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第1話 最強の冒険者ファミリー 希望の星

 世の中には様々な人間が存在する。

 その中でも人知を超えた人間がいるのは、皆さんもご存じだろう。

 人の域を超えた。

 人ならざる者の事だ。

 いわば、化け物に近い人間。

 怪物と言い換えてもいいだろう。


 それらの人間は、極稀で、極僅かで、この世界に誕生してくる。

 いやいやだって、そんなとんでもない実力を持つ人間なんて、そう易々と出られても、一般人には困るってもんだ。

 普通の人間が、実力のある人間を見ると、萎えてしまう子がいるだろ。

 おそくらはさ。

 それに、自分がある分野でちゃんと評価を得たい時に限って、そいつらみたいな化け物が来たら、評価を得られない事だってある。

 理不尽だよね。

 

 まあ、でもそれらを気にしてもしょうがない。

 人知を超えた人間が相手では、こちらが比べたりしたら駄目なんだ。

 

 という事でオレの身の上話を一つ。

 実はオレの周りには、そんな化け物がなんと四人もいやがるんだ。

 しかも身近の身近の幼馴染。

 信じられるか。

 化け物四人とオレは幼馴染なんだぞ。

 普通のオレが! 

 ただの普通のオレが! 

 四人の怪物と一緒なんだ。子供の時からずっとだ。


 そんなオレたちは不釣り合いの力関係なのに昔からずっと仲良しなんだ。

 圧倒的に幼馴染の実力が上。

 でもオレはこいつらを一度も妬んだことがない。むしろ応援している。

 ダメダメなジョブを持つオレの事を、快く受け入れてくれたのはこいつらしかない。

 皆から馬鹿にされるオレを、一度も馬鹿にした事がないのが、こいつらなんだ。

 心底感謝してるから、こいつらには何か恩返しをしたいと思っているんだ。


 この世界で出来る最高の偉業。

 三大クエスト制覇。

 これを皆には達成してもらおうと、オレは日々努力して、影ながら支え続ける事を誓っている。




 ◇


 三大クエスト制覇。

 それは、冒険者ならば夢見る偉業中の偉業の出来事だ。


 この世界には、様々な目的を持った冒険者がいる。


 誰よりも先にダンジョンを制覇しようと、攻略を目指す者。

 未知を既知にするために、まだ見ぬ地を目指す者。

 最凶を倒して、最強を証明しようとする者。

 冒険者の目的なんて、人それぞれだ。

 

 しかし、その目的の終着点のようなクエストが、冒険者の中にあって、それが世界三大クエストというものだ。


 ①四大ダンジョンの制覇

 世界にある五大陸の内。四大陸にある最高難易度のダンジョンを制覇する事。


 ②魔大陸への挑戦

 人類が何度挑んでも失敗し続けている世界の北に存在する五番目の未知なる大陸を歩いて帰還する事。


 ③三大魔獣王の撃破

 無慈悲な自然災害級の力を持つモンスターの撃破。 

 


 これらはいまだかつて達成されたことのないクエストだ。

 難易度計測不能とまで言われ、今までに挑戦した冒険者は数知れず。

 細かく分けると八つのクエストになるが、そのどれもが達成されていないものだ。

 いかに難しい事であるかが、この事実でわかるだろう。


 でも、それは、今までの話だった。

 そう『だった』になったのだ。


 オレたち。

 冒険者ファミリー『希望の星(ジェンテミュール)』がこの世界に誕生したから。

 このクエストは、未知にならず、既知となる。



 ◇


 四大ダンジョンの一つ『バイスピラミッド』

 砂の迷宮で、床は柔らかい砂。壁は堅い砂。天上はその中間の硬さ。

 とにかく砂だらけのダンジョン。

 四大ダンジョンだけあって、ダンジョンレベルは非常に難しい難易度。

 でもオレたちは、あいつらのおかげで、楽々と奥地へとたどり着く。



 ◇


 最奥は、墓が乱立する場所だった。

 立てられた墓。横に並べられた墓。

 それらからミイラが出てくるのか。

 と思いきや、出てきたのは、デスジャイアントキラーアントと呼ばれるクソデカくて、動きが気持ち悪いモンスターが現れた。

 巨大なアリの体の癖に、めちゃくちゃに足が速い。

 さらに足が細かく動くので俊敏性まであるのが気持ち悪さを呼ぶ。


 

 戦いは数分で熾烈を極めた。


 「レオン! 離れな。うちの後ろに来い」


 透き通った海のようなクリアブルーの瞳と髪を持つ大賢者ミヒャルは、最奥のボスと戦っている最中に仲間を呼んだ。

 慌ててはいないが、切迫した声のために、仲間たちはすぐに集合する。


 「ミヒャル、なにする気だ!?」

 「うちが、魔法をぶっ放す! ウロウロされると巻き込むから、下がりな」

 「おう。わかった」

 

 敵と真正面で対峙していた勇者レオンは、指令を受けてすぐに動いた。

 黄金の髪が素早くジグザクに動くと、稲妻のように見える。

 その動きの鋭さが、彼が勇者であることの証明だ。

 

 勇者レオンは大賢者ミヒャルの背後に入る。

 

 「イージスも、エルミナも。ついでに、うちの後ろに来い!」

 「うん」「はい」


 身に着ける防具なし。

 手に持つ武器なし。

 白髪頭の仙人イージスもミヒャルの背後に入る。

 続いて、碧と純白を基調とした聖なる服装をしている聖女エルミナもミヒャルの後ろに行った。

 二人が安全圏に入ると同時に、聖女エルミナが魔法を唱える。

 なぜなら、目の前の蟻が息を大きく吸い込んだからだ。


 「……あの攻撃を拒絶します。プロテクトウォール」

 

 聖なる白光が四人の周りに集まり、敵の酸ブレスを防いだ。

 周りの土は溶けていくが、彼女の魔法のおかげで四人が無傷である。


 「ナイスだ。エルミナ! 次はうちがいく」


 大賢者ミヒャルは、折れ曲がった形をしている杖をかざして、魔法を唱えた。


 「……苦しめ! ランダムフォース!」

 

 火、水、風、土。

 大賢者ミヒャルの魔法は、四属魔法をランダムで連射する極限魔法。

 大賢者である彼女しか扱えない特殊な魔法だ。

 

 デスジャイアントキラーアントは・・・。

 通称デスジャイアンは、彼女の魔法によって、火で焼かれたり、風で切り刻まれたり、土に挟まれたり、水に溺れたりと種類の違う攻撃に悪戦苦闘していた。

 最終的には、息が苦しくなったらしく、無表情っぽい顔を苦しそうな顔に変えて、大きく後ろに下がっていった。


 この隙を逃さないのが、垂れ目の仙人イージスだ。

 得意の瞬間移動の様な動きで、大賢者ミヒャルの真後ろから一気に敵の前方に出た。

 しゃくれたような口を持つデスジャイアンのデッパリ部分の顎を蹴り上げる。


 「ふん! ふんふんふん・・・・ほい!」


 跳ね上がった顔の下をずっと叩く彼は、相手の装甲をぶち破っていく。

 皮膚が剝げていくように黒い皮が飛び散っていった。


 「よし。イー! 下がってろ! 俺がいくぜ! 決着をつける」

 「・・・うむ!」


 レオンの声に、イージスが頷いた。

 彼は、力を最大限に高めて、全ての力を剣に注ぐ。

 

 「はあああああああああああああああ」


 剣が七色に輝き。

 レオンが、デスジャイアンの頭上に飛んだ。


 「くらえ。勇者の剣(レオンハート)


 自分の名前がついた必殺技を、周りに人がいるのに恥ずかしげもなく叫ぶ。

 そんな勇気ある勇者レオンは、デスジャイアンを倒した。

 真っ二つになった体を見届けて、敵に背を向けると、三人が彼の元に駆け寄った。


 「やったね。うちら。倒せたじゃん」

 「そうですね。私たち、よく出来ましたよね」

 「・・・うん・・・」


 三人の明るい笑顔に合わせて、勇者レオンは高笑いをした。


 「ああ、俺たちって最強だよな。この調子ならさ。あの三大クエストの全制覇をやっちまうんじゃないか!」

 「そうかもな。うちらならさ」

 「まだ四大ダンジョンの二つ目を攻略しただけです。レオン! 調子に乗りすぎですよ」

 「・・・眠い・・・」

 「んじゃ。帰ろうか!」


 こうして四人の英雄は、偉業を成した。

 バイスピラミッドの最奥のボスを攻略したということは、ダンジョン攻略の完了を意味するからだ。

 これが、彼らの四大ダンジョン攻略の二つ目となり、世界の大事件の一つとなった。


 一度も突破したことのない四大ダンジョンを二度。

 この偉業は、誰にも到達できないだろう。

 しかしこの偉業には裏側がある。

 この英雄たちを支える人物がいなければ、彼らはこの高みへと至らない。

 そう彼らには、彼がいないと駄目なのだ。


 無職の冒険者ルルロアが・・・。



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