2-3.運命の受容
「それではあなたは、海神のご一族のご令嬢にあらせられるのですね。見苦しい姿をお目にかけてしまいました」
ナウシスは狼狽を胸中に強く残しながらも立ち上がり、居住まいを正した。緊張のために胸は高鳴り、嘆くことも忘れていた。そんな様子を見てウリシアはくすくすと笑い、そして言うよう、
「まあ、王子様にそのようにお言葉を頂いては、恐縮してしまいます。どうかこちらに、お側いにらっしゃいませ。親しくお話をさせていただきたいのです」
ナウシスはまだいくらかためらいながらも、岩場をよじ登り、ウリシアの隣に腰を下ろした。彼女に手を引かれ、それが思っていたよりもずっと暖かかったので、ナウシスは驚いた。まるで、彼女の肉体が突然目の前に、あるいは手の中に現れたかのようであった。ナウシスの胸はなおも高鳴っていたが、それはもはや、ウリシアの尊貴による緊張のためだけではなかった。
ナウシスは、自分の知った託宣について話し、そんな運命を負った自分の身の上を嘆いていたのだと語った。それを聞いてウリシアがいくらか身をかがめ、ナウシスに顔を近づけて言うには、
「お嘆きも無理からぬこと。先を見通すというのは、時にはそのように悲しみの種になります。かと言って、神々のお考えは御自身にしか分かりませんし、運命は神々にも自由ににならぬとも申します。それ故に、たとえ私たちのように永遠の時を生きられるとしても、かえって責め苦が続くことにもなります。ともかく今はただ、精一杯心楽しく過ごされることでしょう。しかしそれよりも、正しく、慎まれて生きることが肝要でしょう。そうすれば、何か幸を受けられるかもしれません。定命の尽きて尚、神々が寵愛なさった方々も数多くおられますから」
ナウシスには彼女の言うことはもっともに思われたが、嘆きの原因を癒す役にも立たないとも分かっていた。とはいえ、すでにひとしきり嘆き終えていたからか、あるいはウリシアを前にして、あるいはその声と共に吐息を感じて起きた胸の高鳴り故か、いつまでも打ち沈むのはやめようと考えた。ところでナウシスの様子について老人が語ったのはこの程度までなのだが、私としてはきっと、少年はウリシアを前にしてあるいは隣に腰掛けて、顔を赤らめずにはいられなかったのではないかと思う。