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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
ナディア攻防戦

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第2話 試行錯誤

 ご飯戦争の開幕。

 その第一歩は、ナディアのファイナの洗礼を修復する作業に追従する形をとった。

 エルマルの岬に行くまでの道筋にある町や都市。

 ここらにご飯を売りつけていって、アレスロアがご飯による侵略をするのだ。


 

 ◇


 オレの家にて。

 食卓テーブルにオレとナディア、そして珍しく起きているフィリーが座っている。

  

 「ナディア。今回の売る料理さ、何が一番いいかな? 売れそうなのがいいよな」

 「そうねぇ。何でも好き!」

 「それはお前の話なんだわ。そっちの地方の人がどんなものを気に入るのかを聞いてんのよ!」

 「ええ。わかんないよ。そんなことぉ。ルルのご飯はね。なんでも美味しいんだよ。あたしには決められない」

 「いやそう言ってくれるのは嬉しいんだけどさ・・・オレはお前に相談してんだよね・・・はぁ」


 ナディアはオレの料理の全てが好きらしいのだが、相談には乗ってくれなかった。

 出来たら、あれがいいとかこれがいいとか言ってほしい。

 お母さんがさ。

 『あんた、今日は何食べたい』

 『なんでもいい』

 って返答された並みに困る話なのさ。

 オレ、お母さんじゃないけどね。


 「もういいや。しゃあねえ。こっちに聞く。フィリーは、何が一番好きか?」

 「ルルのご飯。とっても美味しい」

 「おう。ありがとな。強いて言うなら何が好きだ?」

 「カレー」

 「そうか……あれはな。作るには米が必要になってくるな。オレたち、畑はいけたけど。そういや、米をあの農業ハウスで作ってねえからな・・・マジックボックスの中にある米のストックがな。残り少ねえわな」

 「カレー」


 二回目の催促が来た。

 よほど気に入っているみたいだ。


 「フィリー。そんなに気に入ったか。また食わせてやるからさ」

 「・・・カレーがいい」

 「はいはい。いい子にしてたら作ってやるからな」

 「うん。へへへへ」


 フィリーの頭を撫でると彼女が喜んでくれた。

 この笑顔を守るために、この町を発展させないとな。


 「そうだな。ここで米を作っておいて。残りのストック分を、今吐き出すか。カレー大作戦でいくかな」


 ◇


 オレたちのご飯戦争の準備が始まる。

 まず、下準備。

 アンナさんにお願いしたのは、道中の移動ルートと販売許可の確保だ。

 彼女はものの見事にそれをやり遂げて何時でもここを出立してもいいような状態にしてくれた。

 非常に優秀だ。マジでさ。

 ジェンテミュールの時にこういう人を雇っておくべきだったと痛感する。

 

 そして、オレたちの目的は、エルマルの岬に行くことなのだが。

 そこまでに騒ぎを作ろうとなっている。

 それは、オレたちがド派手に料理を売りつけることで、注意の目をオレたちが引き付けている間に、ナディアにファイナの洗礼を修復してもらおうとする作戦だ。

 彼女の存在を公にせずにするには、それが一番いいだろうと考えぬいた作戦である。


 次にオレはエルドレアさんとモルゲンさんを呼んだ。


 「エルドレアさん、モルゲンさん。米を作りたいんすけど、ハウスでいけますかね?」

 「どうだろな。米っていけるのか?」

 「ルルさん。お米は難しいと思いますよ。水の管理と土の管理が違いますからね。畑とは」

 「確かに……水を張ったり、抜いたり。温度調整もシビアなのかな。どうなんだ」


 三人で顔を突き合わせて悩んだ。


 「いやでも外で作る場合とは違い。天候にも左右されないからな。水の微調整は簡単じゃないか?」

 「確かに。モルゲンさんの意見もありですね。水の調整ならエルドレアさんたちには簡単だしな」


 オレたちの試行錯誤は続く。


 「おらは、作れると思うんだけど、難しいと思うのは水路じゃないかな。水を入れるのは簡単だが、水を抜くための水路をどこに作るのかが難しいと思うぞ」

 「なるほどね……それじゃあ、水を外に流すってのは駄目ですかね。家の中で完結させるんじゃなくて、家の外に流してしまって微調整を繰り返すのは」

 「うんうん。だけどもその場合。家を建てる位置が重要になるぞ。おらたちが住むエリアには作れんな。そこの周りの土が水浸しになる」

 「ああ。なるほど。なるほど」


 オレ以外の意見がどんどん出てくる。

 本当にさ。

 これがやりたかったな。


 「それと、ルルはこの町を大きくするだろ」

 「ええ。そうしたいと思ってますよ」

 「そうなると。道が出来ると思うんだ。レンガの道がさ。で、レンガの道にその水をばらまくのは出来ない」

 「おお。なるほど。たしかに。そこまで考えていなかった。レンガは水をどんどん吸収するわけじゃないもんな。吸ってはくれてもさ。土よりは吸収率が悪いってことか」

 「そうだ。だから、排出する場所を考えるか。そもそも排出しないで水を処理するかの二択だとおらは思う」

 

 モルゲンさんの貴重な意見から、エルドレアさんが思いつく。


 「では、水を処理するのはどうでしょう。排出する水を魔晶石で処理する方法を考えればいいのでは? 私たち、先程の話だと外に排出することしか考えてませんでしたから、ここは水を処理する考えの方がいいかもしれませんよ。灼熱系統の魔晶石で、水を水蒸気にして空気中に飛ばしませんか?」 


 とんでもない意見が出た。

 水自体を無くすってことだよな。


 「おお。おらはそれが出来そうだと思うぞ」

 「なるほど。たしかに。水そのものを空気に返すってことですね。土に返すことをばかりを考えてましたね。それは盲点でしたね」

 「ええ。これならば、むしろ外に出した方がいいと思うんです」


 エルドレアさんの案を採用。

 実験小屋を作成して、米を作る。

 中に田んぼを作ることは簡単だった。

 でも、外の灼熱の魔晶石を使って水を処理するのが難しかった。

 外に水を流しても、水が蒸発されずに外に漏れた状態になった。

 だから、オレたちは。


 「こっちに小屋を作って水を一気に沸騰させましょう。外で発散させるのが難しいんで、部屋の中で一気に水蒸気にして、ここの小屋の一部に穴を開けて外に出せばいけるでしょう」

 

 水を小屋に集めて、魔晶石で炊いたのである。

 水処理はそれですませることにして、ついに実験は成功したのだ。

 これにて米も安定供給できる環境となった。

 これと並行してオレたちは麦も成功させた。 

 だから、パン類も作成可となっている。

 主食が揃えば、あとはご飯作戦は売り込むだけである。


 そしてここで一つ新たな案が生まれた。


 「これ、もしかして、モルゲンさん。サウナって作れますよね?」

 「お? サウナ??」

 「サウナ知りませんか?」

 「知らんな」

 「えっとですね。水蒸気で体を温める。お風呂のような役割の場所ですよ」

 「…風呂かぁ。儂らはあまり入らんからな」


 そうジークラッドの人たちは水浴びが多いのだ。

 風呂やサウナの習慣がない。


 「ええ。汗をかいて新陳代謝をするんです。サウナに入りすぎなければ。健康にもいいんですよ」

 「ルル、それを作った方がいいのかいな?」

 「ええ。実験的に一個作りましょう。オレ、出発前に設計図を書いておきますね」

 「わかった。ルルが出掛けている間に作っておこう!」

 「ありがと。モルゲンさん」


 こうしてオレは衛生面もあげていくことを考えようと思った。

 サウナも作るなら、お風呂屋も欲しい。

 皆水浴びだけでいいと思っている節があるし、それと魔晶石を使って掃除も考えないといけないかもしれない。 

 衛生面をしっかりさせておけば、伝染病とかを防げるからな。

 とにかく生活水準をジーバードに近くなれば、ジークラッド一の都市に出来るんじゃないか。

 オレはそんな風に思ったのである。





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