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第1話 変なカップル

 ファイナの洗礼を補修して、ガルドラの記憶を改ざんした後。

 オレたちはアレスロアに帰還した。

 旅の日数で言うと、約二週間。

 でもオレ的には、それ以上の長い時を過ごしたような気分だった。

 たぶん奴との戦いで、苦労したからだと思う。

 とにかく怒りすぎたわ。

 あれくらいに怒ったことなんて、生きてきた中でなかった事だからな。

 相当な疲労がやって来たのだろう。


 そして、ここらで分かったことがある。

 やはり連合軍の連中は、ナディアが生きていることを知らないみたいだ。

 まあ、そもそもがだ。

 アンナさんのおかげで、今までその力が封印されていたわけだし。

 他の人たちにナディアだとバレるわけもないだろうからな。

 それに、オレたちの町に、誰かの訪問があった時には、ナディアには家にいてもらう事にしているから、他に情報が漏れるわけもない。

 仲間たちもナディアを売るような人間じゃないしさ。

 大丈夫だ。


 ただ、もしかしたらだけど、解放軍の方で噂が広がる可能性がある。

 あのクヴァロが、会っているからな。

 だから、奴が上にでも報告してしまえば、この事態が周知されるかもしれない。

 でも、今のところはだけど、解放軍の方でも大丈夫なはずだ。

 あいつ、ナディアを見た時に、別に普通そうだったし。


 ということで、そんな希少なナディアとオレの関係は深まった。

 だけど、普段の生活に変わりようがなかった。

 喧嘩ばかり。勝負ばかりでさ。

 友達じゃんなこれ!

 恋人同士に思えない。


 ◇


 「ルル! 勝負よ」

 「なんのだよ。めんどくせえ」


 家のベッドで寝転んで休んでいると、頭の上からナディアが話しかけてきた。

 偉そうに腰に両手を当てて、ふんぞり返る一歩手前だった。


 「あ! あたしに負けるのが嫌なんでしょ」 

 「んだと! 何の勝負だ。こら」


 オレを焚きつけてまで、何かの勝負をしたいらしい。


 「えっとね。あたしの魔法。あの魔法をやりたいのよ。それを手伝って」 

 「は? 勝負じゃねえじゃん。それって修行って事でしょ」

 「まあ。そうともいう」

 「わかったよ。ほんじゃ、町中だとさ。みんなに迷惑がかかるから広い所にいこうぜ。平原でやろう」

 「いいの。ありがと。ルル」


 勝負は修行らしい。


 ◇


 ギランドヴァニア平原。

 そこで、オレとナディアは離れて立つ。

 魔法を展開せよとのことなので、オレは魔力の準備だけはしていた。

 距離があるので大声での会話となる。


 「いくわよ。全力で魔法を出してね」

 「何が良いんだ? 系統は?」

 「じゃ、火!」

 「おけ。いくぞ 業火球(エルファイア)

 

 デカい火の玉を用意して、オレは遠慮なくナディアに投げつけた。

 これ、彼氏が彼女にすることじゃない。

 これって、DV彼氏だよな。

 でもあいつが望んでるんだよな。

 それって、どM彼女だよな。

 どんなカップルなんだ!?

 って思ってることは彼女には内緒にしておこう。


 「いい感じ。ちょうどいいよ。ルル!」


 今の発言。

 彼女の頭だって、おかしいだろう。

 巨大な火をプレゼントする彼氏にありがとうって言ってます。

 オレたち、破天荒カップルじゃね?

 ただでさえ、ヒュームとエルフであるしね。


 「なにする気なんだよ。ナディア。教えろよ」

 「見ててよ。ビックリするから!」

 

 なんだかいつも以上に自信満々だった。


 「光の円環。弾き返せ 光円の輪(アルベドルクス)

 「おい。まさか。それは!?」


 大きな光の輪がナディアの前に出現。

 輪の中心に火の玉を持っていこうとして、彼女は光円の輪(アルベドルクス)を微調整していく。


 「まてまてまてまて。おまえ。たしかそいつは・・・闇以外は・・・」


 そう、光円の輪(アルベドルクス)の特徴は闇魔法以外の全ての魔法を弾き返すのだ。

 ということはだ。

 オレの方に火の玉が来るわけだよ。


 「バッカヤロー。先に言え! 跳ね返ってくるわ!!! クソ。着弾する無職の氷(アイスボム)

 

 オレは跳ね返ってきた炎の中心に向かって、指を鳴らして氷を発動させた。

 オレの氷魔法は爆発すると砕け散り、火の魔法を消し去った。

 以前のオレなら魔力を貯める時間も必要だったのに、今のオレは瞬間的に出せるようになっていたのである。

 爆発的成長を果たしたようだぞ。

 うんうん。

 やばいです。完全に強い。自分でも自覚してきました。

 化け物だ!!


 「はぁ。ナディア、その魔法。完璧なんだな。光円の輪(アルベドルクス)の効果が出てるな」

 「でしょ! 跳ね返したでしょ」

 「ああ。でもちょいこっち来い」

 「え? なに?」

 

 ナディアをオレの正面に立たせて、オレはナディアの頭から下へ、体を触っていく。

 腹にいって下半身も触った。

 太ももとふくらはぎを揉み込むと気付く。


 「な!? なにすんのよ。変態!」


 ナディアはオレの頭に平手打ちをした。


 「いて。変態じゃねえわ。いいか。お前、ここが一番放出力がないぞ!」

 「ん?」

 「かかとだ。ここ。お前さ、足側が弱いと思う」

 「え? 足??」 


 オレは足を指さして話した。


 「ああ。ナディアの魔力は、腹まではいい。でもそこから先の魔力が弱いかもな。弱いって言ってもさ。普通の人よりも数段強いけどさ。お前ってまだ脚力を鍛えられるぞ」

 「え、そうなの?」

 「ああ。そうだ・・・っつってもさ。あのさぁ。彼氏が彼女の体を触ったくらいでよ。変態って言うのは酷くない。オレ、お前と付き合ってないことになってんの? ちょっとへこむんだけど」

 「うん。そうだね。ごめんね。言い過ぎた」


 だよね。

 これ、オレが正しいよな。


 「まあいいや。そんで、ナディア。足に魔力を溜めるのを続けた方がいいと思うぞ」

 「どうやって? 目的もないのに足に溜めるのって、難しいよ。足のコントロールって難しいじゃん」

 「ああ。だからユーさんとさ。それ作ってやるわ」

 「なにを?」

 「そうだな。魔力を出さないとすんげえ重くなる靴がいいかもな」

 「なにそれ。迷惑な靴だね」

 「まあな。でもそれが良さそうだわ。ほんじゃ、家に帰るか。ユーさんの所にでも寄ってよ」

 「うん。そうしよう」


 オレとナディアはこうして喧嘩をしながら生活をしていた。



 

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