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永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
星の出で立ち編

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能ある鷹は爪を隠すが、こいつは全部隠す

 

【私は夢を見たいんだ。いつかあなたにも教えたい】


「(目を開ける)…あぁ。チッ...! 死ねよ」


  電王は眠りから目を覚ます。

嫌な歴史だ。どれだけ最高級の椅子に座ろうと、どれだけ良い睡眠環境だろうと、夢だけは選べない。

 安眠とは程遠い、どす黒い悪夢のような不快感が残る目覚めに、思わず舌打ちをする。

 見ていたのは、古い記憶。まだ彼が【■■■】だった頃の話。思い出したくもない、歪な記憶だ。


「…行くか」


ギシッと椅子から音が鳴る。歩く姿は哀愁漂う苦労人のよう。

  電王は、そこまでこのブレインに思い入れがある訳では無い。因縁こそ根深いが、それを抜きにすれば、この国が滅ぼうがどうでもいい気持ちが強い。まるで子供に与えたおもちゃのように、飽きればすぐに捨てられるだろう。

  だがそれでも、電王がブレインを運営しているのは、ディスガイアの為もあるが――それ以上に、、


「何の用だ? 女王」


「あら? もう少しあなたの苦しむ顔が見たかったのだけれども、おはよういい朝ね」


  電王が席を立ち、扉を出ようとすると、まるで人形のような女性が立っている。

 黒いフリルのドレスを身にまとい、黒のカチューシャに、黒い日傘。黒を愛しているとも言える、黒髪の女性である。

  だが、彼女こそ、ディスガイアの側近【ナンバー2】であり、星王を除けば、この世で最強とも言える生きる厄災


【女王 ミスト・プラングニル】である。


  そして、電王が1番嫌いな相手の一人である。

 その理由は明白で先程の会話の通り、会話が通じないのである。


「女王…話を聞いていたか? 俺は【なんの用?】と言ったんだ。何故そこで、俺の寝顔の話が出てくる?」


「うん、そうね。あなたの寝顔を見に来たという理由では、もう騙せそうにないわね。少し話があってきたのよ」


「(最初から騙されてなんかねぇよ)…それで、話とは?」


  女王は指をさす。

 その方向は、紛れもなく電王の心臓であり、それ以外表情を変えず、何も言わないのに電王はさらにイラついていく。勝てないとわかっていても、マグマのようなイラつきが、喉から口に出そうになってしまう。


「…何が言いたい?」


「そう怒らないで。話というのは【忠告】よ。

  いま、このブレインには、死王を殺したクスノキと、魔王と渡り合ったユーロと言う女がいる。

  殺しておきなさい。その者達の力は、いずれあなたの心臓を潰すわよ?」


  一瞬電王の思考が停止する。それほど有り得ない光景なのだ。女王は、ふと電王の前に現れては、煽って消える。そんな自然災害のような性格がなんのフェイクもなく、ただ忠告をしている。

  電王は息を飲む。女王の瞳孔は、今も変わらずブラックホールのように禍々しい心臓を握りつぶすような圧力が溢れ出ている。

 

 ――これは殺気だ。


「冗談にならねぇぞ? その殺気を止めろ。お前の機嫌を損ねた気はしないが?」


「えぇ、でもね。ディスガイア様はどうかしら? そろそろ何か結果を出さないと、捨てられるんじゃない? ただでさえ嫌がられてるのに」


「嫌がられているのか?」


「…あら」


  女王は、しまった。と口に手を当てる。その行動が逆に、それが事実だと証明してしまい、電王のテンションが下がる。

  だが、ここで…



「大丈夫よ。今は嫌われているかもしれないけど、クスノキとユーロを殺せれば、ディスガイア様も認めてくださるわ。そう、嫌われていたとしても…ね」


  女王のフォローしているのか、傷口に塩を塗っているのか分からない、発言が電王の耳に入る。

  屈辱だった。確かに相手は格上で、上司に当たるのだろう。だが、それでも前の会議では狼王に煽られ、今度は女王に煽られる。

  だからこそ、電王は行動を起こした。


「二人を殺すねぇ

  1人は、ダストボックスだ。第3層まで来たらしいが、第4層で死ぬだろう。

  問題はユーロという女。であれば、見せてやる。電脳国の王であるこの俺が生み出した、最強の軍隊を!」


  電王が指を鳴らす。

 すると目の前に大きな液晶が現れ、そこに黒くおおよそ人ではない、化け物が映し出される。

  女王は知らない、未知の力に…


「あら? これは?」


「今、電脳国で問題視されている、謎の生命体【バグ】と呼ばれる存在だ。うちの討伐隊が血眼になって、今も命を削って戦っている。

  随分と可哀想だよな。この国を守る為に、戦っているというのにそれを生み出したのが、国の長なんてなぁ!

  電脳国よ! 個体名ユーロの居場所を特定せよ!」


  電王は、悪魔のような笑みから、敵を殺す指揮官の目になり、覚悟を決めたように電脳国に追跡させる。


【個体名ユーロ。居場所…リボンルーム】


  そして、物の20秒足らずで、居場所が特定され、電王に報告されてしまう。嫌な予感がわき出る電王。


「リボンルーム…なんでそんな所に?

  まぁいい、2体も送れば死ぬだろう。さぁ行け、バグ共よ! この世界をくるわせようとする悪人に、聖なる鉄槌を喰らわせてやれ!」


  そしてユーロの所に、2体のバグが送り出させる。

 女王は何も言わなかった。ただ見ている。何故なら知っているからだ。あのバグは殺されるという事を。

  ユーロを知っている訳じゃない。ただ――


(分かってないわね電王。バグは殺されるわ。何故って? ユーロの事は知らない…でもね、魔王と渡り合った奴が、バグにやられる訳無いでしょ?)


 ◆◆◆◆


 一方その頃…ユーロはと言うと。


「んにゃ 暇」


「だねぇ」


  ユーロとアクセサは二人で行動しており、現在も待機中である。

 アルミシアが、動けずクスノキのフォローをしている間は、なにも問題を起こさないよう言われたので、大人しく座っていると言うのが今だ。



「アルちゃんいつ戻ってくんの?」


「(アルちゃんは…アルミシアの事かな?)さぁね。ただ、クスノキの攻略が遅すぎるから、第三層を超えるまでは、フォローするって言ってたよ」


「じゃあまだかかりそうだなー。やっぱり私が、ダストボックスに行けば良かったんだよ。クスッチと一緒にまた冒険したかったなー」


  事実、クスノキとユーロを離したのは紛れも無く、アルミシアである。

 まずは戦力を分散させ、両作戦の達成確率を少しでも上げるために、有能な采配である。

  そしてもう1つは、アクセサとマーキュリーに監視をさせるため。

 クスノキに関しては、一緒に冒険をした中であるが、だからこそ問題を起こすと確信したので、マーキュリーに。

 そしてユーロをアクセサに任せたのだ。

  だが、このアクセサの性格も、、


「ねぇ、やっぱり戦わないか? 少しは時間が紛れるよ?」


「ホント! そればっかだなー。嫌だって、私は戦うのは…好きじゃない」


  アクセサは戦闘狂である。

 警察に入ったのも、市民を守る為では無く、ここにいれば犯罪者との殺し合いができるから…と踏んで望んだ立ち位置だ。

  だが、その性格上、アルミシアの計画を狂わせるのは日常茶飯事であり、その戦闘能力が無ければ、既にアルミシアから見捨てられているであろう、困った狂人である。

  そして――今日、踏んではならぬ虎の尾を踏む事になる。


「ねぇ、ユーロ戦わないかい?」


「だから嫌だって」


「硬いねぇー。…ねぇじゃあもしもさ――私がクスノキを殺したら…どうする? ――!?」


  その時、アクセサは全身の毛が逆立つような感覚に襲われる。まるで、猫に睨まれたネズミのように。

  笑みがこぼれてしまう。

  強いとは感じていた。だが、あっても自分と同格かそれ以下だと。そう感じる戦いだった。

 だが、もし相手が実力をほとんど隠していたら?

  その結果が、目の前の誤算を生むことになる。


「殺すぞ?」


  ユーロが見えなくなる。ドス黒い殺気がまとわりつき、姿が見えない程、圧倒的な魔力が彼女の実力を表している。

  ありえない光景だ。データの塊であるブレインの壁が、ひび割れている。つまりそれは、()()()()()()()が大きすぎて、プログラムが破損してきているという事。

  それ程、ユーロの力は、常軌を逸していた。


  そしてアクセサから愚痴がこぼれる。


  「マジか…そんな強かったか……お前、電王ぐらい簡単に【殺せる】だろ…」


 アクセサは、ポケットにあった銃を触る。

 もう既に、アクセサはユーロの敵ではなく、捕食者として認識されていると察した。

  アクセサの冷や汗が、額から落ちる。

  その汗が、地面に落ちるまでが100年に感じるほどの殺気の中、リボンルームの壁が壊れる。


「――な!?」


  アクセサは動揺した。見れば、そこからバグが2体。しかも、最初にクスノキが来た時に戦ったバグとは、比べ物にならないほど強い特殊個体が2体。

  これには、アクセサも視線を動かしてしまう。

  だが、動かした時間は1秒程。すぐにユーロに視線を戻した。

 説得をする為に。


「おい、今は戦っている暇では――」


  アクセサの目の前にユーロは居なかった。

 目を離したのは1秒ほど。そしてその間も、殺気はアクセサの横にあった。だが、目の前に張本人はおらず、アクセサの後ろで音がする。

 

「はい終わり」


  そこには無傷のユーロと、既に死んだバグ2体がそこにいた。傷からして一撃。腹に陥没する程の正拳突きで勝負ありという事。

 アクセサはまた笑みがこぼれる。

 今度は、ワクワクではなく、武者震いとして。


(参ったねこれは。どうやら、戦うには相応の準備をしなくてはいけないらしい…あぁ、殺しあって見たいなぁ!!)


「……はぁ」


  ユーロはあえて実力を出すことで、アクセサの闘争心を失わせ、これ以上不毛な時間を過ごさない為に、派手に倒した。

 だが、それはアクセサからすれば、更なる強者の証明であり、闘争心を煽る起爆剤でしか無かった。

  そして、それに気づいた彼女は、大きくため息を吐いたのであった。



 その頃――


「は…一撃? ばかな! 馬鹿なぁぁぁ!!!?」


 電王はバグにカメラを仕込んでいた。ユーロの実力を確認する為に、万が一倒されたとしても、対策を打てるように。

  だが、実際ユーロの姿を見るまでもなく、バグは殺され、収穫は一撃で倒されたということだけ。

  まさに大誤算の、最悪の負け方である。


「そんな訳…が」


  絶望している電王の後ろで見ていた女王。

  その目は、見ていたのだ。ほんの少ししか映らなかったが、電王が見落としたあるピースを確実に捉えていた。


(見間違い…では無いわね。あの、バグを殺した時に見えたほんの少しの【魔力】

  …あれの片方は正しく、勇者サタンと同じ光。

  偶然? 否、それで片付けられるほど、私は馬鹿じゃない。最悪なのは【勇者の生まれ変わり】という説。であれば、魔王と互角に戦ったのも頷ける。

  確認しなければ…ディスガイア様に!)


 そしてこれ以降、女王の中でユーロは、油断するべきでは無い強者として認識を改められたのであった。


(でもその前に、味見をしてみようかしら?)

読んでいただき本当にありがとうございます!


星を増やしてくれるとありがたいです。


これから、同時並行で物語が進んでいきます。一応ブレイン編は25%ぐらい進みましたかね…

豆知識ですが、ユーロとクスノキが戦ったら多分ユーロが勝ちますね


面白かったと思ったらブックマーク!


感想やレビューもお待ちしております!


星ももちろん大歓迎!


具体的には広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にね。


そうするとロリのやる気が上がります。

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