上位種
あらすじ なんか喧嘩してる。
朝から耳が痛い。
扉をバンと閉める音。ドタドタと歩く音。
だがそんなのは些細なものに過ぎない。
いちばん大きい音を出しているのは、、
「あんた、人が名乗ったのに自分は名乗らない訳!?信じられない!常識を知りなさいよ!!」
えっと、グリュエ・バッタンテールだったか? 名前からしてうるさい。
金髪の長髪で、ロシアのような暑そうな服を着ている。軍服なのだろうか?
どちらかと言うと日本人顔か?
典型的な話さなければ美人タイプとみた。
だが、まぁこいつの言葉も一理ある。
名乗られたら名乗り返すのが礼儀か──────
「冒険者 クスノキです」
「………安直ね」
────殴っていい?こいつ。名乗らせて罵倒されたぞ?
ほんとにこれ以上話していると頭が痛くなりそうだ。早く話を進めよう。
………何?カウノ。「名前が短くて呼びやすいと思います」って?フォローになってないよ。
──────────
西の地区の奪還作戦か。会議室に移動して説明が行われる。
特に話すことも無いんだがね。浄化使って消せばいいだけだ。
でも、一つだけ気になること【上位種】とは一体?
「で?なんであんたがここにいるの?アズマ?」
……俺が聞く前にグリュエがツッコんだ。当たり前のようにいたな。
この会議室にいるのは俺とカウノとグリュエとアズマの4人だ。
頼むから喧嘩しないでくれ。大の大人がみっともない。
喧嘩はしてもいいが場をわきまえて欲しいものだ。
「うるせぇ、さっさと始めろ。俺も上位種に興味がある。
俺が討伐してやってもいい」
へぇ、それが出来るのならアズマにお願いしても─────
「いい加減にして。あんたじゃ勝てない。知ってるでしょ?今回の上位種の被害を。
ただ手から火を出している大道芸人じゃ、せいぜいステーキになるのがオチよ」
周りを見る─────ノリで言ってるのか?と思ったがどうやらそうでも無いらしい。
先程まであんなに争っていた2人の目には、まるで深海のような黒い墨で満たされている。
人はそれを『目が死んでいる』と言うのだ。
・・やはり、カウノを連れてきたのは間違いだったのかもしれない。
今からでも遅くない。カウノを牧場に───────
「その上位種のよる被害は?」
────少し意外だった。カウノが”こんな顔”をするのが。
一緒に生活していて、笑顔を絶やすことがなかった彼女だが、それでもそれは偽りの仮面。
本質は死を許さない慈愛の顔。
今それを見ている。一切笑わず、狂わず、そしてためらわず、一線にグリュエの目を見ていた。
「………上位種が発見されたのは、約2週間前。そこから、西の地区が奪われるまで1日かからなかった。
西の地区は、この国の50%以上の食料を保存してあるの。それなりの警備と武力だったわ。
あの時、約100人の兵士が上位種に戦いを挑み、そして全員帰らぬ人になった。
それを重く見た大空様は西の地区の放棄を命じたの。」
それ程までに上位種は強いのか。だがそれだと矛盾が生じる。
聞いてみるか───────
「グリュエさん。ではそんな力を持っている上位種が何故西の地区だけで納まっているのですか?
この国には見た限り、通路を塞ぐ門などはありません。
何故、西の地区だけが襲われたのですか?」
「それについては現在調査中、ただ上位種は厄介な習性があってね。それか、もしかしたら………そう言えば貴方がた上位種が何なのか知らないわよね。説明しとくわ」
────正直それが一番聞きたい。
そしてグリュエは語り始めた。上位種という害悪にしかならない破壊の権化なりえる者の事を。
「ゾンビは噛まれてもゾンビにならない。なるのは”ゾンビによって殺された時”のみ。
でも、少し疑問に思うんじゃない?ゾンビに殺されてなるにしてはゾンビが多すぎるって。
この国が摩耗しているのに、ゾンビは絶え間なく増えている。
この謎について最近大空様が解明したの。死んでからゾンビになるには時間に固有差があるとね。
”ゾンビになる”言葉、いや文字で書くのは簡単よ。だけどそれは魂から改ざんしなくてはいけない。単に体が腐ったとかツギハギが出来るとかじゃないわ。存在そのものが変わっているのよ。
そして、その中でもゾンビになるのに特に時間の掛かった人間。
つまり、魂が強く改ざんに時間がかかった者。その者がゾンビになった時、異常なまでの力を手に入れる。普通のゾンビとは比べ物にならないほどにね。
その固有殲滅体の名を【上位種】と呼ぶわ」
・・グリュエの話はどんどん重くなっていく。そして最後に、こう結論づけた。
「西の地区には、図書館があるの。もう何年も人がいなくて腐敗してるけどね。
そこを拠点にしているのなら、その上位種の元の名前は【アルグワ・バッタンテール】初代ギルド館長よ。そして───────」
名前が同じ。時にはあるだろう。この世界は広い。似た者が居てもいい。だが、この国でおなじ苗字を持つ、おなじ職業を持つ者とすればそれは。
──────私の実の父にあたるわ。
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