ヒーローは遅れてやってくる
あらすじ ユーロは立ちあがる
ほんの一瞬声がした。
「なんであなたはいつもそうなの?」と。
「お前なんかいなくなれ」と。
誰かからの声が分からない。けど指さしている相手は分かる。きっと俺だ。
夢というのは残酷だ。人に情景を見せて自分は何もしていないかのように消えてしまうのだから。
きっと次俺が夢を見る時は─────
「おーい、生きてるかー?」
俺は目を開ける。どうやら眠っていたらしい。そりゃそうだこの怪我だもん。
両手を見れば血だらけだ。絵の具のようなちょっと黒みがかった血がついている。
口の中も血の味しかしない。まぁ簡単に言うと満身創痍と言うやつだ。
「お!剣持ったね。さぁ続きを─────」
アリスが俺を待っている。なぜ俺は剣を持つ?なんで俺はここで戦っているんだ?
だって俺は本来この世界に居ない人間だ。逃げたっていいはずだ。なのになんでこの体は前に進むんだろうか。
なぜ自分は──────
「────いいね。クスノキ、俺を殺そうとする目だ」
─────こいつにこんなにも怒りを感じているのだろうか?誰が悪い訳でもない。滅亡なんて一人の人間に背負わす失敗じゃない。
そんな事は分かっている。だがそれでも1発こいつをぶん殴りたかった。
「いい顔面パンチだね」
見たか?俺が顔面パンチしたのに傷一つついていない。それどころか腹を蹴られて吹き飛ばされた。
それがこの結界の能力なのかは定かでは無い。今わかることはひとつ。
ごめん、みんな負けた。
「腹蹴り1発でダウンですか────」
アリスがため息をついている。俺を見ている目は落胆の仕方ないかという目。
「────まぁそっかそうだよね。いや持った方じゃない?少しは期待したんだがね。もう手はない?」
無いよ。しかも蹴りの影響で声が出せない。器官が詰まったかな?
あーもうダメだ。終わりだよ。
「終わりだな。じゃあね。さようなら俺に届くかもしれなかった雑魚」
アリスの攻撃だ。こんなボロボロなやつに攻撃するかね?普通。つまらない人生でした。
あぁ、それでも──────
「────死ぬのは寂しいですね」
今心の底から死にたくないと思った。思ってしまった。
ヒーローは遅れてやってくる。肝心な時にしか役に立たない。ヒロインがもうダメだと思った時、間に合うのが”お約束”なのだ。
「間に合った、助けに来たよ!クスッチ!」
俺の目の前にユーロがいた。うん、ユーロだ。何で?何でいるの?えっほんとに?何で?
アリスの拳を片手で受け止めてるし、なんか雰囲気が変わった?
アリスは少し下がりまたため息をした。
「はぁ、よく分からんガキの次は元王女か。いい加減にしろ。ここは公衆トイレじゃない。
入ったことは知ってたから昔の記憶を見せて心をおってやろうと思ったがね。
さっさと消えろ。力不足で辞退した選手が戦いに足を踏み入れるな。それは侮辱だぞ?」
ユーロはそれを聞いても何も思わない。ただ仕方ないと思う。だが反論したい気分なので反論する。
「魔王アリス、貴方は昔からそうなんですね。同格のサタンには力を使わず弱き者に力を使う。
それをなんて言うか知ってますか?今言ってあげましょう。魔王アリスあなたがやっている事はただの子供のいじめ。ただの本当にしょうもない外道です」
本当にこいつはユーロか?言い方がマジできついんだけど。なんか変なものでも食べた?
「クスノキ、貴方もです」
俺も?ユーロに初めて名前を言われたけども。
「なんですか?その体たらくは、助けると言って?私に助けに来させて?恥ずかしくないんですか?
貴方も1人で戦うべきではなかった。今こうなっているのならそれはただの子供の強がりです」
……これ俺が怒られてる?嘘でしょ?何で?
「おい!話は終わったか?ユーロだったか?何度も言わせるな!ここから────」
その瞬間ユーロの拳がアリスの顔面をぶん殴る。アリスの顔面は凹みそのまま遥か先に吹き飛んだ。
え?今の現実?俺が歯も立たなかったアリスに拳を入れた?吹っ飛ばした?
「魔王アリスよ。これからすることは八つ当たりです。家族の愛に気づけなかった自分への怒り。自分に与えるのは可哀想なので貴方にぶつけます。文句無いですよね?」
「あぁ、文句無いさ。すぐに口を閉ざして見せよう。お前の首を持って妹に見せてやるよ」
……なんか俺の目の前ですげぇ戦いが始まろうとしていた。
読んでいただき本当にありがとうございます!
国盗り編は残り3話です。新章はやるかな?感想があればやるかもしれん。
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