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ある朝の出来事

作者: 鈴木 澪人

「あ~、学校行きたくない。家に帰りたい...。」


娘が朝からぼやいていた。隣に座る息子は無言でスマホをいじっている。


「ちょっと、何言ってんのよまだ最寄り駅にもついてないでしょ」


2人の母親の茉奈は呆れながらハンドルを握っていた。


電車に間に合わない娘と息子を送っている最中だった。


娘はダルぃ~と言いながら片道2時間を2年間通い続けている。


「今日は金曜日なんだから明日休みでしょ?がんばれー」


最後の励ましを棒読みで伝えるとギャアギャアと反論された。


「週末はバイトだし!課題は溢れんばかりに増えるし!」


娘の八つ当たりが、母親の茉奈から隣に座っている弟へチェンジをする。


「あ~あ~、高校生はいいよね~。学校近いし」


息子は面倒くさそうに


「ハイハイ、近いですね。」


と軽く流していた。息子は姉の対応に慣れている。


 約10分ぐらいで最寄り駅につくと


「いってきます!」 「いってきます」

と子ども達に声をかけられてので


「定期持った?スマホ大丈夫?」

つい癖でいくつになっても忘れ物の確認をしてしまう。


どうやら大丈夫だったらしく、娘は手をふり息子は小さく会釈をした。


会釈って...。と茉奈は心の中で呟きながら駐車できるロータリーを出た。


急に静かになる車内に自分のお気に入りの曲だけが流れる。


今日は比較的時間に余裕があるのでこの後の段取りを考えながら信号待ちをした。


「あ~、ここの道、矢印(信号)出るまで動かないんだよな~」


人通りの多い交差点の為、左折できる車の台数が少なかった。

茉奈は今回の信号では左折できないな~と思いながら進行方向を見ていた。

 その横断歩道を渡った先には保育園があり、その園の体操服を着た男の子と手をつないでいる父親を見かける。


その親子を見ながら、自分の子どもの時は父親の送迎は珍しかったけど今は普通になっているんだもんな~。時代は進むわ~。



茉奈が一人で感心していると親子が渡ろうとしていた横断歩道の信号が点滅し始める。


「あ~、あの親子は渡るのは無理か~」


大人が走れば間に合うが子どもと手をつないで歩いていると厳しい距離だった。


すると、父親は掬うように息子を抱き上げると横断歩道に向かってダッシュしていった。


茉奈は、おぉ~。スゲーなと思いながらその様子を眺めていると

声も掛けられず抱き上げられた息子は一瞬驚いたがすぐに父親にしがみついた。


そしてその瞬間


「あっ」 茉奈は思わず車内で声を出した。


その息子が嬉しそうに幸せそうにとろけるような笑顔で父親にグリグリと顔をよせていた。

その息子の表情があまりにも印象的だった茉奈はその後の親子の行方を追うことができなかった。


もちろん、矢印信号はすぐに消え茉奈の車もほぼ動くことはなかった。


いつもなら少しイラっとしていた茉奈だったが今日は少し心がほっこりとした。


左のウインカーを出しながら


 今日は子ども達の好きなおかずでも作りましょうかね


と茉奈は心の中で思いながら家路に着いた。


【補足】

 ・茉奈の進行方向上見ることができた出来事です。

 ・わき見運転はダメですよ。

 ・点滅信号への駆け込みは危険ですからね。

 ・茉奈はその息子さんの笑顔をそのお父さんにも見せたかったなと思いました。

  くぅ~。残念。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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