ギャラクシーワン
さぁ、逆転開始だ。そうユーロから聞こえた気がした。
ここから行けるのだろうか?そんな疑問が消し飛ぶような青白い発光体。ユーロがついに力を解放したのだ。
「立てよ、アリス。それともここで終わり?」
「んなわけねぇだろ。今の若者は礼儀がなってないねぇ」
依然アリスの頬にはユーロの拳の傷が残っている。治療しても痣が消えなかった。
(頬から伝わるこの力。サタンか。ここで死んだか、よくやったよ。これじゃあ誰も【違和感】を覚えない。臆病者め、使命から逃げたか!)
ユーロとアリスはもう一度拳をぶつける。その力を見てアリスは確信した。やはり勇者は消えたということを。
「サタンを食ったか!王女め!見た目に沿わず大食いだな!勇者の肉は美味かったか!?」
「お前なんかが!サタンの名前を語るな!!ここでお前を殺す私が!……いや、私達が!」
アリスの上から剣が落ちる。アリスは体を回転させて避けた。この固有反転の中にいるのは3人。誰なのか言うまでもない。
アリスが舌打ちをする。
「今度はお前か。テンプレというものを知らんのか?勇者と魔王は1VS1というものが相場だろう?」
剣を落としたのは俺。
「知りませんよ。逆転の兆しが見えたのならそれに縋るのが人間です。血だらけでも前は見えるんですよ」
正直俺は寝ていたかった。これでユーロが勝てるのなら何もせずここから解放されたかった。
だがそれじゃダメだ。また俺は逃げる。それを俺が許さなかった。許しちゃいけなかった。
「ごめんクスっち、張り切ってるところ悪いけど今の私でもアリスを殺すのは無理」
お疲れ様でしたー。
「いやいや、最後まで聞いて。少し時間を稼げる?あいつを殺すことは無理でも一泡吹かせることぐらいは出来る。
そ、そんでさ。もしここから出られたら2人でお出かけでも、、」
ユーロの顔が真っ赤になっている。なんだ?もう準備に取り掛かったのか?こちらの返答もまだなのに。
まぁ俺としては
「時間を稼げばいいんですね?ユーロ、分かりました。あと出かけるのなら名物が食べたいです」
「任せて!」と言ってユーロは力を貯めだした。今からかい。さっきの顔が赤いのはなんだったんだか。
まぁだいたい察しはつくがね。言わないのが男というものだ。今は女だけども。
さぁ始めようか、最終ラウンドだ!!
「調子に乗るな!!小娘共が!!」
「乗っているのは貴方でしょうが!!」
アリスと俺の拳がぶつかる。グッ!やっぱり勝てねぇか!拳が弾かれた!俺とアリスじゃ体の作りが違う。モデルガンで戦車倒せって言っているようなものだ!
ユーロに賭けるしかない!頑張れユーロ!
その時ユーロは────
「何これ」
───ユーロがみていたのはサタンの魔力。白い光。見ていると普通だが触ってみるとわかる。何千?何万という魔力が折り重なって綺麗な白を作っている。
これだけの魔力を作るのにどれだけの努力が必要なのだろうか?考えただけでも気が遠くなる。それほどの偉業であり異常であった。
それでもユーロは諦めない。この空間から出るため、妹に会うために。
「絶対物にしてやる。たどり着いてやる、私の根源に」
ユーロは天才だった。本人は自覚していなだろうが、一人の人間が絶え間ない努力をして得る固有魔法を数時間で習得まであと一歩の所に来ている。
決着は近い。
「アリス!!!!」
「小娘!!」
・・・まだか?まだなのか!?ユーロ、もう限界が近い。互角だったのほんの10秒ぐらい、またボコボコにされてる!いった!顔面殴るんじゃないよ!
このままじゃ──────
「準備は整った」
───その時、時間の隙間にに青白い光が溢れる。邪なる力と聖なる力が合わさり、全てがひとつとなる。
俺はユーロの傍に行く。最後の仕上げだ。
「クスッチ、手を繋いで、君の魔力で最後のピースだ」
「はい」
俺は手を繋ぐ、ユーロに俺の魔力、俺にユーロの魔力が入り込んでくる。なんだこれ、これが人の魔力なのか?まるで音楽のような、オーケストラのように色々な魔力が混じっている。
喜怒哀楽だけじゃない。この世界の始まりから終わりまでを凝縮したような。
「ほう」
アリスはその場に止まる。ユーロは警戒するが。
「安心しろ。脆い鳥が大空へ飛び立とうと言うのだ。見守るのが神の役目。この領域を破壊できるのならやってみろ。俺に可能性を見せてみろ!!」
その声にユーロの手にさらに力が入る。
始まるのだ、世界の始まりから終わりまで全てを見守る神の鉄槌が。
「行くよ!クスっち!」
「ええ!ユーロ!!!」
2人の力を解放する。呼ぶのだ。2人でしか出来なかった。凡人と天才の固有魔法を─────
──────固有魔法!全ての1
その時、その領域に星の光が満ちる。先程まで青1色だった世界が光に包まれ破壊される。
「ははは!!見事だ!!見事だとも!!」
アリスは笑っている。最後まで笑っていた。
星の光は留まることを知らず、アリスの領域を満たしても膨らみ続ける。そして破裂したのだ。
俺とユーロは領域からはじき出され近くの平原に吹き飛ばされた。
「ぐえ!」
「がは!」
正直ユーロも俺も動けない。だが、動けるやつが1人。
「良いものを見せてもらった。こちらの番かな?」
アリスはあれを受けても平然としていた。俺らに近づく。足を一歩づつ出してこちらに歩いてくる。
─────はずだった。
「なんの真似だ?」
アリスをさえぎったのは横にいた謎の女。あと少しであの女の事思い出せそうなのに、あと少しでノイズが走る。
「時間。これ以上は待てない。撤退だよ」
アリスが時間を確認する。そして笑う。
「お前らは悪運に愛されているな?いやこれが天運という物か?どうにもかくにも、運命の女神はお前たちを死なせたくないらしい。さらばだ。また会おう」
アリスの後ろに大きな扉が現れる。逃げるつもりだ。逃がすものか。足!動け!動け!
「やめておけ。その足では満足に動かん、ひろった命、無駄にするな」
だとしても!お前をここで逃がすわけが!!
その意思ひとつで俺は何とか立ち上がる。そしてアリスに向かって突進する時、後ろから誰かに掴まれる。
「お前は、本当に運がいいな。それ以上来れば殺していたよ。お前の後ろのやつは死んで欲しく無いらしいな」
俺が後ろを振り向くと涙目のユーロが俺を掴んでいた。逃がさないように腹を両手で挟んで。
「離してください!ユーロ!このままだと逃げてしまいます!!」
「ごめんね、ごめんね。クスッチ、確かに私も逃げられるのは悔しい。でもね!これ以上誰かに死んで欲しくないの!お願い耐えて!!」
アリスが目の前からいなくなっていく。待て!待て!待て!!!!
…俺の声も待たずアリスはそこから影も形も無くなり消えてしまった。
雨はやんでいたが、俺達ふたりの心はまだ雨が降っていた。
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