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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
第2章 国盗り編
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魔王再臨

悪役らしい悪役って素晴らしいよね。


スプラッタ王国は今日も窓を閉じる。閉めたところで何も無いが閉めずにはいられなかった。

人それぞれ家の窓を閉めるのは理由がある。

虫が入ってこないためや、子供の泣き声が煩いからとか色々だ。

だがこの国のみだろう【死にたくない】から窓を閉めるのは。

閉めれば安全という訳では無い。だが、少しでも生きれるのなら閉めたい。例え家の前で殺される人間がいても、助けを求める声がしても、布団の中にこもり、鳴き声を晒して生き足掻くのだ。



───その国を1人走る人間がいた。昔のうちに忘れられた存在で、生きていては邪魔な存在だった。

雨が降っている。パシャパシャと足音を鳴らし、靴を濡らしながら王宮を目指す一人の女。


「はぁ、はぁ、、」



息が上がる。元々操られクスノキに殴られた場所もまだ傷んでいる。雨で目が濡れていなければ泣いていることがわかってしまうぐらい、体は限界だった。

もう休みたい。そう思っても足が許さない。体が許さない。前へ前へ進んでいく。

もう自分に諦めるという選択肢など存在していなかった。



「俺達は、ここから別行動です!ご武運を!」



今別れたのはナイフの部下達。元々未来日記に死ぬ未来が無いので、わざわざ来なくても良かったのに付いてきた。


地下から街にあがり、騎士たちを誘導しながらこの国から去る。


それがナイフが率いる部下の最後の仕事だった。もう彼女の傍には誰もいない。誰も助けてくれない。

さっき地下で大きい揺れが起きた。

きっと貯水槽が爆発したんだろう。ここからでも水の音が聞こえる。それが誰の仕業かまでは分からなかった。



彼女は足を止める。王宮の目の前で、場所を確認していた訳では無い。

【何も変わっていない】事実を見て感傷に浸らざるをえなかった。

自分がこんなにも変わった。そりゃあ国であれば変わるのに時間はかかるだろうが何も変わっていない。

王家を象徴する白い壁も、中央の金色のエンブレムも何一つ変わっていなかった。



「もういいや、王宮に入ろう。

待っててマクリ───」



そう言いかけた時、王宮に何かが現れた。何かと言われると何も言えない。

ただそこに何かがいる、それだけが確信的に分かるだけだった。



場所は変わり、王宮の最上階



「われをこの世に再臨・・・もういいやこの話し方めんどくさいな。

あーうん、良くやってくれたよ。こういう時はご苦労様と言うべきかな?」



侯隆はついにこの世に再臨した。魔王の誕生だ。それだけでもこの国が全世界から狙われるがマクリールには契約がある。



「そ!そのような言葉必要ありません!私は、その契約さえ護ってくだされば、何も」




「・・・契約?あぁ、随分と面白い契約を出してたもんね」




その言葉に少しマクリールの顔に汗が出る。人間は嫌な予感ほど当たるものだ。



「・・・面白いですか?」




「だってそうじゃんwスプラッタ王国を守って欲しいなんてさ、国だけを守れってことでしょ?中にいる人間はどうでもいいと?」




少しだけマクリールの頭が白くなる。唐突な事を言われたからではなく、自分が今まで勘違いをしていたことにだ。



(そんな子供みたいなことを?いや、いや!違う!この男!最初から────)





「やっと気づいたか?馬鹿が。俺は契約を守る気なんて一切ない。この国は滅ぶ。お前の姉も殺す。

安心しろ1人では天国に行かん。皆道ずれだ。

・・・あー、お前だけは俺を甦られせた事で地獄行きかもしれんがね」





「───最初から騙して?いや、貴方がそうなら姉を追放する必要もなかった!最初からこれを使えばよかっただけ!

何故!私にこんなことをさせたの!!!」



侯隆、、いや魔王アリスは少し考える。そうせざる状況だった。

人の行動には本来理由が必要だ。呼吸をするのも、足が前に進むのも全て生きるため。

だが、この世界には、居るのだ。それに入らないイレギュラーが。



「悪い!考えたけど浮かばねぇわ!正直理由は無い!暇だったからじゃ、ダメ?」




「─────。」





マクリールは絶句した。そりゃそうだ。今まで自分がしてきた悪事は全てこいつの暇つぶし。理由も無い、ただの愉悦の為に、彼女とその周辺の人生はすべで壊されたのだ。

それを聞いて何も出来ない王女では無い。直ぐに近くにあった王家の剣を────




「あぁ、やっと来たか。そいつ殺して」




ドスッ!とマクリールの体に痛みが走る。ゆっくりと下を見ると後ろから刀で体を貫かれていた。

その刀は直ぐに抜かれ、傷口から血が溢れ出す。マクリールは痛みで倒れるしか無かった。

前に倒れる。どちゃ、と音を立てて




「遅かったな。何をしていた?」





「それ貴方が聞く?この国の要人達を始末しろって言ったじゃん」




「あぁそういえば言ったな」と笑う魔王とため息をつく部下。仲良く雑談していた。

そんな中怒りで我を忘れそうなやつが1人蹲っていた。

彼女はもう何も無い。だからこそせめて道ずれにしてやると。

もうアイリーンとの念話は通じない。もう死んでしまったのだろう。それでも体を動かす。

魔王は彼女を取るに足らない雑魚と認識していた。

だから、気づかなかったのも仕方ない。ズルズルと重たい体を引きずる血だらけの女性に。



「許さない、良くも私を───」




壁まで行き、1つのボタンを押す。




【ジリリリ!!!】




ベルが鳴る。王宮の非常ベルだ。騎士が集まってくる。これでも一国の王女だ。それなりに忠誠を誓う騎士はいた。



「マクリール様!こ、これは一体!?貴様らか!」




騎士達が大きくドアを開ける。そうして始めてアリスは騎士を見て、そこからマクリールを見て状況を察する。




「お前、少しは頭が良いと思っていたのだがな。こんな雑兵を俺達に当てて相手になるとでも?」



マクリールは歯ぎしりをする。プライドが壊された。このままこいつらを見逃すわけが無い。せめて1人だけでも!そう思い叫ぶ



「我が最大の剣達よ!王女マクリールが命ずる!この2人を殺せぇぇぇ!!!!!!」




騎士達が雄叫びを上げて2人に向かって走る。側近の女性が剣を抜く─────




「いい」



─────その一言で、剣を収める。アリスは少し歩き彼女を御した。



「貴方が行くの?」




アリスは拳を構える。

もう片方の手で相手を挑発する。騎士はまんまと挑発に乗ってしまう。




「貴様!!舐めるな!!!!」




この時マクリールはひとつのミスを犯した。彼女は今、目の前に居るものを魔王と打ち明けるべきだった。そうすればこのような惨劇にはならなかったかもしれない。




「──さあて、食事前の準備運動にはなるかな?かかってこい雑魚共、1分耐えれたら・・・そうだな。まぁいいや」




場所は変わり王宮内部の廊下。




「はぁ、はぁ、マクリール!どこ!」




ユーロは王宮内を探す。彼女を止めるために単身で王宮内部に入る。クスノキもいるという甘い幻想に頼って足を進めた。


(どこ?どこにいるの?あなたを止めに来たの!

どこに───)




その時大きい衝撃が城を揺らす。上から下に大きくそして重くグラグラと城全体が揺れた。



「上!!!!」



ユーロはその震源に向かって走る。この王宮で1番の台風の目にいる彼女だからこそ、トラブルがあるところに彼女はいる。

そう思わせる、確信があった。


だからこそ、少し怖い。城を揺らした衝撃が上にあるということだ。自ら死に向かうほど愚かな行為もない。命とは生きる物だ。

震える手でドアに手を当てる。ドアノブを傾けドアを開ける。


ドアが開かなかった。いや正確には開くのだが扉が重く何かがドアの前に置いてあるような感覚だ。


「せーの!!!」



ユーロは腕だけではビクともしなかったので体全体を使ってドアを開ける。

ずずずと整備されていないかのような音を立てて扉が開かれた。




「嘘、でしょ」



ユーロが最初に聞いたのはこの言葉。間違いなくマクリールの声だった。それを聞いて急いで開ける。


「マクリ─────」



そう言おうとした瞬間、横から何かが倒れてきた。人形のような大きい物で、血が滴る、、、血?



「何、、これ」



ユーロは思わず声を上げる。

目の前にあるのは死体、死体、死体。鎧を着た死体の山だった。

理解はできても理解したくなかった。こんな事が出来るやつがこの国にいて欲しくなかった。


(こんな事、例えクスッチでも!!)



ユーロはそこで初めて理解する。ここに来ては行けなかったと。

そして、目の前の男がこれを行ったと。



────その男は手を拭いている。貴重な布を無駄に使い手を拭いている。


「以外と返り血って汚れるんだな」



ユーロはその男と目が合った訳では無い。ただ見ただけ、なのに震えが止まらなかった。

草食動物が肉食動物を見て動けなくなるように、ユーロは足を震わしてそこに居るしかなかった。


ユーロに気づいたのはアリスでも側近でもなくマクリールだった。

朧気な目で扉を見て、自分の視界を疑う。あんな衝撃を起こしたのにわざわざ来る馬鹿がいるはずが無いと自分でも自覚している。

だがユーロはそこに居た。



「お姉ちゃん!なんで来たの!!逃げて!こいつは遊びじゃない!!早く!!!」




──だがその叫びは悪手だった。その叫びでアリスは気づいてしまった。こいつの姉だと。そして知りたくなってしまった。



「よぉ、お前があいつの姉か。お前が死んだらあいつはどんな顔するんだろうな?」




「────え?」



ユーロが上を見る。その時にはアリスの手がもうすぐそこまで迫っていた。そしてそのまま下に叩きつけた。



「はい終わり!って、、ん?」




ユーロはそこにはいなかった。アリスとユーロの実力差は正直月とすっぽんだ。ユーロに勝てる見込みなど微塵もない。

だからこそ、この状況はアリスにも側近にもそしてマクリールにも予想外だった。



そしてそれはユーロにも予想外だった─────


「ちょ!何するの!サタン(・・・)!!」



あの一瞬でユーロとサタンは切り替わった。もちろんそれはユーロの策ではなく、サタンの独断だった。



「うるさい、俺と変わらなかったらお前は死んでいたぞ?それよりも奴はやばい。俺が殺る」



その言葉はいかにも相手を知っているような言葉だった。先程の回避も相手をよく知っているかのような最小限の回避だった。


「ねぇ、サタン。あいつの事知ってるの?」



「昔な、まさか生きていたのは。少し会話を辞めるぞ。やつが油断しているときが好機だ。ここで殺す」



アリスも少しだけフリーズした。そして、直ぐに動く。イレギュラーが現れたのだ。




「───おい、あいつはどこに」



アリスはそう言って痛みを初めて自覚する。体を見ると1本の切り傷が肩から腹にまで大きくついていた。

それを見て臨戦態勢に入る。自分に傷をつける奴がいたのだから。

少し気を張る。そして、その人物は以外にもすぐ後ろにいる。



「次は外さん」



サタンはアリスの後ろから切り込む。アリスは反応するが少し遅い。

サタンが即座に切り、後に残ったのは金属音だけだった。



(金属音?・・・!?──────────)



サタンの剣は折れていた。あの瞬間拳を当てて剣だけをおったのだ。サタンは気を引き締める。この男は間違いなく本物だと。



「俺は後ろからの攻撃に弱い。そう言われてたよ。

てめぇ、俺を知っているな?」



「さぁな、お前と話すことなどひとつもない!!」




サタンと魔王アリスの戦いが少しだけ始まった。


読んでいただき本当にありがとうございます!


国盗り編もクライマックス!!に近い!!まだもうちょい続きます!!



星を増やしてくれるとありがたいです。




面白かったと思ったらブックマーク!




感想やレビューもお待ちしております!




星ももちろん大歓迎!




具体的には☆☆☆☆☆を★★★★★にね。




そうするとロリのやる気が上がります。

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