第3話 現在の最強格たち
翌日。
遠征するためのメンバー選出と必要なものを考えた。
オレは、ナディアに今回の事を告げようと、食卓テーブルに呼んだ。
対面で座る。
「ナディア。お前さ。今回は町に残ってくれ」
「え?」
「すまん。フィリーと一緒にここに残ってくれ」
「なんで?」
この言い方は、『あたしを連れて行け』攻撃が来るはずだ。
今までもそういう感じだったからな。
「まあ、今回はユーさんとメロウを連れて行くからさ。ナディアにはここの守護者になってほしい。いざという時に最大戦力がここに欲しいんだ。普段は出てこなくていいから、もし戦いになったら表に出てくれ」
「うん。いいよ。あたしが皆を守ればいいんだね」
「え?」
返答が想像を超えていた。
ここで駄々こねると思っていた。
「なんで驚いてるのよ」
「いや、お前にしてはやけに素直に応じたなってさ」
「あ! あなた。あたしがついていくって。喚くと思ったんでしょ。あら、失礼しちゃうわ」
「そうだよ。わりいって。そんな怒んなよ」
謝る時は、正直に謝るに限る。
オレのお袋とナディアって、結構似ているから、こういう時は謝るんだ。
こういうお袋になった時。
親父は必ず光の如く謝るからさ。
「もう。あたしだって大人になったわ。あなたと一緒になってからね」
「そうか」
「ええ。あなたのような思考能力を持たないとね。隣に立てないでしょ」
「・・まあ、別にオレのようになれとは思わんけどな。ナディアはそのままでいいわ」
「なによ。嬉しいこと言ってくれるじゃない」
立ち上がってオレの後ろに来たナディアは、そのまま後ろからハグしてくれた。
彼女の両手がペンダントのようにぶら下がる。
「まあな。聞き分けのいいナディアなんて、気味悪いしさ。むず痒くなって、気持ち悪いわな」
「え、なんですって!」
「あ。つい本音が」
「このこのこの」
「ぐえ!?」
ヘッドロックをかまされて、気絶しかけたオレであった。
今のナディアは身体能力も向上しているのを忘れていた。
し、死にかけた・・・。
◇
落ち着いたオレたちはテーブルにまた対面で座る。
彼女が入れてくれた紅茶を二人で飲む。
「で。どうするつもりなの。今回のルルは」
「ん。オレは、アースヴェインとかいう人を見たいと思う」
「見るって? 何を?」
「ああ。クヴァロとは違って話の分かる人物だと。アンナさんが言ってくれたからな。どういう人となりかを見てからさ。その場で計画を作りたいと思っている。そのために、ありとあらゆるお土産を用意したいんだ」
「お土産って?」
人に取り入るには、土産話も重要だけど、土産自体も重要。
手ぶらで交渉する馬鹿はいない。
何か相手にとって良いものを贈るべきだ。
そう、相手が欲しいものが一番良い。
「武具系統。食べ物系統。様子を探りながら、様々な手段でその人に近づいてみるわ」
「ふ~ん。戦いは? するの」
「出来るだけしたくないわな。相手は竜人種なんだ。それって最強なんだろ」
「そうね。でも戦っても勝てそうよ。ルルなら」
「いやいやいや。オレさ。ヒュームだから。強くなっても所詮ヒュームだからさ」
「いえ。ルルはこの世界でも相当強いよ。この世界で強い人たちと肩を並べるか。それ以上だと思う。いい、第三次の頃を教えてあげるね。じゃあ、あたしから・・・・」
ナディアが教えてくれた人物たち。
まずは連合軍から。
エルフの女王『ナディア・クオンタール』
奇跡の人の末裔で、現在は四代目ナディア。
オレの目の前にいる金髪エルフだ。
容姿は可憐で綺麗で凄いよ。
オレがビックリするくらいさ。
でもオレは、それで選んだわけじゃない。
こいつが良いと、心が思ったらしいわ。
こればかりは勘だな。
こいつしかいないと、オレが思ったんだと思うよ。
ドワーフキング『ユースウッド・バーリアン』
ドワーフ最強の頑強さとドアルドワーフという非常に珍しい人物。
中身は、気のいいおっちゃんだ。
オレと思考回路が似ているみたいで、発言する度に二人して同意見だと思う事が多い。
ジークラッド最初の友にして、最高の相棒だ。
ファントムレイン『スレッド・ショーイ』
第三次南北魔大戦において、情報がない人物。
噂によるとどこかに隠れ住んでいるらしい。
でも、幹部以外、誰も見た事が無いらしく、詳細不明。
連合の要『ワルター・ビィ』
魔人族ガリオン。近中距離戦の天才。
ここもスレッドと同じようで、よく分からないみたい。
連合の盟主『イルヴァ・シミター』
魚人族の王でシャチの魚人。
水中最強で水魔法が得意らしく。
どの場所でもほぼ水を出して自分の土俵で戦ってくる。
一面を水で溢れさせる戦いをするみたいだ。
ここまでが連合軍。
それに対して解放軍。
四天王
『アースヴェイン・リュカ』
竜人族で最強の戦士。
孤高の男であるらしく、彼と会話が出来た者はほとんどいないくらいに珍しいらしい。
氷の大地に住んでいるので、会う機会が少ないのかもしれない。
『クヴァロ・シスラ』
ご存じの通りの女好き。屑。ド屑。また会ったらぶっ飛ばしたい。
今度は地の果てどころか、ファイナの洗礼をぶち破って、あっちに飛ばしたいくらいだ。
あ。それだとあっちの大陸の人たちの迷惑になるわ。やめておこう。
『ヴォルドー・ギューイ』
獣人族の熊族の頭領。
大きな腕の一振りで相手を沈めるらしく。
一撃必殺の攻撃力を持っていながら、俊敏な足腰をしている。
近接戦闘では、ユーさんの力をも上回るらしい。
『アイヴィス・ダルン』
魔人族ビビラの女性。
誘惑が基本戦術。
サキュバスとほぼ同じ力を持っていて、容姿が美しいらしい。
相手を誑かして、味方にしていくか。
それとも相手を同士討ちにする。
厄介な敵らしい。
解放軍のリーダー。
『アルラン・タイクーン』
言わずも知れた最強の魔人族吸血鬼。
あまり姿を現さないことで有名。
闘えば最強とされるわけだが、戦うところを滅多に見ない。
「というわけなの。当時にあなたが生きているなら、これらの中にあなたもいるはず。むしろ、あなたはこれらよりも強い存在かも知れないわ」
「バカな。オレが? ありえないだろう。これ十人もいるしよ。勝てる気がしねえわ」
「何言ってんのよ。あたしとユースウッドが同時にあなたと戦っても勝てないわよ。今のあなたはそれほど強いの」
「んんん・・・ほんとか。一度やってみっか。準備運動によ」
「いいわよ。でも手加減してよね。あたしたち、あなたに殺されそう」
「まさか。ありえんわ」
「もう。ちゃんと聞いてよ。この馬鹿」
「イテテテ」
最後にオレの耳を引っ張ったナディアだった。