2-2.海からの来訪者
「なんということだろう、神様が僕の運命をあんな風に予言されていたとは。母上にはあのように言ったけれど、僕は神様が決して間違えないのを知っているし、母上や父上がそんな重大なことを聞き違えるはずがないのも知っている。僕が大人になる前に死ぬなんて――ならばあと何年もない、いやそれどころか、明日か今日にでも死んでしまうかもしれないぞ。みんなが歌っているように豊かなこの島にあるのに、僕は早々と死んでしまうのか。父上は兄上がいるから心配なさっていないようだし、兄上にしても、僕が死んでもまだ新たに兄弟を得ることもあるのだからよいのかもしれない。しかし母上はあの嘆きようだった。ああ、いっそ早々と死んでしまえば、母上が苦しまれる時間も短くて済むのかもしれない。でも僕の気持ちはきっと母上と同じなのだ、自分を惜しむか子を惜しむかという、別々の道から至ったにしても」
このように考えながらナウシスが膝を抱いて顔を伏せていると、ナウシスに話しかける者があった。しかしその声があまりにも心地良かったからか、ナウシスは最初、それが自分に向けられた言葉だとは気づかず、あたりを満たす波の音から選り分けることもできなかった。その声は左程に、ナウシスを魅了せんばかりだったのである。
「何をそう嘆かれるのです、王子様。この豊かな土地を領く王の子として生まれながら、どのような心配がありましょう。あなたのように率直で慎み深いご気性なら、今もこの先も、人々の支えや神々の助けに恵まれることは必定でしょうに」
その声の方を見やると、ナウシスは驚きのあまり、一時は悲しみを忘れた。近くのいくらか盛り上がった岩場に、一人の女が腰を下ろし、哀れみの目をナウシスに向けていた。その女はほとんど裸体も同然で、身にまとうのは、どこで尽きるのか見て取ることもできないほど長く豊かな青白い髪のみという有様だった。その髪は白金のように輝くばかりで、波の打ち寄せて砕ける、岩の足下にまで届いていた。目鼻のくっきりとした美貌や、豊満で均整とれた肢体はまるで作り物、それも決して人間業の及ばないほどに見事に作られたようで、しっとりと潤った肌は、その大きな目のように艶やかだった。しかし何よりナウシスを驚かせたのは、その女に二本の足がなく、へそより下が魚、いや海豚のように一体で先端に大きな鰭を持っていたことであった。
「そこにおられるのはどなたです、そのお姿は、とうてい人の身には思えません。どこから来られたのですか。それに、なぜお姿を僕にお見せになったのです」
ナウシスがこのように尋ねると、その女が答えて言うには、
「私はいつもあなたがここに来られるのを見て、密かにお慕いしていたのです。あなたほど、私たちの住む海を悲しげに見つめられる人はおられなかったから。しかし今日は格別に深くお嘆きのようでしたから、居ても立ってもいられず、伺わせていただいたのです。私は海の中、遙かな彼方に住んでおります――私をご覧いただき、すでにお察しとは思いますが。私は名をウリシアと言い、アンティクレスの娘です」