ダストボックス第三層攻略作戦(1)~自然の猛威~
「ひえぇぇ! 怖いです! 復讐ですね! 大方第2層で虐められたから、その腹いせに殴るつもりですね!
そして最後はその剣で、喉元を引き裂かれます! あぁどうじでぞんなごどが!
私は必死に職務をしていただけなのに! なぜ、ここまで不幸なのでしょう! あぁがみさぁまぁ!」
…うるさい。これ尽きるな。
見た目は普通の女性。看守の服を着たマーモットみたいに気が弱い、黒髪ショートカットのいつも涙目の泣き虫。
最初に第三層に降りてきて、あの二人がいないと思ったら、初めてあったのがこいつ。マーキュリーも喧しかったが、別のベクトルでこいつもやかましい。
だから、何も言わず無視して、あっちを見ずに歩いているのだが…何故かあいつもついてくる。
「あぁもう! うるさいですね! 少し黙ってくれませんか!?」
「ひえぇ! 怒りました! やはり復讐ですね! その感情が抑えられず、声が大きくなったんですね!」
「違います。てか、怖いのなら着いてこないでくれません?」
「それは困ります! 助けて下さい、水が欲しいんです!」
…何がめんどいって、こいつずっと着いてくるんだよなぁ。最初は、どこかに誘導する罠かな? と警戒したが、どうやらただのヘタレのようで俺の後ろをドタドタと着いてきている。
それにしても、本当に砂しかない。上が雪原だったから、嫌な予感はしていたが温度差で風邪をひきそうになる。また、頑張ってエリアボスまで辿り着いてください。って感じだろうね。
【それにしても、何も無いのですね】
「えぇ、てかいいんですか? アルミシアさん。ナビを継続して」
別行動のアルミシアは継続して、ナビを続けてくれている。今は、ユーロ達も休憩をしているとの事なので、暇な時間でこうしてくれているらしい。
ありがたい話だが、あちらは休憩する事が出来るのか。行く職場を間違えたな。トホホ。
だが、そちらの状況を何も言わないのを見るに、好調では無いのだろう。
「それで何処に進めば…」
【分かりません。とりあえず歩きましょう】
「使えないナビですね」
【は?】
「は?」
「喧嘩ですか?」
【「うるさい!!」】
「ひぇぇ!!」
うるさい旅になりそうだ…
――30分歩いた。
何も無い。どこまで行っても砂しかない。太陽は動いているようだから、じき夜が来て涼しくなるとは思うが、あと半日はこの灼熱が続くのだろう。キツイ。
てか聞いてないな、そういえば。
「そういえば貴方の名前は?」
「ひぇ? あぁ、私はラウルと言います。ごめんなさい、変な名前で」
「…何も言ってないでしょうよ」
【最低ですね。クスノキ】
あのガイド殴っていいかな? ダメか。
…いかんな、正直イラついている。てか会話したくない。ここまで暑いと、会話する楽しさより、消費するエネルギーの方が多くて、嫌になる。
何処に行けばいい? …待てよ?
「そういえばあなた看守ですよね? 独房の位置を知っているのでは?」
「ひぇ、知りませんよ。ここに独房なんてありませんし。言い方を変えれば、この第三層はフィールド全てが独房です。安全な場所なんて、どこにも存在しませんよー」
「…ではこの暑さは?」
「夜にならないと、消えませんねー」
…マジか。生かす気ねぇじゃねぇか!
契機とかんなの言ってる場合じゃないでしょ。第2層は、寒さで死ぬ可能性はあった。だが、生かすヒントや安全スペースは用意されている。
だが、ここはまるで処刑場。太陽光という、どこまで行っても追いかけてくる地獄の悪魔が、永遠と俺の肌を焼いている。
――コツン
ん? なにか蹴ったな。
そう思ってみると、そこには死んで長い誰かの白骨遺体があった。うずくまるように、這い出る形で死んでおり、前に伸びた右手が生きる意思を示しているかのようだ。
きっと最後まで、水を欲し生きたいと思っていたのだろう。だが――
「死んでしまったのですね」
【いいえ。そんな甘い世界じゃないのです】
耳に声が届く。
その声は、苦難と後悔に満ちており、見えてないはずの顔が何故か見えてくる。唇を噛み、涙を出さないように食いしばっているのが。
そしてアルミシアは続けた。
【ダストボックスに死は無いのです。たとえこうして白骨化しても、死した本人の自我は残っています。
今もこの人は、飢えと暑さ、そして何も出来ない無力を永遠と味わい続けているのです。今も、そしてこれからも】
思えば、このブレインでまだ一度も死体にあった事は無かった。
この世界は、仮想電脳世界と呼ばれる物で、ここに来た時点で体と魂は、データの塊へと変化をし、ブレインに適応できるようになっている。
じゃあ、この死体は永遠に腐る事が無いと言うことか。
「刑期が終われば解放なんですよね?」
【それは勿論。ですが、考えてみるのです。極限の飢えと日でり、そしてそれが何十年も続く。それが終わり、たとえ自由になったとしても、まともな自我が残っているのと思うのです?】
わからん。正直自我が残ってそうなヤツらとしか会ってないから、なんとも言えん。死王とか普通に自我残ってるだろ。
…とまぁ、こんな感じで熱い砂漠を歩いているのだが、ふとした時にアルミシアがついにあの話題を出してきた。
【そういえばクスノキ】
「え? 今暑いから話したくないのですが」
【そうはいきません。聞き忘れてたのです。なんで貴方のパーティーにハヤカサがいるのですか?】
…なんて説明すれば良いのだろうか。
正直、ありのままを話すのが、お互いにとって1番楽ではあるのだが、確執があったときが厄介だ。
だが、アルミシアに嘘が通じるとも思えない。だとすれば…
「何か確執でも?」
シンプルに聞いてみた方がいいだろう。
…まぁ、この会話もさっきと同じ声色だし、昔少し会ったみたいな、小さい思い出であって欲しいんだが。
【いえ、私の兄の友人なのですが、知り合いであれば話がしたいな…と】
…ほぼ他人じゃね? と思ったが、何も言わずに黙っておこう。ハヤカサも厄ありか? と思ったが、そんなに大きくなかったので、少し一安心で息を吐く。
とりあえずアルミシアとは、後で話をさせると約束した。これが凶と出なければいいが…
「あのー」
そんな時、空気を読めない弱い声が後ろから聞こえてきた。てか着いてきてたんだラウル。意外と根性あるなこいつ。
「どうしました? 何か問題でも?」
「ひえ、えっと…あのもう夜なんですが、安全な場所の確保…とかは?」
「夜? 何を言って? まだ太陽は上に――」
それは一瞬と呼べる出来事だった。
クスノキは上を向く。そこには未だ自身を炙る灼熱の太陽が、鎮座している。気温も、空も確実に昼だった。
[ガコン!]
まるでスイッチを押したような音が、この第三層に響き渡る。
それは、合図だった。その音と共に、太陽の速度が早くなる。まるで誰かが無理やり太陽を動かしているように、先程の10倍以上の速度で地平線の奥に隠れていく。
そして、それと同じ時に、反対側から朝日のように月が現れクスノキを照らす。
「ほらね? もう夜ですよ?」
「…なんでもありですね。ここ」
電脳空間だからこそ、可能なはた迷惑なギミックである。
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【うるさい子ですね】
「貴方も初めて会った時、あんな感じでは?」
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