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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
ジョブは関係がない 無職と英雄たち

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第26話 勇者レオン 対 無職ルルロア

 戦い始めて三分。

 会場で見てくれる人がいれば、目にも止まらぬ速さでの戦闘に驚いてくれただろう。

 ここはすでに大気も大地も震える。

 激しい衝突の連続で、人の域を超えた戦闘だと自分でも思っている。


 「ルル! お前と俺の実力は一緒。だったら決着は・・・・」

 「わかってる」

 「なら何で戦った!? お前は五分しか動けない。このままならスタミナ切れを起こして俺の勝ちは揺るがないぞ」

 「ああ、そうだな。前のオレだとな!」

 「…は?」

 「お前の知るルルロアはそこまでの人間。大したことのない無職の男だった者だ」

 「?????」


 前のオレは、英雄職になれる持続時間が五分で限界。

 しかし今のオレは十分が限界となって、時間が伸びている。

 大王フレデリカに認められて、剣聖アマルを弟子にしたオレは、両方の英雄を育てたことで、実力が数倍にも上がっている。

 

 お前たちと袂が別れてしまったこと。

 それがオレの人生の最大の後悔になるかと思ったが。

 そんなことはない。

 新たな出会いと別れを繰り返して、強く成長してきたんだ。

 遠回りだって、決して無駄なんかじゃない。

 オレは彼らに出会えて、彼らと心通わせてもらって、感謝している。

 

 なのに、オレと別れたレオンは、一体何をしていたんだ。

 ファミリーを維持するだけで精一杯で、ダンジョン攻略には失敗して。

 得たことと言えば、いらないスポンサーを得る事だけ。

 ふざけるなよ。

 そんな腑抜けたことしかできない奴はオレが正してやる。

 今、お前が選ぼうとしている道が、間違っていることを証明してやろう。

 冒険者が歩むべき道に戻ってもらおう。



 ◇


 「レオ! お前は何してたんだ?」


 オレは勇者の力を解除した。


 「はっ? ルル、俺との戦いを諦めたのか。力を解除しやがって」

 「レオ、ファミリーの事を聞いているぞ。隠すなよ。今までお前は何してたんだよ」

 「そりゃ、ダンジョン攻略のために、金と、人員の増員を・・・」

 「レオ、お前らはダンジョン攻略なんてしてねえじゃねえか。今は皆で金稼ぎだろ? 何を言ってんだ? それにな。お前が今やってるのは、ここのお偉いさん方の下っ端だぞ」

 「いや、そうじゃねえ。あの人は俺たちのダンジョン攻略を支援してくれるって言ったんだ!」

 「違うな。お前はいいように使われているだけだ。その人、なんて言って、お前に近づいてきた。たぶん、私の仕事を完遂したら金を出そう。または、私が王にでもなったら支援してやろう。こういう風に言われたんじゃないのか! レオ!」

 「・・・・・・・」


 レオンはここで沈黙した。

 

 「その顔で分かるわ・・・・確証のない交渉をしやがって、バカタレが!」

 「交渉事なんて。今までお前がやってたからな。俺が上を取る交渉なんて出来るわけがない・・・」

 「何を言ってんだ。この腑抜けんな馬鹿。いつまでオレに頼ってんだ! オレはな。お前なら大丈夫だろうと思って、身を引いたんだよ。みんなで作ったオレたちの大切な希望の星(ジェンテミュール)を守ってくれると信じてな!」


 オレたちの大事なものだろ。


 「お前なら大丈夫だと思ったからこそ、オレは出て行ったんだ! 情けない姿をオレに見せんな。レオ!」

 「くっ。くそ。言いたいことを好き放題言いやがって」

 「ああ、まだまだ言いたいことを言うぜ・・・・腑抜けたナンパ屑男になっちまったレオンの曲がった根性を叩き直してやる。いいか! オレにとって、希望の星(ジェンテミュール)は大切な場所だ。だから、オレはここでお前を止めるぞ。この政変に勇者を巻き込ませない。希望の星(ジェンテミュール)も巻き込ませない。オレはおまえを倒す!」

 「はっ。俺がお前に倒される? ないない。俺とお前の実力が同じでもな。力の持続力が違うからな。長期戦になるこの戦闘は俺の勝ち! 負けんのはお前だ。ルル!」

 「そうだな。同じ勇者ならばな・・・」

 「・・・え?」


 ここでオレの新たな力を披露することになる。



 ◇


 「剣を極めたその先は何処へと往くのか。道を極めたその先は何処へと辿り着くのだろう・・・・」

 「る・・・ルル????」


 たじろぐ勇者レオンは、無職ルルロアの変化に気付いた。

 ルルロアが、今までの激しい口論を捨てたことで、落ち着きが増してきた。


 「剣聖『泰然自若』」

 「は????」


 無職ルルロアの周りにあった黄金のオーラは白光へと変わる。

 剣聖のスキル『泰然自若』が発動された。


 「ルル! お前、そのスキル・・・」

 「来い! レオ。ここから先のお前の攻撃は、オレには当たらん。そしてオレの一方的な攻撃のターンとなるぜ」


 無職ルルロアは勇者レオンに宣言した。


 先程までは素早く動いていたはずの無職ルルロアは、何故かゆっくり歩く。

 花嵐が纏っていた七色の光は消え、いつもながらの銀の光沢の刀身となっていた。



 「ルル。レオンハートがなくなってんぞ。それじゃあ、俺のレオンハートは止められないぜ!」


 勇者レオンが得意の攻撃に移る。

 雷鳴の如し轟音と共に勇者レオンはジグザグに動く。


 「くらえ! ルル! レオンハート」

 「馬鹿者が! お前の動きは実は単調。いくらジグザグに動こうが、この泰然自若がお前の動きを全て見切っている」

 「な!?」

 「お前の攻撃は意味のないものとなる。桜花流 桜影」

 

 ルルロアが無駄のない滑らかな動きを見せる。レオンの右からの袈裟切りに対してルルロアは桜花流『桜影』を出した。

 猛烈な勢いで自分に迫るレオンの剣に対して、横から軽く殴るように花嵐を当てた。

 ルルロアの左肩を斬るはずだったレオンの剣は、完全に外れてルルロアへの攻撃箇所の反対の右側を通り過ぎた。


 「なに!? 俺の攻撃が空振りだと・・・しかも左に大きく逸れた!?」

 「レオ! 人に斬られるということを初めて経験しな。桜花流 乱れ桜」

 「ふ、ふざけんな。何だこの速度は!?」


 レオンは咲き乱れるルルロアの無数の剣戟を止められない。

 黄金のオーラに守られて、通常の防御力を上回るはずの黄金の甲冑が悲鳴を上げる。


 「ググググ・・・・・いてええ。ああ、クソ!」


 レオンは全力でバックステップして、ルルロアから離れた。


 「強えわ。お前がそんなに強くなってんのかよ・・・はぁはぁ」

 「レオ! お前は何やってたんだ。お前の成長はまだまだ止まらないはず。もっと先があるはずなのに・・・この三年。鍛錬をしてこなかったな。怠け者め」

 「・・・ファミリーを維持するのに、俺たちは修行なんてしばらくしてないわ」

 「そうか。なら全員怠け者か・・・んじゃ! 後でオレがお前らに指導してやらんとな」

 「は? 何言ってんだ?」

 「後でお前ら全員の根性を叩き直してやる。厳しい修行をつけてやろう」

 「お前が・・俺たちに?・・は? やっと俺たちの元に帰ってきてくれるのかよ」

 「いいや、帰りはしない。だが、お前ら四人。オレがもっと成長させてな。こんなクソどうでもいい政争に巻き込まれて、有名になるんじゃなくて。お前たちには冒険者として! 人々の希望として、偉業を成して有名になってもらおう」


 ルルロアは真っ直ぐレオンを見つめて宣言した。

 人類の希望の星になるのは、我が友たちだけ。

 そう信じているからこそ、愛しているからこその倒す宣言である。


 「それにはまずリーダーである。レオ! お前をここで倒す。そこから始めるぞ。いくぞレオ! 次のオレの攻撃・・・・防げたらいいな。死ぬなよ」

 「・・・な、なに???」


 勇者レオンは無職ルルロアから発せられる力の波動に冷や汗をかいた。

 

 「な・・・何をする気だ・・・」


 一歩だけレオンが右足を下げた。

 その直後。

 

 無職ルルロアが目の前から姿を消した・・・・ように勇者レオンには見えたのである。

 だが実際はレオンに向かって歩いているルルロア。 

 認識にズレが生じていた。


 「霞んだ幹から、枝には花。しかし花はまだ蕾であった・・・そこから一分となり・・・満開となる」


 ルルロアの静かな声が、勇者レオンに恐怖を与えていく。

 勇者レオンには状態異常が効かない。

 なのにその動じない心を動じさせていく。

 手の震えが起きるなど、冒険者として戦い始めて、初の事じゃないだろうか。

 レオンはそう感じていた。


 「桜花流奥義 百花繚乱 桜花爛漫」

 

 どこからともなく声が聞こえて、最後に背後から聞こえた。

 振り返ったレオンは剣を構えたが、時すでに遅し。

 無数の花びらは満開となり上から降り注ぐ。

 

 『百花繚乱 桜花爛漫』は満開となった一太刀が、敵の頭上から無数に降り注ぐ。

 一刀両断連続斬りである。

 振り下ろした刀を返して再度上段から振り下ろす。

 それがとんでもない速度で滑らかに動くので、相手にはただただ頭上から攻撃が流れてくるだけに見える。


 「ぐおおおおおお。なんだ、この一撃一撃が重いいいいいい」

 「レオ! 砕けろ!」

 「な!? ぐふっ」


 レオンの黄金の甲冑が砕けはじめる。

 肩が腰が膝が。

 あらゆる箇所の鎧のパーツが外れていき、レオンを防御する重装備が剥がされた。

 

 「ほんじゃ、最後だ!」


 ルルロアの最後の一振り。

 刃を反対にして振り下ろされた。

 その一撃は、レオンの首の弱くなったオーラに入る。


 「がはっ! くそ・・ルル。てめえ。えんりょし・・・ろ・・や・・はははは! あ・・・」

 「これでも遠慮してるぞ。勇者レオン!」


 最後の一撃で倒れる事になったレオンは、ルルロアの攻撃で敗れたというのに嬉しそうであった。

 空を見上げるようにして満足げに倒れた。




 ――――――

 

 ジェンテミュールを作った時。


 「オレたちってファミリーの名前をどうすんのよ」 


 オレは皆に聞いた。


 「ああ。それな・・・どうしようかな」

 

 レオンが言うと。


 「そうだな。早めに決めたほうがいいよな。ルルはなにか案があんの?」

 

 ミヒャルがオレに聞く。


 「ああ。オレは名前に希望が入ってほしいなって思ってる」

 「それはいいですね。私は賛成です」


 エルミナはオレの意見をすぐに受け入れた。

 

 「お前らはオレの希望だからな。これは外せん」

 「ん? ルル。今何て言いましたか?」


 オレの独り言は、エルミナには聞こえなかった。


 「・・・おらも・・賛成・・・zzzz」

 「「「「 おいおい 」」」」


 イージスは眠った。

 そこから数十分後。

 

 「ちょっとオレ、用事を済ませてくるわ。クエストをまとめて会計してくる。あと装備とかもチェックしてくるわ」

 「わかった。俺たちで考えておくから行ってこいよ」

 「ああ。レオ頼んだわ」

 

 オレは席を立ち、そこから数時間後。

 席に戻ると。


 「やっと来たか。ルル」

 「ルル、私たち。決めましたよ」

 「え。もう? 今日中に決めたんか。早いな」

 「あたぼうよ。うちらにかかりゃな。あっという間に出来るんだわ」

 「・・・うん・・・そうだ・・・おらたちには簡単な事よ」

 「んじゃ! 何にしたんだ?」


 オレが全員に聞くと皆が笑顔で答える。


 「「「「希望の星(ジェンテミュール)」」」」

 

 こうして、田舎の村出身のなんでもなかった五人は、人類の希望の星となろうと冒険者ファミリーとして動き出した。

 世界に希望を与えようとして・・・。

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