泣いていい?
あらすじ 屋敷終わった。
朝の方が皆いいのかな?
例えば明日世界が終わるとしたらどうする?
そう例えば、例えばの話。
ん?どういう状況かじゃないと言えないと?
んー、じゃあ月が落ちてくるとしたら?
月は落ちてこない?はぁ、きみとは反りが合わないね。
「そんなこと言ってないで、仕事してくださいユーロ」
今話していたのはユーロとクスノキ。2人で留守番をしている。
国落としをするためにナイフとシロは部下を連れて調査に向かった。正直残った2人は暇らしい。
「ねぇ、クスッチてさ、変わってるよね」
「何処がですか?普通な気がしますよ?」
「(まぁ、普通だと思ってたのか!?)いや、4日後に死ぬって分かってるのにやけに落ち着いてるね」
「あぁ、そういう事ですか。まぁ、価値観の違いですね。ユーロ、貴方は【4日しかない】と思っている。
そして、私は【4日もある】と思っている。その差ですよ」
「そんなもん?」
「そんなもんです」
ユーロはもうひとつ悩んでいた。会話が続かない。ユーロ自身喋る方だが、クスノキはその会話のパスを最速最短で投げてくる。そして会話が終わるのだ。
つまり、必要なことしか話さない。その会話から生まれる余地などはキッパリと切り捨てている。
だが、それでもユーロは諦めない。負けず嫌いなのだから。どうしてもクスノキと、無駄話をしたい。
「ねぇ、クスッチ!」
「仕事してくださいって言いましたよね?」
「スイマセン」
あえなく撃沈!哀れユーロ!勇気を持って放った渾身の話題!それに届かず撃ち落とされた!
何をしている!ユーロ!会話を繋げるんだ!
ただクスノキも鬼じゃない。彼女の優しさが発動する!
「はぁ、全くなんですか?これで最後ですよ?仕事してください」
最後の話を聞くよ。という合図。実際クスノキはそこでの仕事が終わり、もう次の場所に行こうとしている。なので最後の会話のチャンス!ここでしかない!!
ユーロよ!さぁ話せ!渾身の会話を!
「今日、、天気、、いいね」
チキったァァァァ!!!なんとここでチキったァァ!!ビビりが出てしまった。
最後のチャンスを棒に振るってしまった!!
「????あぁ、そうですかね?森の中なので、空は見えませんが?」
「そうだね。いやそうじゃなくてね!いや、空は青いんだけど。そうじゃなくて」
「はぁ、、、?」
まずい!まずいぞ!ユーロ。クスノキは本気でお前のことを心配している。どうですか?解説のサタンさん!
「自分のコミ力を、過信した結果だな。当然だよ」
おっと!サタンさん!意外と辛辣です。まぁ、そういう事です。以上解説でした!!
さぁここからユーロはどうするのか!!
「君はさ、私の事をどう思ってる?」
「どうとは?」
「罪を償えとは思わないの?」
いきなりのユーロからの会話でクスノキも呆れ顔から真面目の顔になる。そう、ユーロはずっと胸の奥につっかえていた。自分のことを殺しかけた人物を生かす。
なぜ?と、どうみたって、誰が見たって危険因子だ。
殺処分した方がいい。それでも知りたかった。クスノキが自分を許した理由を。
「何を言い出すかと思えば、貴方は魔法使いが魔法で人を殺したとして、魔法に罪を償えと言いますか?
あの人達を殺したのは貴方ではない。それは貴方が1番分かっているはずでは?」
「それは、そうだけど」
クスノキの回答はユーロの望んでいたものと違った。急に恥ずかしくなりユーロがそこから逃げようとすると。
「はぁ、分かりましたよ。理由はただの気分です。確かに、貴方は人を殺しました。私はそれを許しません。
例え、どんなに極悪人だろうと、その人を裁く権利は人には無い。あるのは法という歪んだ鳥かごのようなもの。
それに、私もなんですよ。私もアップルを殺しました。忘れろとは言いません。覚えてろとも言いません。
ただ、前を見てください。例え、どんなに後ろを振り向こうとも彼らはもう居ません。死者をこの世に戻す方法なんて無いんです。
だからせめて今は笑いましょう。大丈夫です。私達が死んだら行くのは地獄。天国にいる彼らとは会いませんから。アップルはいるかもしれませんけどね」
ユーロの頭に風が吹く。少しづつ頭の苔が取れていく。昔から募らせていた悪癖が剥がれていく。
「笑っていいのかな?笑えるのかな?」
「誰がそれを咎めるんですか?貴方を批判する人はもうこの世には居ないんですから。
それにいつか言おうと思ってしましたけど、その愛想笑いやめてください。見てて苛立ちます。
強がりはやめなさい。私達は生きるしか無いんですから。泣くこともあるんです。今の貴方みたいに」
ユーロの目から無自覚に涙が流れている。手で拭いてもどんどん出てくる涙。決壊したダムのように止まることを知らなかった。
ユーロはずっと探していた。誰かに泣いていいよと言われる瞬間を。
王族の子じゃないと言われてから、はや何年たっだだろうか?
死霊魔術をかけられて追放させて何年経っただろうか?
あの時から目は汚れていたけど少しづつその泥が涙と共に流れ出ていく。
ユーロは初めて今日世界を見た。純白の光、緑が生える森。苔が生えた地面。笑い声がする人々。
いつ見てもゴミにしか見えなかった。ユーロの世界が遂に生まれ変わったのだ。
そして、認識する。ユーロの目の前にいる女性こそクスノキだと。
女性と言うには小さ過ぎるが、それでも自覚した。
少しづつ胸が高鳴っていく。顔が熱くなっていく。
(あぁ、そうか。これが─────)
──────恋か
「ユーロ?どうしました?いきなり固まって?」
「ううん!何でもない!だから大丈夫!!国落とし頑張ろうね!!そして沢山2人で笑おうよ!!」
「なんですか?それ」
クスノキとユーロ、2人ともクスッ、と笑ってから少し笑っている。
ユーロにも目的が出来た。彼女を守るという目的が。目的を持った人間は強い。子供を守る母親のように。ここからユーロの人生における第二歩目が始まった。
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