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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
第3章 腐都乖離編
96/274

人間と書いてガラス細工と読む

あらすじ 特になし


ある女性が西の地区に向けて走る。

息を荒らげて脇腹を押えながら目はまっすぐ前を向いて走る。

賛同は得れなかった、だが彼女の胸には絶え間ない不安が立ち込める。

信じる事と信じ切る事は違う。疑う事こそ真に信用に至るための道と言える。

疑うのが嫌だから信じると言うのはただの盲信なのだ。


「お願い!間に合って!!」


彼女────カオリはクスノキを疑っている。

別に敵だとかは疑っていない。

強さも疑っていない。

ただ、何も無く疑っていた。

理由なんてない、動機なんてない、根拠なんて無い、そんな薄氷のような青白い疑いでクスノキを見る。

力も知っている。強さも知っている。

ただカオリはひとつ、一つだけ絶対に許せない事がある。

例え、強かろうと

例え、ヒーローだろうと



────あんなに小さい子が戦場で戦うなんてあってはならない。



自分がクスノキ位の時、何をしていただろうか?

ただ学校に行き、ただ眠り、ただ起きる。

そんな2次元のような目には見えない、怠惰に襲われて毎日を生きていた。

あの時の小さな自分にゾンビと戦えと言ったら?

国の為に命を捨てろと言ったら戦うだろうか?

答えは明白。

なぜならそこから大きくなり、大人という成長段階になった自分でさえ手が震えているのだから。


──────────


辿り着いた。辿り着いてしまった。



「───────」



声が出ない。目の前の光景を理解しているのに、疑ってしまう。



「クスノキさん!クスノキさん!」



泣いているのは1人。クスノキと一緒に行動していたカウノだけ。

許せなかった。ふざけてる。

この国の人間は何もしていないのに、救おうとした少女が目の前で死んでいる事に。

この怒りは”クスノキが死んだ”からでもなく”ゾンビに対抗できる希望を失ったから”でもなく。

ただ”本来戦う必要などない少女が死に、戦うはずの大人が今も笑いあっている”事だ。


「ふざけてる─────変えなくては」


カオリは嫌悪する。全ての希望を小さい少女の背中に任せる国に。

信じてると詭弁を吐いて見て見ぬふりする王を。

この全ての元凶であり、不幸の爆心地でもある腐王を。



「許せない、よくも先のある命を……お前のような!死人が殺したな!!!!!」




カオリは剣をだす。実力差は明白、それでも戦うしか無かった。

それしか無いのだ。日本人(・・・)の彼女には。



──────本名朝凪香織(あさなぎかおり)




──────────



【うーん、彼女であれば少しは善戦出来ますかね?】



場所は変わり、クスノキが修行している場所に移る。

ムーンは特にこの戦闘に興味が無い。誰が来ようと上位種に勝てる人間はいない。

()()()()()()()()

もう運命は決まっている。

だからこそヒーローが必要なのだ。



【あのー、そんなに悠長にしてていいんですか?早くしないとあなたの大事な人全員死にますよ?】



───ボロボロ。今、クスノキの状況はその一言に尽きる。

一瞬で傷は治るが、それでもずっとボコされればその状況になってもおかしくない。

それでも──────


「はぁ、はぁ、まだもう1回!」



【……闘志は消えてないようで何よりですね。それにしても使えるのなら使うでしょうし、本当に固有魔法が使えないんですね。日本人だからという訳では無いでしょうし……やはり面白いですね、貴方は】



だが、クスノキの状況は何も変わっていない。このまま行けばクスノキが倒す頃には全てが終わっている。

それもまた運命なのだが、ムーンはあらゆる万物の中でも

”バットエンド”が1番嫌いなのだ。

なので、きっかけを与えることに─────────




【クスノキさんちょっといいですか?気が変わりました、貴方に少し褒美を上げましょう】



「いきなり藪から棒になんだよ。寿命とかあげねぇぞ?」



【……貴方は私をなんだと?まぁいいです。貴方の()()()、確かにシロさんでしたか?復活させてあげましょうか?まぁそれには代価が必要ですが、それはそれとして2人なら上位種にも簡単に──────】



「あぁ、特に必要ない」




【──────?】



一瞬ムーンの思考がフリーズする。予想外の中でも1番ありえない選択肢をノータイムで跳ね返してきたからだ。

少し焦りながらもムーンは言葉を紡いでいくしかない。



【あ、あの!代価といっても少し時間が掛かる程度でして、デメリットなどないんですよ?それならいいでしょう?】



「……そういうの関係無い。しなくていいって言ったらしなくていいんだ。死んだ人間は戻らない。だからこそ今が輝くんだ。もういいだろ?戦いに戻る」



クスノキが戦いに戻ろうと振り返り、影に向かって歩く時。



【クスノキさん、貴方は一体どんな過去を?】



クスノキは転生者。死んだことは確実だ。だがムーンにはそれしか分からない。世界が違うとかそういう事じゃない。

クスノキの過去はムーンが手を尽くしても()()()()()()()



「なぁムーン。お前は死体を持った事はあるか?血が滴り、まだ生きているかのような()()()。死体ってな────意外と暖かいんだぜ?」



その言葉と共に、ムーンの背中に悪寒が走る。神になり、久しく味わっていない「恐怖(畏怖)」。味わうことのない神を殺すロンギヌスの槍だった。



【貴方は、日本人です……よね?】




「どうだろうな。ただ覚えとけ、アリはアリでも羽が生えるやつもいるんだ」




そう言ってクスノキは戦いを再開する。

少しづつ慣れ始めたのだろう。先程よりも反撃が早くなっている。予備動作が少なくなっている。

強くなることは良い事だ。それに善も悪もない。要は使い用だ。

だからこそムーンは思ってしまう─────



【……本当に私は】



────このガラス細工(人間)に力を与えていいのだろうか?と

読んでいただき本当にありがとうございます!




星を増やしてくれるとありがたいです。




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感想やレビューもお待ちしております!




星ももちろん大歓迎!




具体的には☆☆☆☆☆を★★★★★にね。




そうするとロリのやる気が上がります。

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