いますので頑張りましょう」


 部門別の受け答えが重要だと思ったんだ。


 「な、なるほど。だから私が必要なのですか」

 「そうです。エルドレアさんが農業ですからね。あなた以上の方はいません」

 「わかりました。頑張ります」


 エルドレアさんは、納得したのか。

 小さくガッツポーズをした。

 

 「ルル。訪問時にお主はどうするのだ?」

 

 ユーさんが聞いてきた。


 「オレは、おそらくアースヴェインとの一騎打ちになると思う。戦うか話すかの二択でしょうね。どんな手で向こうが来るのか。楽しみだな。まずは、その人がどんな感じの人か・・・会ってから色々考えるよ」

 「そうか。ま、心配しても無駄だな。ルルは相変わらずの男だしな」

 「まあね。ユーさんと会った時だって、行き当たりばったりだったからな。ははは」

 「そうだったな。ガハハハ」


 と二人で笑って会議は終わった。

 そして、オレは初めて氷の大地へと出発した。



 ◇


 リュカ山を越えた先に出ると、目の前の景色が一変する。

 氷の山々の景色から、大都市と城が見えた。


 「でけえ。氷の城に見えるな」

 「そうです。こちらが大都市リュカのリュカ城です。全てがガラスで作られています。魔法で強化が入っているので、脆くありません。壊れたりはしませんよ」

 「そうなんだ。めちゃくちゃキレイな城だな」


 鏡のように反射する輝き。

 そのせいなのか。異常に眩しい。

 これはおそらく周りの山にある氷の反射光が、このピカピカに輝いている城の輝きに拍車をかけているからだと思う。

 直接目で見るのは難しいくらいに輝いている城だ。


 「こりゃあ、山を抜けた先にある都市だとは思いませんね」


 体ごと回して一面を見る。

 山、山、山だ。

 どこを見ても山しかない。


 「全方向が山に囲まれている都市なのか」

 「そうです。北西端に位置するリュカは、全方位が山です。氷の大地にありながら氷に完全に囲まれていないのは、この全方位にある山が凍っているからです。ここだけがかろうじて大地を保持しています」

 「なるほど。それで若干土があるんですね」


 今立っている下の地面を触った。

 少しざらざらしている。


 「ルルロア様。あちらにいきますよ。案内されましょう。あの入り口にいる方が、マーゼン殿です。竜人種でアースヴェインの片腕の方です」

 「わかりました。いきましょう」


 オレたちは入口に向かう。


 ◇


 ほぼ人と変わらない容姿。

 涼しい目元に、青い髪の女性。 

 それがマーゼンさんだった。


 「ようこそ。リュカへ。あなたが、ルルロア様ですね。私はマーゼンであります」

 「あ、はい。わざわざご丁寧にありがとうございます。ルルロアです」


 とても丁寧な方だった。

 久しぶりにここまで丁寧な人に出会った気がした。

 うん。

 ジークラッドで色んな人に出会ったけど。

 ヒュームだと分かってもこの態度を貫くのは、逆に珍しいまでもある。

  

 「それでは、リュカ王がいる玉座の間へ。ご案内しますので、足元に気をつけてください。あと、王の間では、ルルロア様だけでもよろしいでしょうか。お付きの人は控室での待機でも?」

 「あ。いいですよ。アンナさん、いいですよね」

 「はい。もちろんです」

  

 という会話からオレたちは城に案内された。


 大きな城の二階の応接室と呼ばれる場所に一度案内されて、皆はそこで待機。

 そこでは、大臣のような方々がすでにいて、皆に色んな話を聞いていた。

 それはオレの予想通りの展開だった。

 オレたちの生活についての情報を収集するためだと思う。

 ここでオレは内心驚いていることがある。

 それは、相手の大臣の中にヒュームがいるのだ。

 最初、竜人種かと思ったが違う。

 オレと変わらない容姿の人がいたのだ。

 その人たちにあとで話を聞きたいと思いながらも、オレだけは次の場所に案内される。

 

 「では、ルルロア様はこちらに。私がご案内します」

 「あ。はい。お願いします」


 皆と別れて、一人。

 王が待つ場所へ行く。



 ◇


 「リュカ王。ルルロア様にお越しいただきました」

 「ああ」

 

 大きな扉の向こうからたったの一言が、聞こえてきてから数秒後に扉が開いた。

 部屋の中には赤の絨毯が玉座の前にまで敷いてあり。

 その先に、その男がいた。


 凛とした佇まいに、赤い髪のポニーテール。

 中性的な顔立ちには似合わぬゴツゴツとした鎧を着用していた。

 それはまるで合戦にいくような恰好。

 そして、オレは一つ気になった。

 彼の腰には刀があった。

 美しい鞘に納まっているその刀は彼の左の腰についていた。

 

 「ルルロア様、どうぞ。王の前まで」

 「あ、はい。失礼します」


 マーゼンさんに導かれて、オレは赤い絨毯の上を歩く。

 両脇には、恰好は普段着の人もいるが、要人たちであると思う。

 ずらりと人がいて、オレの事をじっくり見ている気がした。

 

 それと気になる点が、この人たちの目が輝いていた。

 これは、訪問が嫌だとかの感じじゃなく、好奇心の目だと思う。

 そうだ。

 この光景に既視感がある。

 ジョー大陸の謁見の時に近い。

 アマルたちと一緒に王の前に行った時を思い出す。


 「貴殿がルルロア殿」

 「はい。アレスロアの領主。ルルロアであります」

 「うむ。では失礼」


 と言ったアースヴェインが刀を抜いてオレの元にやってきた。

 これもまた既視感。

 あの時の王と似ているなと思っていたら、同じ行動をしてきた。


 「桜火竜 炎上」

 「なに!?」


 一刀両断の一太刀がオレの頭上に降り注ぐ。

 その太刀筋。

 猛火を帯びて鋭い。

 刀に纏った炎の一撃は、オレのあの時と同じように真剣白刃取りでは対抗できなかった。

 オレは花嵐をマジックボックスから取り出して対抗する。


 「桜花流 桜影」


 オレはアースヴェインの攻撃の軌道をずらした。


 「ほう! やはり! その技は……こちらでは竜水だ!」


 攻撃が失敗に終わっても、アースヴェインは嬉しそうに笑った。

 刀を鞘に入れながら、アースヴェインは振り向いて玉座に戻る。


 「皆! どうだ。拙者の予想通りだぞ」


 アースヴェインがそう言った後。

 

 「そのようですね」

 「まさか」「あちらでも生きているとは」

 「ええ。まさかです」


 あちこちから声が聞こえてきて。


 「素晴らしい。実に」

 「「「「うおおおおおお」」」」


 と周りから拍手と歓声が上がった。


 「え? なになに? どういうこと!?」


 オレは意味が分からないが、大歓迎を受けたのだった。




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