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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
ナディア攻防戦

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第13話 弾丸のルルロア

 「ルル。ここからフルカンタラは、一日はかかるぞ。飛べば半日か」

 「そうです。ルルロア殿。自分ならば半日で行けます」

 

 ローレンさんが言ってくれたが。


 「駄目だ。それではおそらく向こうの方が有利になる。駄目なんだ。時間がかかりすぎてはいけないんだ」

 

 オレは断る。


 「しかし、それしか移動手段はありませんよ。ルルロア殿」

 「いや。オレは別な方法でここから三十分以内でいく。じゃないとナディアが危ないかもしれない。何をされるのかなんてな。大体が想像つく。二つあると思うんだ。アンナさんから聞くガルドラとかいう男の思想と思考から。おそらく」


 オレが予想を話すと。


 「ナディアを旗印にする。またはそれが不可能な場合・・・」


 アンナさんが気付く。


 「あ。新たなナディアを作る!? そ、そんな・・・そんなのは無理なんです」

 「え?」


 アンナさんが慌て始めたと思いきや、別な意見を言ってきた。

 オレの方が逆に驚く。


 「新たなナディアを作るには、ナディア様の年齢がそこに到達していません」

 「ん?」

 「ナディアの継承年齢は800から1200の間に生まれた子。それ以外で誕生するナディアはナディアではなく通常のエルフなんです」

 「なに!? そんな条件があったのか」


 ナディアの継承に条件があった。


 「はい。初代様は1177歳の時に二代目様を。二代目様は818歳で一人目を968歳の時に三代目様を。なので三代目様は少し特殊なスペアのお立場でありました。そして彼女は818歳の時に今のナディア様を産みました」

 「エルフってそんな遅くでも子供を産めるのか!?」

 「いいえできません。ナディア様だけは若い状態が長く、長生きなのです。初代様は1300年ほど生きました」


 思った以上に重い責務だな。

 そのナディアの使命って奴は。


 「そんなにかよ」

 「はい。ですが、もし、スペアとしてでも子供をとなれば。でも今のナディア様の年齢で、産んでもスペアになどなりえないのに・・・ああ。しかし、そうなればナディア様のお心が・・・知らぬ男との間に子供!? 駄目です。そんなの。駄目です」


 アンナさんが膝から崩れ落ちた。

 優しいリヴァンさんが彼女の背中に手を置いた。


 オレは思考を加速させた。


 ガルドラの思考状態からそれしか考えられないよな。

 あいつが戦争の旗印になることはない。拒絶するはずだ。

 だったら奴は、彼女を上手く使ってエルフを動かす方法を取る可能性がある。

 クルーナの輝石。

 あのアーティファクトを使用できるのならば、他にも持っているかもしれない。

 洗脳とかの意思を奪う系統の物を持っているかもしれない。

 それと同じくして、戦争を考えていない場合で、ナディアの意思を奪えない場合。

 エルフの里を牛耳るためにナディアの子が狙いになるんじゃないか。

 別にその時は、ナディアにならなくてもいいんだ。

 ナディアの子という格みたいなものがあればいいんだよ。


 クソっ。このままじゃ彼女が駄目になる。

 生きていても心が死ぬぞ。

 誰とも分からない奴をあてがわれてしまったらな。

 好きでもない男に抱かれるなんて、駄目だ。

 ガルドラ!

 お前がやってるのは、人のする事じゃねえ。


 そんな事になったら、オレは絶対に許せねえぞ。

 ぶっ殺してでも、この怒りを鎮めるのには足りねえんだわ。

 そんな行為。悪逆非道。

 人の心を殺すことになるんだぞ。

 それは人を殺すことと同じなんだわ。

 いやそれ以上の悪だ!


 「そんなの駄目だ。オレは必ずナディアを救う。オレは死んでもそこにいく」

 「どうやってだ。ルルよ。三十分など。ここからじゃ無理だ」

 「いける。ユーさん。オレを全力で攻撃してくれ」

 「はっ?」

 「ユーさんのハンマーの全力攻撃でオレを射出するんだ。魔法球のような速さでオレはフルカンタラまで突っ込んでいくわ。それには空中でも加速するための風魔法が必要だ。だから、アンナさん。オレと一緒に行ってくれますか?」

 「わ、私が・・・」

 「ええ。今から説明します」


 オレの作戦は至ってシンプル。

 ユーさんに全力ハンマー攻撃をしてもらい、オレがそのハンマーに乗って空を飛ぶ。

 その勢いを上手く使い、オレが背負うことになるアンナさんには風魔法を全開で後方に放ち続けてもらう。

 これで高速移動を可能にして、王都フルカンタラまで一直線にいくのだ。


 「し、しかし。その場合。ルルさん。息が持ちませんよ。私たちを超える速度で空を飛ぶなど、呼吸ができません」


 リヴァンさんが心配してくれた。


 「そうです。ですが、オレには素潜りのスキルがある。あれだと10分は息を止められる」

 「10分・・・しかし、30分はかかるのでしょう。ルルロア殿」

 

 ローレンさんも同じく心配してくれる。


 「ええ。だから、一瞬呼吸をするための風魔法を展開し、減速します。それともう一つのせいで30分かかるんです。呼吸を整えるための僅かな間の失速分とそれのせいです」

 「なるほどな。それじゃあ、最初が肝心。儂のハンマー攻撃のため時間がもう一つのせいだな」


 ユーさんは、オレの言っている事を理解していた。


 「そういうことよ。だから30分だ。ユーさんの力を溜める時間がかかるからな」

 「よし。やるぞ。来い。打ち出の小槌(トライハンマー)


 ユーさん専用の最強ハンマー『打ち出の小槌(トライハンマー)

 普段、ハンマーを持っていない彼がいったいどこに隠し持っているのかと言うと。

 耳飾りである。

 彼の耳飾りには、小さなハンマーがアクセサリーとして付いていて、それを引き抜いて、魔力を込めるとハンマーが大きく成長するのだ。

 その大きさは込められた魔力量と、ユーさん自身の意思によるらしい。


 「よし。10分、いや5分待て。儂も久方振りに全力を出す。全開の魔力を練り込んでやるわ」

 「おう。たのむ。ユーさん。それじゃあ。いいかな。アンナさん。オレと一緒に。死ぬ気の空の旅だ。いいかな」


 死ぬ可能性のある旅路だぜ。


 「・・・も、もちろん。私も行きます。ナディア様を私もお救いしなければ。私はナディア様の影なんです」

 「ええ。一緒にいきましょう。では、おんぶではなく、この強力な紐でオレたちを結びます。荷物運びって言うスキルを使用します。背中同士を合わせて、アンナさんは息が出来るようにしてもらいますからね。進行方向とは逆を向いていれば息は出来るはずです」

 「わ。わかりました。失礼します」

 

 オレとアンナさんは背中同士を合わせた。


 「ローレンさん。ズン。オレたちをこれで縛ってくれ。これが命綱だ」


 オレは二人に紐を託した。


 「目一杯縛るんだ。絶対にアンナさんを落としたくないんだ。少々痛くても仕方ない」

 「わかりました」「了解」


 オレたちは二人によってギュウギュウに縛られた。

 ここにオレのスキルを発動。

 『荷物運び』

 ジョブ運送屋の初期スキル。

 彼らが使用する時は、荷台の荷物などを落としたくない時に使用する。

 お客様の大事な物を運ぶ時にも発動させると便利である。

 吸いつくようにして、物が固定されるので、手に発動させると手に吸いつき荷物を落とす心配がなくなる。

 ただ今回は紐に発動させているので、これだとオレとアンナさんは紐によって固定状態になる。

 

 「ごほ。呼吸がしにくいですね」

 「ごめんなさいね。アンナさん。これくらいきつくいかないとたぶんダメです。アンナさんが下に落ちちゃいますよ」

 「はい。我慢します」

 「では、アンナさんも風魔法を準備してください。オレたちは飛びますよ」

 「はい。用意します」


 アンナさんも、静かに魔力を練り始めた。


 「ルルさん。ご無事で。ここで祈ってます」

 「ええ。ありがとう。リヴァンさん」

 「おいらもだぞ。ルル様。死なないでよ」

 「ああ。ズン任せろ」

 「ルルロア殿。自分もです。どうかご無事で」

 「はい。ローレンさんありがとうございます」

 

 ユーさんの魔力が外に溢れ出ていた。

 さすがはドワーフキング。

 その量は並の人間数十名以上の魔力量だった。

 オレの隣に立つ。


 「よし来た。ルル。全力でいけるぞ」

 「うし。行ってくる! ユーさん、頼んだ!」

 「おうよ。いくぞおおおおおおおおお」


 ユーさんはグルグルとその場で回り、ハンマーと自分を回し始めた。

 加速していく回転の最後。ユーさんが叫ぶ。


 「乗れ! ルル! 今が最高到達点だ」

 「おし。頼む!」


 オレがハンマーに乗った!


 「ぶっ飛ばすぞ! ルル。おおおおおおおおおおおおお」


 そこから一回転して、オレが射出だ!

 

 「いけええええええええええええええええええええええ」


 ハンマーからオレは飛んでいった。


 ◇


 「ぐおおおおお。息を止めんぞ。その前に、アンナさん! 風魔法をお願いします。全力です」

 「はい! いきます。ウインド」


 ドンッと後ろから大きな音が鳴った。

 彼女の手から放たれた風魔法の音だろう。

 一種の爆発音と同じだった。


 「素潜り!」

 

 ここから、十分。オレは息を止める。


 ◇


 「はああああああああああああああああああ」


 アンナさんは全力の魔法で風魔法を出し続けていた。

 疲労も限界を超えているはず。

 それでも、ナディアを救うために全力を出し続けているのだ。

 来た。

 オレの息の限界。

 だから十分が経過した。

 下を見ると十分で到達したの森の入り口だ。

 グスバル森林地帯に入った。

 それなら後はもう少し先にフルカンタラがあるはずだ。


 「ウインド」

  

 オレの前に風を出して呼吸ポイントを生む。

 一旦減速するが仕方ない。一瞬だけの息継ぎだ。


 「アンナさん。あと少しです。お願いします」

 「はぁはぁ。りょ、了解です・・・」

 「はい。もう一度、息を止めます。素潜り!」

 「い、いきます。再加速。ウインド!!!」


 アンナさんのウインドがもう一度発動。

 限界の先で魔法を出している、そんな感じだ。


 下の景色がより濃い森に変わる。

 これがフルカンタラの特徴だ。

 森に囲まれている彼らの生活は、少しだけ特殊である。

 それとあの大きな木が見えてきた。

 どこにいる。

 ナディアはどこに連れ去られたんだ。

 オレたちはあそこについたとしても、彼女を探さなくてはならない。

 フルカンタラまであともう少しになった所でオレは叫んだ。


 「アンナさん。魔法は終わりでいいです。あとはこの勢いのまま突撃します。どこがいいでしょうか」

 「わ、私の予想は・・・おそらく、玉座。もしくはナディア様のお部屋でしょう」

 「え? それはどこです」

 「大きな木の最上階! 幹に四角形が二つ刻まれた場所。そこがナディア様の部屋と玉座がある場所です。あそこならば、エルフしか入れなくしてもおかしくない場所です。あそことここを繋げるのに好都合なんです。ガルドラはおそらく、ナディア様を近くに感じるためにそこに移動場所を決めるはず」


 気味が悪い奴だ。

 どうしてもナディアにするつもりなんだな!


 「ちっ。とことん気持ち悪い奴だな。親父の言う、過度な期待をかける奴の究極形態の奴だな。そいつはやべえ奴に決まってるぜ。そんな奴のそばにナディアはいるのかよ。絶対に助ける。いきますよ。アンナさん。たぶん、後20秒で突っ込みます」

 「え。しかし、ルルロア様はヒューム。そこはおそらく・・・エルフのみしか入れない結界ですよ」

 「考えがあります。このまま行きますよ」

 「わかりました。信じます」

 「ただ一つ、申し訳ないが。エルフの里をぶっ壊すかもしれません」

 「え?」

 「里の象徴を壊したらごめんなさい。全開だああああああああ!!!」

 「え? えええええええ」


 オレは究極の魔法と共に突撃する。

 大親友たちが得意とした究極の魔法。

 光と四属のだ。


 「オレの中にいる聖女エルミナ。大賢者ミヒャルよ。オレと共に。ナディアを助けてくれ。いくぞ。陽光のエレメンタル(エヒルファイブ)


 最強魔法で結界ごと、エルフの象徴を破壊する。

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