固有魔法のその先
あらすじ 特になし
いやーまずいね。あの時ユーロに啖呵切ってアリスと戦ったけどさ、援護も何も無いの?意外と皆は俺の生死にそんなに関心がないのだろうか?
「君、意外と強いね?」
・・・アリスがなんか言ってる。そう言うのなら俺の刀を片手で受け止めないで欲しい。
「・・・刀を片手で受け止めて何を言っているんですか?」
「いや?僕が受け止めている。それだけでも誇る価値があるよ」
こいつ人を舐めすぎだろ。自分を絶対上位者だと思ってやがる。
まぁ魔王を名乗っているんだからその位やってくれないと苦戦している俺も恥ずかしいんだがね。
ただ、その魔王にしてはなんか頑張って────
「頑張って戦えてるなって思ってる?そう思ってるなら少し旅に出ようか!顔面にパンチ!」
アリスの拳が俺の顔面に当たる。俺はそれだけで大きく遠い山まで吹き飛んだ。
・・・マジで言ってる?たった1発で頭グワングワンなんだけど。
ただ!何もせず吹き飛ばされる俺じゃない!
その時アリスは立っていた。
「やられたね。あいつ俺が顔面を殴る時にカウンターで腹をぶん殴ってきやがった」
(嘘だろ?たった1発のカウンターだぞ?肋骨結構いったな。これはもしかするともしかするか?)
何かアリスが棒立ちしている。これはチャンスか?
シロを殺されて恨みはあるが俺の顔は笑っている。
あぁそう言うこと。俺はもう壊れているのか。
であれば”もう壊れることは無い”
「八つ当たりですが勘弁して下さい」
「いいよ、楽しめそうだ」
俺とアリスの第2ラウンドが始まる。
俺は挨拶がわりに投石をする。まぁこれを石と言っていいのか分からないがね。
「おい!デカすぎだろ」
なんか説明不要!って言葉がつきそうだけどなんか俺の調子が上がっている。簡単に言うとハイになっている。
頭の中にアドレナリンが溢れる。
ドーパミンが溢れて笑いが止まらない。少しだかいい気分だ。
「──お前固有魔法も使わないでこれなのか?」
・・・いつの間にかテレポートしている。山で潰れればよかったのに。
「私は固有魔法使えないので」
「んなわけないだろ?固有魔法が使えないやつなんて居ない。固有魔法はその者の人生だ。
使えないということはそいつには人生が無いということ。お前も持っているはずだ。自覚はないだろうがね」
そんなこと言っても使えないんだから仕方ないじゃん。転生者だからか?いや?そんな訳は
「───見本を見せてやるよ。この国にもアイリーンとかいう固有魔法でイキってた奴がいたな。
俺から言わせれば笑止千万。固有魔法は自己の成長を止めた時点でそこが限界になる。あいつが自分の固有魔法を誇りに思い、最強だと思った瞬間に固有魔法はただの魔法になり落ちた。
・・・その点ナイフとか言うやつはまだ見所があったな。あいつは成長を止めていない。固有魔法があんな雑魚なのも”本質”を理解していないからだろう。
拝ましてやろう。固有魔法のその先へ。幾千の命が散っていくこの世界での絶対的な力を」
いつの間にかあたりは静寂に包まれている。
アリスは手を上にかざし1回指を鳴らす。
「─────固有反転」
”さぁ破壊を始めよう”そうアリスは言って俺とアリスを巻き込んで周りが何かに覆われる。
巻き込んだ材質は【水】
それは球体となり2人を閉じ込める。
「まずいな」
遠くから見ていたサタン。
もしクスノキが死んだ時はその魔力を使って討伐しようとしていた。
「何がやばいの?」
本体のユーロも聞く。
「・・・俺も知識でしか知らない。あれを使えるやつがいるとはな。
あれの名は固有反転。固有魔法を使い続けその境地に至った物。心の中の残影を現実と文字通り反転させるんだ。つまりあの球体はアリスの心とも言える。
あそこまで来たらもう魔法なんて物ではない。あの中は理不尽で溢れている」
「じゃあクスッチは?」
その問いにサタンは正直に言うしか無かった。
「もって10分じゃないか?俺も助けに行きたいが、アリスが俺対策をしていないわけが無い。行ったところで弾かれるのがオチだな」
「つまり何も出来ないってこと?クスッチが殺された後死体を見るまでここでじっとしてろって事?」
「・・・」
そのユーロの問いにサタンは何も答えなかった。それが真実だろう。
クスノキの死は確定した。それは誰にも覆すことは出来ず、ただ見ているしか出来なかった。
(───って、昔の自分なら言うんだろうな。)
ユーロは覚悟を決める。もうあの時の自分じゃない。ナイフは無理だ。マクリールの治療をして貰っている。
サタンは入れない。動ける奴なんて一人しかいなかった。
「サタン、体変わって」
「・・・死にに行くようなものだぞ?」
だとしてもだ。だとしても、それでもあの理不尽に立ち向かう勇気が体から湧いてくる。
”ここで止まるな”と心の中の自分が背中を押してくる。
”まだ諦めるな”と正しさのその先が吠えている。
───まだ自分の答えは出ていない。それでも誰かを助けるのに理由なんていらない。それだけは分かる。
小さくて頼もしい幼女に教えてもらったから。
「───うん。私は行くよサタン。
私がクスッチを助けに行く!!!!」
震える足を止める。涙が出そうな目を開けさせる。
大きく自分に頑張れ!と鼓舞をする。
「よし!行ってきます!!」
────そう言って一国の元王女は球体に向かって走っていった。
読んでいただき本当にありがとうございます!
書いてて心の中で無意識にユーロ頑張れと願っていた。
これが作品愛というものなのだろうか?
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