ぞ!ゾンビだァ!!
腐都乖離編スタートです
これは自論だが、お化けというか恐怖はそれ自身よりも環境と意味が重要だと俺は思う。
考えても見てほしい。例えばお化けが出るのが墓場などの薄暗い場所ではなく、太陽サンサンのビーチに出たら怖くないだろう?
そして、もしもお化けが人を脅かすのではなく、見つけたらお金が貰える存在だとしても、みな恐怖は感じない、むしろ乱獲が起こる可能性もある。
つまり、お化けはその存在自体が恐ろしいのでは無く、場所とやる事が恐ろしいのだ。
……長々と話したが、要は今俺がいる場所もそういう事だ。元来俺はお化けを信じていない。むしろ会ってみたい程だ。
「どこに住んでいるんですか?賃貸ですか?」とか
「やっぱりトイレとかするんですか?」とか
そういう事を聞いてみたい。まぁこう言う思考の奴らがホラー映画で一番最初に襲われるんだがね。
「ごくん。いきなり墓場になりました。凄いです────」
それが最初の俺の思考。まぁこうなるわなって感じよ。ん?さっきから説明口調だなって?そりゃそうさ。だってこの時の俺は・・・
「────なにかのイベントですか!?劇団でもいるのでしょうか!!」
はい、全く気づいていませんでした。これがトラップという事も、俺がターゲットにされている事も全くと言って良い程鈍い思考の持ち主でした。
はぁ、説明してて恥ずかしいよ。カットできない?そう、出来ないのならサッと進もう。
まぁ、その後俺は興味津々で墓場の中に歩いていった。1番やっちゃいけない行動だよ。
やってるの自分なんだけどね。
「気合いの入ったステージですね。席はどこでしょうか?」
なぁ俺よ、もう喋んないでくれないか?弁明させて貰えるなら俺はこの世界にお化けがいるなんて思っていなかった。異世界にそんな文化があるとは、と。
まぁ、その文化が無かったら劇団もないだろと言われれば俺は無言でそいつに剣を振るうだけだ。
少し歩くと墓地が見えてくる。薄暗い場所から本格的に危うい場所に早変わりだ。俺はって?言わせないでくれ。
「うぉ!またステージが変わったー!!!」
気付いていないよ!!そして後に知るがエレシュキガルではゾンビが居るらしい。ここで襲われたのもそれだった。
地面からボコっと頭が出てくる。数も1や2じゃない。10?20?いやそれ以上に出てきた。
顔にはツギハギの痕が無数にある。目がないやつや頭皮が剥がれたやつもあるが、正しくその姿はみんな知ってるゾンビだった。
「ヴォエエエ!!」
その声がして初めて俺も気づいた。もっと早く気づきなさいよ。まぁ結果を知っている俺が言うからここでは気づかないんだがね。
「ぞ!ゾンビだァ!!」
わざとらしい演技を辞めてくれない?この時の自分は見ている人も参加する劇だと思って迫真の演技で盛り上げようとしていた。
・・・傍から見るとこんなに酷いんだな。俺って。
────っと、話が逸れてしまった。先程このゾンビはみんなが知っていると言ったが、一つだけ違うところがある。それが───────
「おまええ!食うぞー!!」
はい喋ります。しかも普通に。かすれた声じゃなく普通に。見た目からも死者に似合わない、若い声で喋る。
「喋るんですね」(まぁ時代はグローバルですから、とても良い精神です)
俺の思考はこれ。簡単に言うと全くビビってない。そりゃそうだこれ見世物だと思っているだもん。てかそろそろ気づかない?襲われるんだよ君?
ゾンビさんに怒られるよ?
「いや!ビビれよ!お前を食うんだぞ!土に埋めるぞ!」
ほらー
「土に埋める?ゾンビだけに!!上手いですね!」
「うるせぇ!!てめぇら!やっちまうぞ!」
すいません、ゾンビさん。俺が本当にすいません。ということで戦闘開始です。
数はゾンビが60VS俺1人って感じかな?可哀想だよ。俺じゃなくてゾンビが。何とか勝ってくれませんか?
「さぁいきますよ!!一閃!!」
剣から光を放って俺は攻撃する。まぁ当たり前だがゾンビ達はほとんど吹き飛んだ。残っていたやつも少し冷や汗をかいている。なんで死体なのにかいているんだ?
「さすがゾンビですね。切っても死なないと」
俺の攻撃が効いていない、傷が治り起き上がっていく。これを見た他のゾンビもまた笑顔が戻っていた。
悲しい事は俺の攻撃はまだ終わっていないということだ。
そう、俺はまだあれがある。
1人のゾンビが我先にとこちらに走ってきた。
「剣が効かないのなら!浄化!!」
俺は手を振って掌から光をだす。相変わらずよく分からない原理だがさて、効果は──────
「いただきまー!ギャァァァア!!! 」
効果抜群でした。ゾンビは最後に暖かい顔して成仏した。
念の為俺は他の一体にも浄化を当てる。
「ギャァァァア!!!」
そう言って消えた。ゾンビ映画でもあるが、無敵と思われたゾンビに有効打がある一撃がわかると人はどうなる?
そう──────
「まてぇ!!!」
「逃げろー!!」
俺が浄化をゾンビに当てて消していき、走れないゾンビは歩いて逃げていく。地獄絵図だ。
「待て!待て!待て!」
「助けてぇ!!!」
俺って勇者だよね?あんな、愉悦の顔をしてゾンビを空へ送るのが勇者?
これもうどっちが悪か分からないよ。傍から見たら俺が悪者だよ。なんでこんなにも心が痛いのだろうか?
「たす!ギャァァァア!!!」
最後のゾンビが消えた。すると景色は元の平原に戻る。先程まで俺が座っていた丸太もちゃんとある。もう1回飯を食べようかと思っていた時──────
「あ、あんた、今あそこから出できたべ?」
出てきたのは桑を持った青髪の女の子。何処からなのか、服からなのか分からないがちょっと田舎臭い。
農作業の服を付けているからなのか?農家なのかな?
いきなりその少女は、俺の手を掴む。
「お前さんすげぇな!!あそこから出てきたヤツなんて初めて見たべ!!名前は!あっすまねぇ、私ったらまたあの口調に。
ごめんなさい!私の名はカウノ!よろしくね!貴方は!?」
「・・・クスノキです、あの手が痛いので離してくれるとありがたいのですが?」
それを聞いたカウノは顔を赤らめる。この子見た目は痩せているが力がマジで強い。アリスぐらいあるんじゃない?
「す!すいません!クスノキさん!私昔から力が強くて力加減が分からないんです!折れてませんか?大丈夫ですか?」
俺は大丈夫と伝える。カウノはほっとした表情で息を落ち着かせる。
カウノに何をしていたの?聞かれたのでエレシュキガルに行くと伝えると。
「エレシュキガルに行くの!?私もあの国に住んでいるだ。一緒に来なよ!作業用の馬車があるから乗りな!乗りな!
やっと来てくれたべ!あのゾンビ共に対抗出来るこの国の希望がついに来てくれたべ!大ニュースだべ!」
あー、思えばここだったな。俺がずっと勘違いしていたことを一刀両断されたのは。
案内された馬車は意外と乗り心地が良かった。乗り物酔いは物件問題だっらしく、引越ししたら解決していた。
馬車を運転している、カウノは少し戸惑っていた。
「劇団?何言ってるの?あのゾンビは本物よ。この国はずっとあのゾンビに襲われてるの。ありがとね、貴方みたいに強い人は大歓迎だよ・・・クスノキさん、さっきから黙っているけど大丈夫?」
俺は馬車の中。カウノは運転なので必然的に両者共に相手の顔は見れない。それが功を奏したのだ。
その時の俺はと言うと──────
「大丈夫…です。そ…そうですよ。げ…劇団なわけ無いですよね。あ…あはは、何言っているのでしょうか?私は」
顔真っ赤で俯いていた。あの空間は周りと隔離されるらしいからあのはしゃぎようを他の人は見ていない。傷は自分の中だけで治まった。
───その後もカウノは俺に色んな話をしてくれた。この国の現状なども。
「さっきも言ったけどこの国はゾンビに襲われているんだ。何をやっても死なないんだから、生きている人は死んじゃうのにね。
私の家族も私を庇ってみんな食べられちゃった。農作業も私しかやる人がいないんだ。野菜を売ってあの国で生活してるよ」
自分の時もそうだった。あの時浄化があったから何とかなったものの、普通の人がゾンビを見たら心が折れてしまうかもしれない。
生続の呪いを持っているのは転生者のみ。つまり他のここで生まれた人は死んだらもう帰ってこない。
どうして彼女は───────
「カウノさん、なぜあなたは逃げないんですか?」
「逃げる?確かにゾンビは怖いよ。でもさ、この国は私が生まれて育った国なんだ。捨てたくないんだよ。この国を出ていった人もいたけど皆自分の意思じゃないって信じてる。ゾンビがいなくなったら帰ってきてくれるって信じる!」
少しだけカウノの後ろ姿がユーロと重なったのは気の所為だろうか?あの子も国を愛していた。たとえ捨てられようと何をされようと。
いつか自分も国を作ったらこうやって愛してくれる人が来るのだろうか?
「あっ!クスノキさん!見えたよ!あれが腐都エレシュキガル!ようこそ!死と生が混ざり合う唯一の国へ!」
馬車の中から国が見える。その大きな城門に小さな馬車が入る。まるでクジラに吸い込まれる小魚のように。
読んでいただき本当にありがとうございます!
ゾンビって数は1人なのか?それとも一体なのか?
星を増やしてくれるとありがたいです。
面白かったと思ったらブックマーク!
感想やレビューもお待ちしております!
星ももちろん大歓迎!
具体的には☆☆☆☆☆を★★★★★にね。
そうするとロリのやる気が上がります。