ダストボックス第2層攻略作戦(4)~体の意志~
薄ら暗い廊下を歩く。
化け物が出てそうな暗さだ。まぁ、実際に出てきたんだけどさ。
こうみると、お化け屋敷ってよく出来ていると思う。よく恐怖と娯楽を一体化させたと思うよ。
だがここは、圧倒的恐怖しか無い。死んだら終わりの、地獄行きの列車に乗せられる。
俺がここまで移動する間にも、何個か死体があった。そのどれもがまだ微かに生きており、苦痛に満ちた声を発している。おそらく、あれは生きていると言うよりかは、死ねないのだろうな。ホラーあるあるだ。
さて、少し話を戻そう。何故なら、もうすぐBの22が近いのだ。俺も、ただ、歩いていた訳じゃない。ちゃんと、部屋数を数えて、歩いてきたって訳よ。
そして着く。Bの22へ。
【Bの22】
ふむ、着いたはいいが、本当にここに意味があるのだろうか?
当たり前だが、誘導されている気がする。ここが幽霊の罠だとしても、マジでそうだな、としか言えん。
あの紙の信憑性も、まぁそんなにある訳じゃないし…ええいままよ!
ガラッと扉を開ける。
中は教室…のような感じだった。具体的には、田舎の小学校みたいな感じ。
だが、教室自体は荒れ果てており、木の壁に所々、血痕が付着している。嫌な光景だ。
ただ、ここに誘導されたと言うことは、何かしら意味があるということ。
それが何なのか――
(あの机だけ、汚れてないな…)
見た所、一つだけ奇妙な机があった。他の机は、倒れていたり、真っ二つになっていたが、そこだけは綺麗な状態のまま保存されている。そこだけ綺麗すぎて、スポットライトが当たっている気すらする。
そんな、気を引かれる場所だった。
(ククク、バカめ。気づいてないな?)
そんなクスノキを、ドアの後ろから見ている男が一人。
紛れもなく、この第2層の看守である。
青い服を身にまとい、小さいナイフで殺す気満々の表情をしていた。
男は思う。(当たりだ…)と。
男から見て、クスノキは単なる幼女にしか見えない。
まさかこの幼女が、魔王や電王に死王と互角に戦える、化け物だとは夢にも思わないだろう。相手の容姿だけで力量を測る等、外野から見れば自殺行為。
…だが、男にはそれをするだけの自身と、経験があった。
ペロっと、ナイフを舐める。金属の味しかしないが、そこに血を混ぜたいのがこの男の性格。幼女の味を確かめたい等、理解出来るはずもない思考である。
――だが、ここでこの男に奇跡が起きる。
なんと、クスノキは目の前の机に全神経が向いており、殺気が漏れているこの男の気配に、全く気づかなかったのだ。
不覚。それ以外の言葉では表せない。油断が産んだ、ほんの一瞬の隙である。
ここにいたのが、アルミシアやハヤカサ、またユーロであっても、この男には気づいているだろう。
この時、この場所、そしてクスノキだからこそ起きた、男にとって絶好のチャンスである。
(…イける!)
男はナイフを構え、一瞬で間合いを詰める。後ろを向いているクスノキ。そのうなじにナイフを指す。サルでもできる仕事。
それをこの男は、何年もやってきている。ミスる筈が無い。数秒後には、クスノキの死体が目の前にある。
だが、実際の数秒後は、男が想像していたのとは、かけ離れた物となる。
(何が…起きた…攻撃…されたのか!?)
男は顎に強い衝撃を受けた。まるで、顎に岩がぶつかったような痛さ、そして重さ。男は中に吹き飛ぶ。
やったのは、勿論クスノキ。だが、正確には違う。正確に言えば、クスノキの【体】である。
クスノキの体は、ムーンがこの世界に適合出来るまでに、強化、再構築された物。
神が作った肉体。それは、どんな魔法よりも、強いアドバンテージである。
本来、クスノキは、死王や電王にも余裕で勝てる筈だった。肉体の性能100%出せば、魔王にだって遅れは取らない。
では何故それをしない? 否、出来ないのだ。どれだけ体が最高級でも、それを動かす、脊髄、脳、神経が、体の思考に追いつけないのだ。
最高級の骨組みを使った車も、エンジンが昭和のであれば、大した性能は出ない。同じ通り。
そして今回も同じケース。クスノキは、後ろの男に気づいてないが、体はとっくに感知をしている。
そして、男が襲ってきても、何も反応しない、クスノキに痺れを切らした体が、ついに主の命令を待たず、自分で行動し迎撃をした。
体が自分で攻撃したので、殺気も出ないというオマケ付き。
これが本来のクスノキの実力。足で顎を蹴りあげる、無慈悲の一撃である。
「え? は…はぁ!?」
クスノキからすれば、いきなり体が回り、後ろにいた敵を、足が勝手に動いて蹴り上げるという、意味のわからない事が起きていた。
体はそのことを教えない。クスノキにいちばん厳しのは、何を隠そう自分自身なのである。
そしてここからはダイジェストだ。
理由はふたつ。
1・見所がない
2・クスノキは気づいてしまった
気づいてしまったについては、特に言うことは無い。蹴り上げた男…先程クスノキがお化けと恐れていた者と同じ。
気づいたのだ。(こいつら…殴れるんだ…)と。
そこからの攻略は早かった。
相手を殴り続け、攻略を目指す時間。そこまでかからなかった。
最後の扉を開ける。そこから指す光、さぞ大層な持て成しなのかと思いきや…
「「おっそ」」
そこには、ボス部屋前で待ちくたびれており、あくびの後すらある二人からの、心の底からの評価であった。
読んでいただき本当にありがとうございます!
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