夏と冬
「あつはなついです。というのに、さむはふゆいです。と言わないのが不思議に思う今日この頃」
「いや、どっちも言わないから」
「永遠のテーマである、夏と冬どっちが好きか、を決めたいと思います」
「ま、よく聞く話だな」
「しかし私は秋が好き!」
「いきなりテーマ無視っ?」
「だって食欲の秋だし」
「だってじゃない」
「とまぁ前フリはこれくらいにして」
「……魂の叫びに聞こえたけど」
「食欲にちなんで、食という観点から夏冬の優劣性を検証していきます」
「ああ、夏はスイカが食べられるから好き、とか、ミカンのある冬は外せないだろ、ってやつだな」
「夏のお汁粉と、冬のかき氷、どっちが好き?」
「我慢大会かっ」
「苦境に立たされた時こそ、人の本性は分かるのだ」
「……じゃあ、冬のかき氷って、答えたら?」
「あなたはかき氷が好き」
「まんまやーん」
「次の質問。夏の麦茶と冬の麦茶、どっちが好き?」
「お前は、夏を勝たせたいんか?」
「しかし私は秋が好き」
「はいはい。どうせなら公平に、夏の冷たいお茶と、冬の熱いお茶にしたら?」
「猫舌の人はどうするのよっ!」
「だったら食から語るなっ」
「では、服装の観点から考えてみます」
「切り替え早いな」
「よく、冬は着込めばいいけれど、夏は脱いでも暑い、と言いますが……」
「つまり冬有利?」
「冬に素足をさらされ、かと言って夏に上半身を脱げない、全国の女子中高生はどうすればいいのかっ」
「気持ちはわかるが論点ずれてる」
「着込めず、さりとて脱げない。これを究極のチラリズムと言うのでしょうか」
「言わん」
「でも男性の立場からすると、女の子が薄着の夏のほうが、いいんじゃなの?」
「確かに、うっすら透けている下着、健康的な素足、無防備な襟元や袖元、曲線美がはっきりと分かる薄着は魅力的だ。だがしかし、指先が隠れてしまうくらいのだぼだぼのセーターや、口元を覆うふかふかマフラーもまた魅力的であり、これぞまさに究極の選択と――」
「衣と食をやったので、最後は住でいってみたいと思います」
「華麗にスルーっ?」
「建物に入ったとき出迎えてくれて嬉しいのは、冬にホットな暖房か、それとも夏のクールな冷房か」
「うーん、どっちも捨てがたいな」
「しかしここで問題。前者を選んだ場合、冬が好きだというのに理由が暖かいから、後者の場合も同様に、矛盾が発生します」
「……ってことは、どうなるんだ?」
「やっぱり秋が好き」
「結局それかっ」
ちなみに、春は花粉症なので論外です(さりげなく宣伝)
次回の投稿は、10月24日の予定です(笑)