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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
第一章 なんやかんやあってロリになった日
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なんか嫌だよね

雨が降っている。この国では雨は珍しくない。むしろ雨が降っていることを誇っているのだ。

それは無論、死の森でも変わらず雨は降っている。

クスノキは少し歩きナイフの元に訪れた。ナイフの前には十字に木を貼り付けた簡素な物があった。



「頭。すんません、話す元気は無いですよ?」



「そうでしょうね。ですので私がひとりで話します。彼女の墓ですか?あなたの右腕のクレープさんの」



「やっぱり知っていたんですね。そこまで知っているのなら覚えておいてください。こいつの本当の名はフォークです。まぁ、その本当の名というのも、俺が決めたんですがね」




雨が降っている。2人の顔を濡らし顔を見えなくさせる。だがそれでも見えるのだ。

ナイフの目から涙が溢れているのが。

クスノキは少し聞いてみる。


「変な思いをさせたらごめんなさい。盗賊は仲間の死をそこまで重要視しないと思っていました」



「他の盗賊ならそうでしょう。ですが俺達は、、、いや、なんでもありません。結局は同じ穴の狢です。少し涙脆いだけの普通の盗賊ですよ。俺達も」




「そうですか。それにしては随分と優しいのですね。私ももっと彼女と話してみたかったです」




ナイフはそれを想像してフッと笑う。想像つかなかったのだ。2人の相性はきっと悪いだろうと笑ってしまった。

ナイフは横にあった酒を墓にかける。これは、労いではなく、覚悟の為。彼女の一番好きな酒をかけて決別の覚悟を決めた。

死んだ人間は戻ってこない。たとえ、死者蘇生で生き返ったとしてもそれは元の人間ではなく、別と言えるだろう。

だからナイフは覚悟を決めた。たとえ、彼女が生き返るとしても、その選択を選ばない為に。もう彼女を楽にしてあげようと、涙と一緒に洗い流した。



(あばよ。フォーク お前といた時間は悪くなかった。生まれ変わったらもっとマシな家に産まれろよ)



それがナイフのたった一つの幻想であり、純白の願いだった。それを、願うには彼の手は汚れすぎているが。それでも願う事は意味がある。彼女の死には意味があると、これから証明しなければいけない。それが生き残ったものの責務だ。




「頭。ユーロは?」




「今は少し、シロと話しています」




「そうですか、、、、ん?大丈夫なんですかそれ?」




「・・・・・・まぁなんとかなるんじゃないですかね?」








盗賊のアジトにて、2人。正確に言えば1人と1匹が睨み合っている。お互いに、不満はあるだろうが今回は違う。2人とも正論なのだから。




「なにか申し開きはあるか?ユーロ。ご主人様に危害を加えたこと、謝罪の言葉とかないのか?」




「無いね!!それに君が私を責める理由は無い。何もせずここでグータラしてた君に何が言える?あの件で私を責める権利を持つのはクスッチとナイフだけ。そのふたりが私の罪を不問にした。それが全てだよ」





シロはグルルルルと唸り、ユーロはクスクスと笑っている。お互いともに正論だ。2人とも相手を責める権利はない。2人とも負けず嫌いなのだ。随分と話がヒートアップしてきたようだ。



「ユーロ。なぜご主人が貴様を許したのか聞きたいぐらいだ。本来であれば死を持って償うべきであろう!」




「あー、そういう古い風習は、私嫌いなんだよね。そうやって死ね死ね言って、君は何もしないんだろう?死が償いだと思っているのなら、今すぐにでも私の首を噛み砕けばいいのに。優しいんだね?」



「死ね」



シロがユーロの顔を食べようとした瞬間だった。




「やめなさい!シロ!」




シロに向かって、とてつもない殺気が襲う。クスノキからは黒いオーラが出ている。つまりご立腹だ。




「何故ユーロを食おうとしていたんですか?シロ」




「で、ですがご主人様!この者は主に危害を!」




「人の話聞いてました?理由なんかいりません。食うなと言っておいたはずですよね?」





も!申し訳ありません!とシロは項垂れている。少しユーロもにやけズラになっている。


「ユーロ、貴方もです。あんまりシロを挑発しないように。これはお仕置です」




ほんの軽くクスノキはユーロの額にデコピンをした。だがその軽くはクスノキの加減であり、当たったユーロからしてみれば、おでこに弾丸が当たったような痛みだった。




「いったぁぁぁぁ!!!!」



ユーロは座ってた椅子から転がり落ちて、地面で頭を押えながら悶えている。

クスノキはため息をつく。最初に会った時は有能だと思った仲間が、くせが強すぎて使えないのだから。



「もういいです。それよりもこれからの予定を決めます。良いですね?こちらに集合してください」



そしてその一言と共に、アジトの人間はクスノキに向かって歩いていく。

ユーロも歩いていこうとした時──────




「ズイブンオコラレタナ」


ユーロの心の中でサタンが話しかける。ユーロはまだサタンのことを話していない。特にクスノキには。




(うぉ!?いきなり喋りかけないでよ!)




「ズイブントコッケイダッタモノデナw」





(うるさいな!君が元々私の中にいなかったから私は操られたんだよ!!てか何してたのその時?)




「チジンニアッテイタ」




(知人ってだれ?)




「サァナ」






時は少し戻り、ユーロがまだ操られていた時。クスノキがまだ、戦う前。

クスノキと話す自称神は少し戸惑っていた。




【あれ?どうしたんでしょうか?いきなりチャンネルが。古いんですかね?見えないとつまらない】




「────ツギノオモチャハソレカ」





「ん?おやおや、サタンじゃないですか!久しぶりですね!!」





「アア、ヒサシブリダナ────」





──────全能神 ムーン


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