その者に罪ありき
なんか裁判が始まった。
「何とかしゃべったらどうだ?」
よく分からん裁判官がなんか言ってるよ。少し歩いていきなり証言台にたっている俺に何を言えと。
「────何とか?」
「静粛にと言っただろう!」
お前が喋れって言ったんだろ!あーもうなんでこうなるかな。頭が痛くなってきた。
裁判官の木槌がまたなる。意外と近くで聞くとうるさいんだなそれ。
「これより、裁判を始める。被告人の罪状を述べよ!検察官」
検察官?あー異世界人が長ならその名があっても有り得るか。 横にいるやつが立つ。あいつが検察官か?まともな人であれ。頼むぞ──────
「えーでは極悪人の罪状を報告します」
───ダメそうだな。てか待て極悪人?あれあんなに重い罪なの?
嫌な予感が・・・
「極悪人の罪状は殺人、強盗、国王殺害予告、爆破予告など、あと何やかんやあります」
おい、そこをぼやかすな!てか何!?知らねぇ罪がぷよぷよみたいに積み上がっているんだけど!
殺人は・・・まぁ言い逃れできんがそれ以外はしていないぞ!
「被告人、弁明はありますか?」
裁判官が聞いてくる。そりゃあるさ。言われもない罪をポンポン言ってきやがって!
「全て冤罪です!私はそんな事をやっていません。あの検察官のデタラメです!!」
─────そう言った時、検察官が机を強く叩く。短気はどうかと思うがね。
だがこちらにはやっていないという自覚がある。
それを強く掲げ己を信じなければ!
「裁判官見ましたか!?この女は全く反省をしていません。ぶっちゃけ死刑を要求します!!」
ぶっちゃけ!?死刑の前に付けていい言葉じゃないよ!?
ちょちょ!裁判官もなんか言って──────
「ぶっちゃけ俺もそう思う!」
おい!!ふざけんな!なんで証拠も無いのに死刑にさせられようとしているんだ俺は。認めんぞ!精神論で判決が出てたまるか!
「ぶっちゃけ、今日娘の誕生日だから早く帰りたい裁判官です!」
それはごめん!!だが頼む真面目にやってくれ!娘の誕生日が俺の命日になる!!
────その時大きな声が俺の耳をこだまする。女性の声。こんな時に俺を庇うやつなんて一人しかいない。
来てくれると思ったぜカウノ!!
「その判決には反対だべ!あっ違う、反対です!!あなた達、もしもここでクスノキさんを殺したら一生後悔します!この人はエレシュキガルを救える最後の希望なんです!!」
──────そうだよく言ったよ!これで裁判官も!
「えーでは極悪人の判決、死刑!閉廷!」
無視した!!!
流石のカウノもこれにはキレる───────
「無視するなー!!このクスノキさんは!ゾンビパーティーから抜け出した唯一の人間なんだぁ!!!」
その言葉にあたりは静寂する。少しの希望を見せた人間が次どういう行動を起こすかわかるか?それは───────
「ふざけんな!デタラメを言うな!!」
「カウノ!お前のそいつの親近か!?庇ってんだろ!お前も牢屋に入れ!!」
────暴動が起きた。裁判官の静粛に!も木槌の音も聞こえない。怒声でかき消されている。
やっぱりな。エレシュキガルの国民は見た目は明るく振舞っているが内心はもうガタガタなんだ。だからこんなちっちゃな希望で過剰に反応してしまう。
不味いな。今はまだ声だけの暴力だがいつカウノに襲いかかってもおかしく無い。
そういえばなぜこの国の人間はこんなにも罪に厳しいんだ?てか厳しすぎる気がする。たったひとつの間違いで死刑にさせられるなんて。
何故そこまで過剰になる?
「ウ・・ウ!」
さっきから俺の後ろで悶えているやつがいるな。失恋でもしたか?
ん?カウノがこっちに来た。
「クスノキさん逃げよう!このままじゃ……どこ見てるの?あの人?えっまって!あの人!みんな逃げて!その人【ゾンビ化】する!!」
カウノが見ていたのは俺と同じ悶えている男。瞬く間に肌の色が黒に変色して頭に傷ができる。
なるほどね。ゾンビに人が襲われ続ける理由はゾンビが外ではなく中で生まれるからか。では俺が外で会ったあれは?
「きゃあー!ゾンビよ!!」
「罪を償わなかったのか!馬鹿な事を!」
罪?償う?何を言っている?病気とかじゃ無いのか?
とりあえずカウノに確認しよう。したいことは1つ
「カウノさん。あれはゾンビですね?ゾンビを人間に戻す方法は?」
「……無いんだそれが。種族が変わっているから正気を戻したとしてもすぐに気が狂っちゃう。神でも不可能だと思う。私達が何したって言うの!」
────そう、なら遠慮は要らないか。フォールアウトも不要だ。何故ならゾンビは攻撃してこないからだ。
俺が出来ることは彼を楽にしてあげることだけ。
ゆっくりと俺はゾンビに近づく。あぶない!の声も聞こえるが、何も見えてないんだな。ゾンビが抗っていることに。
「何か最後にありますか?」
俺が聞く。聞かなきゃいけなかった。ゾンビは首を振る。ただ一言”頼む”と言って目を閉じる。
さよならだ。痛みは無い、一瞬で終わらせる。
「浄化」
俺が光を当てるとゾンビは泡のように消えていった。最後に”ありがとう”と聞こえた気がした。感謝されるような事じゃない。人を殺しているんだから。
ゾンビが消えた後、辺りはまた静寂に包まれる。誰も出来ないと思っていたことをやったのだから。皆、口から出す言葉を悩んでいた。
「少し待って欲しい。遠くから見ていたが面白い技を見せてもらった」
その声がする方を見る。そこに居たのは一人の男。誰だあいつ。
「カウノさん。あの男は一体……カウノさん?」
「な、何故?なぜあのお方がこんな場所に?」
カウノが口を開けて固まっている。どうやら大物のようだ。その男は俺の目の前に来て手を差し伸べる。
「やぁ、初めましてかな?俺の名は大空 新このエレシュキガルの国王だ。よろしくね」
名前……口調。どう考えてもあれだ。だがそれをする前に1つ。言っておくか──────
「どうも、クッキーです。よろしくお願いします」
こうして俺の運命は死刑からまた変わるのだった。
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そういえば日本人だしてなかったな、と思った今日この頃。
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