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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
希望の星は消えない

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エピローグ 本当の希望の星

 「ルル。起きろじゃて」

 「ん? レミさんか。なら朝か・・・」


 ダンジョンにいたはずのオレ。

 なのに、何事も無く目覚めることが出来た。

 いつもの朝のように、レミさんの挨拶から始まっているんだ。


 「ルル。ほれ見ろ。ここがジークラッドじゃ!」

 「へえ。ここがね……半分近くが氷の大地だね。にしてもでっけえ大陸だな。こんなにでけえのか・・・これじゃあ、ジャコウの倍・・・いやもっとだな。もしかして四つ分あるかもな」


 大陸を四つ合体させたような大陸だ。

 大体三分の一くらいが氷の大地となっている。


 「ほれ、あそこ。あそこのガイロの森の中にあるのが聖なる泉じゃ」

 「へえ。森に泉ね・・・って泉なんて見えねえじゃん。そもそも水見えないじゃん! あそこ、木しかない見えないよ!!!」

 「そうじゃろ。でもあそこにあるのじゃ。摩訶不思議な森の力を紐解かんと中には入れない仕組みなのじゃ」 

 「へえ。そうすか。ってかさ。なんでオレの頭の上に大陸が見えるの? 普通逆じゃない。天地が逆さまなんだけど。どうなってんのこれ?」

 「そりゃもちろん。ルル。そちは落下中じゃからな!!!」

 「・・・・え・・・マジ!?」

 「マジじゃ!」

 「・・・・・・」


 沈黙の後。


 「ふざけんじゃね! あんたなんで冷静に会話してんだよ。つうかオレも冷静に会話してるううううう!! やべえ。このままじゃオレ死ぬじゃん。せっかくこっちで生きてるのに、今死ぬじゃん!!! どうすんのよこれええええええええ」


 激怒と嘆きに変わった。


 「でもあれを見るのじゃ。あれがファイナの洗礼じゃ」

 「おお。実物を間近で見たことがないからな。綺麗だなって・・・・おい。今落下中。そんなのどうでもいいんだよ。このままじゃ、オレ死ぬんだよ」

 「まあまあ。何か策があるじゃろ」

 「ふざけんじゃねえよ。このアホ鳥!!!!! 余裕でいんじゃねえ、あんたはいつもいつもトラブルばかりを!?」


 オレはジークラッド大陸の上空に飛ばされたらしい。

 飛空艇が飛ぶ位置よりも高い位置にオレがいる。

 大陸の半分近くが氷である大地を見つめて、すでに死を覚悟しています!!

 せっかく生きてるのに、どういう事よ!!!!


 苦難の冒険は、命の危機から勝手に始まりを告げた。





 ―――――――


 ジェンテミュールが発足した当時の事。

 レオン、ミヒャル、イージス、エルミナには。

 ルルロアにだけ伝えていないある思いがあった。

 人々の希望の星。

 これが、ルルロアが思う四人とファミリーへの思いだ。

 でも、四人の思いは別にあった。

 


 ルルロアが会計と用事を済まそうと席を外していた時の事。

 テーブルに座る四人は話し合いを再開していた。

 

 「希望か・・・・確かに。希望だよな」

 「何が?」


 レオンに向かってぶっきらぼうにミヒャルが何がと言った。


 「なぁ、ルルってさ。俺たちの希望じゃないか?」 

 「あ? 急にどうした?」


 ミヒャルはまた聞き返した。


 「俺たちってさ。結構辛かっただろ? 村にいても学校にいてもさ。英雄様~。英雄様~ってよ!」

 「そうですね。私たちは苦労しましたね。英雄なんて恐れ多い。そんなに凄い人間じゃないのですよ。私たちは・・・」


 エルミナは過去を振り返りながら答えた。

 お茶を一つ飲む姿に、その時の感情が現れていた。

  

 「そうだよな。そんな大層な人間じゃないんだよな。俺たちはさ。でも、そんな俺たちにとって、唯一同じ目線で普通に接してくれる奴がいるだろ?」

 「・・・そう・・・おらたちにはいつも・・・ルルがいる」

 「そうなのよ。俺たちにはいつも普通の感性のルルがいるんだ。あ、でも普通ではないか。あいつ、変人だもんな」

 「そうだ!・・・うちのこと、変わってるってあいつ言うけど。あいつの方が変わってるよな?」

  

 皆はミヒャルに白い目を向けた。

 お前は『カブトムシ』ばっかり追いかけてるじゃんと言いたい三人であった。


 「それでさ。あいつってさ。俺たちの事を希望だと思ってるぞ。人類の希望ってやつ。たぶんさ。あいつは俺たちを本物の英雄にしようと動いているのさ。あいつの努力、あのスキル量。頭のキレ。あれは全部。俺たちなんかの為に、ここ数年頑張ってきた結果だ。だからなんとなく思うのよ。俺たちを本物の英雄にしようとしているなってな」


 レオンは、ルルロアの考えを読み切っていた。


 「「「え?」」」


 そうだったのかとレオンに言われて三人が驚いた。

 三人はルルロアが普通に過ごしていると思っていたのである。


 「そんな努力いらねえのにさ。別に英雄職だから英雄になりたいわけじゃないぜ。俺たちはよ・・・あいつがそばにいればいいだけなのによ。つうことで、俺たちにそんな重荷を背負わせようとしているあいつに。俺たちは一泡吹かせる……報復しようと思うんだ」

 「報復? え? 何かするのですか? イタズラですか?」

 「ああ。こういうのはどうだ」


 レオンは自分たちを真の英雄にするべく、日々努力を重ねているルルロアを理解していた。

 ルルロアの一番の理解者はレオンであったのだ。

 

 実際、レオンという男はルルロアの事を何でも知っていて理解している。

 そして、実はルルロアの方が、レオンについて知らないことが多い。

 例えば、それは、レオンが勝手に決めている事。

 彼が大切にしている女性を一度も口説かないと決めていることだったりする。

 レオンはミヒャル、エルミナ、ルナ。

 この三人をデートどころか、食事に誘ったことすらないのだ。

 ルルロアの気持ちを優先するそんな漢である。

 決してただの女好きの屑勇者ではないのだ。


 それと、ルルロアがしたい事をさせてあげようとするのだ。

 彼が自分たちの影になると決めた事。

 彼が希望の星で三大クエストをやり遂げようとしている事。

 彼がやりたいと言ったことの基礎を提供する事。

 その中でいかに理不尽な命令があったとしても、レオンはルルロアの為に動いていた。

 だってこれほどルルロアが好きなのに、レオンが彼だけを追放するなんて出来るわけないのだ。

 血を流してもおかしくないくらいの苦しい決断をしたのだ。

 本当の所は他を追放して、ルルロアを残したいくらいなのにだ。


 レオンは人知れず皆には黙って苦悩していた。

 ルルロアにもその事を黙って、彼がしたい事の全てを受け入れていた。

 暢気でお気楽そうなレオンの方が、苦労をしていたわけだ。


 「そこで決めたのよ! 俺たちの希望。それはルルだ! 皆、そうだろ?」

 「ええ」「まあ、そうだな」「・・・うん」

 「だよな。俺たちと、他人との間にはさ。大きい壁があるじゃん。英雄を崇めすぎる弊害みたいな奴。これって俺たちにとって大きくて分厚い壁だぜ。人ではない英雄のみがこちら側にいろみたいなさ。隔離の壁がさ。あるよな。お前たちは普通の人でいてはいけないみたいな壁だわ」

 

 三人は頷いて聞いていた。

 苦労してきた思いは一緒だからだ。


 「んで、ここで、俺たちとの間に、この分厚い壁がない人間が一人だけいるだろ?」

 「ええ。いますね」「そうだな」「・・・ルルだ」

 「だろう! はははは。つうことで。こうだ!」


 レオンは立ち上がって言う。


 「表向き。俺たちのファミリーは、人類の『希望の星(ジェンテミュール)』こう名付ることにする! だが、本来の意味はこれでいこう!」


 拳を突き上げたレオンは力強く宣言した。


 「俺たちと人との間にある壁をぶち壊す者。俺たちの真の理解者 『|人々と英雄の壁を超える《ジェンテミュール》』『英雄たちの希望の星(ルルロア)』だ! これを含ませて希望の星(ジェンテミュール)。どうだ! みんな! 面白いだろ。あいつに黙ってようぜ」


 エルミナが手を合わせて喜んだ。


 「ええ。いいですね。私たちの希望の星はルルですものね」


 ミヒャルはニヤニヤと笑った。


 「おおお。そりゃ面白い。ルルにはずっと黙ってよう。それってうちらが偉業を達成したらさ。永遠に語り継がれる事になるのは、ルルの方になるって事だろ。これは面白い。ククク。なんとしてでも三大クエストを達成してやろうぜ。全部達成したらよ。あいつにネタばらしして、あいつのアホ面にぶつけてやろう。ニシシシ」


 眠そうなイージスも続く。


 「・・・うむ・・・それは良い案だ・・・おら賛成・・・ファミリーで達成して、ルルの名を世界に残そう。黙ってよう」

 

 四人は隠しネームをとても喜んでいた。


 「だろ! よし、俺たちはこれで決まりだ! ルルこそが俺たちの希望の星。これが俺たちの隠しネームだ! ルルよ。隠しネームに踊らされろ!!! ざまあみろ。英雄として刻まれるのは、俺たちじゃねえ。お前の方なんだよ! ぎゃはははは」


 レオンの嬉しそうな笑い声につられて三人も一緒になって笑う。

 彼らは、何も知らないルルロアが会計からやって来るのを楽しみに待ったのだった。




 伝説の冒険者ファミリー『希望の星(ジェンテミュール)

 それは、英雄四人を指す言葉じゃなかった。

 英雄たちが心の底から信じている一番星『英雄たちの希望の星(ルルロア)』であったのだ。

 それを当の本人は知る由もない。


 

 



 

 

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