鐘が鳴り始めた。
あらすじ 事件を解決したい
数刻前。
「これ以外に気付いたことは?」
「いえありません。とても賢い頭脳の持ち主のようですね」
話しているのはナイフとアップル。これはクスノキがアップルに会う前の少しの会話。
何気ない会話のはずなのに少し雰囲気が悪い。2人とも空気は読める。だからこそなのだろう、これは────
同族嫌悪だ。
「本当にこれだけですか?犯人の顔も体格も果てには足音すら知らないと?巫山戯てます?」
「いえいえ、何を言っているのか。私は本当に見ていないんですよ。私の父はとても強いお方だった。私の知恵など遠く及ばない方法で父を殺したのでしょう」
ナイフは嫌悪感を覚えていた。何故?と言われれば言葉に出来ない。ただ、心の中はイライラで満たされていた。
(なんだコイツ。なんでこんなにも情報を隠す?犯人の顔も体格も知っているはずだ。そうでなきゃ辻褄が合わない。どうしてここまでちゃぶ台をひっくり返そうとしている?)
ナイフは知らなかった。盗賊をやっていた時に戦った人間は何も知らない善人か、討つために来た悪人かの二択。
だからこそ知らなかった。ナイフは会ったことがなかった。世の中にはただ、状況をしっちゃかめっちゃかにして楽しむ、快楽を得る者がいるということを。
「話を変えましょうか?死の森というところはご存知で?」
「今は事件の事を、そんな話をする暇があるなら思い出して─────」
「その死の森を拠点としていた盗賊のカシラが行方不明になったとか」
「何が言いたいんですか?」
在り来りな話のはずだ。平凡で世間話のはずだ。だが、2人の雰囲気は少しづつアスファルトに水が侵食していくように悪くなっていく。
話し合いとは言葉での戦争。先に手を出した方が勝ちだ。先手を取られればそこからの流れを奪われ少しづつボロが出てくる。
相手がただこちらを惑わしたい愉快犯であるなら尚更。
「……貴方は私がその頭だと言いたいんですか?」
「いえいえ、別に?私はただの世間話をしているだけですよ。それとも何か心当たりでも?」
メッキが剥がれていく。浄化に当てられ改心したとしても罪は変わらない。たとえ自分がこの先死ぬまで人を殺さなかったとしても、今まで殺してきた人の罪は消えない。消えてはいけないのだ。
それが消えれば自分という存在が消えてしまう。罪とは自分に課せられる一方で自分をこの世に繋ぎとめておくための楔なのだ。
だからこそ人間は罪を犯さずにはいられない。罪を侵さないということはこの世界に存在しない人間となるからだ。
「……生憎時間になりました。すみません。アップルさん。私はここで失礼致します」
「そうですか。とても楽しい時間でした。ではまた」
ナイフは扉を閉じる。1人しかいなくなった部屋でアップルは少し考える。手を目の上に置き何も見えない様にして。
「愉快だな。これだから生きるのを辞められん。狸が、あれで隠せているつもりか?なぁ名探偵よ。あれは爆弾だ。その内爆発する。爆弾とは爆発する物だ。その時お前は無事でいられるかな?
・・確かに父を殺したのは俺じゃない。ただ、殺させたのはあれだろうな─────」
*
時は進み。本来の時間。
「こんにちは。会話するのは初めましてですかね?ライムさん」
クスノキがあったのはライム。ごくごく普通のアニメとかに出てくる貴族の母親って感じ。化粧も香水も凄い。威厳を保つ為なのか知らんが辛いものだね。貴族もさ。
「何の用だい?お前が知りたい情報はここには無いよ。出て行きな」
ライムは俺を猿を見ているような目で見る。嫌いだよその目。日本でも何度も味わったが未だに慣れない。敵の目だ、その目は人を殺せる目だ。
さて、時間も猶予もない。このままだと次の犠牲者が出る。その前に早めにね。
「貴方ですよね?クレープさんに、主人を殺せと命令したのは?」
「・・・黙りな」
逃げる気か?そうは問屋が卸さないぞ。白状してもらうぞ。
「貴方が─────」
「今は黙りな!!」
ライムはいきなり俺の口を手で塞ぐ。鼻は塞いでないので息はできる。だが声は出なかった。
「モガ!モガ!」
「頼む!今は喋らないでくれ!お前が死なれちゃ困るんだよ!あぁ、今日は早いね。まだ扉も閉めていないのに。鐘が鳴るよ」
鐘?鐘ってあの時計塔の上にあるあの鐘?
いつもはもっと遅くに・・・
【はい、ですので、今日は早めに鳴らしました。これであなた方が犠牲者になることはありません!】
は?犠牲者?おい、神、お前何をした!!!
なんのメリットも無しに助けてくれる赤の他人?そんなやついるわけないじゃんw
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