ダストボックス第2層攻略作戦(4)それぞれの状況
夜の廊下を歩く。
先程と違い、荒れ果てておりボロボロの渡り廊下を歩く。
パキっ
俺は下を見る。そこには人骨…では無くガラスの破片。それを踏んで割れた音だった。
ビックリさせないでくれないか? 別に俺はホラーが苦手な訳では無いが、さっさと二人と合流しようか。別にホラーが苦手なわけじゃないぞ!
「ホントウニ?」
「えぇ、それは勿論――へ?」
よく考えろ、クスノキ! 今、2人とはぐれて探す所。つまり、ここにいるのは俺一人。
振り返っても、誰も居ないはず!――
(怖ぇ!)…チラッ
振り向くと、髪の長い白い女性が居ましたとさ。めでたしめでたし――じゃねぇよ!
「ギャァァァ!!!」
「マテーー!!!」
こうして俺と、お化けの鬼ごっこが始まった。
◆◆◆◆◆
「全くクスノキと、ハヤカサは何処に?」
同じく、マーキュリーも第二階層で迷っており、暗い廊下をずっと歩いている。
だが、アホなりにもクスノキよりも思考は回っており、いち早くあの部屋の重要性に気づき、懐中電灯とBの22を目指して、歩いていた。
そして、ある重要な真実にも気づいている。
(最初の光景…あの施設に誰も居なかった理由。私の予感が正しければ、直ぐにでも二人と合流するべきですね。
ですが、まぁ最初にその予感を確定させておきましょうか…)
「…聞こえてますか? 鏡の中にいる人」
マーキュリーの目隠しの先にいたのは、大きな鏡。天井から下まである巨大な鏡で、マーキュリーがまるまる、収まっても余裕がある大きさである。
そこにはいつも同じ、マーキュリーの姿があったが、その姿が鏡から来て、奥から青白い手が現れる。
鏡から出ることは出来ないのか、ベチャ…と、鏡に手を当ててもがいている。
「あぁ…聞こえている…まだ生きているということは…挑戦者か…気の毒に」
「…やはり私の予感は正しかった。最初の施設に誰も居なかったのは、受刑者全員が、迷宮に挑戦したから。
そして貴方は、迷宮攻略に失敗したと」
「…あぁそうだとも。私は後悔している…こんな地獄なら、大人しく刑を受けていたさ」
マーキュリーは見えない目をそらす。それ程、鏡の中にいる人間の様相は酷かった。まるで拷問を受けた後のような、ズタズタの体。目はくり抜かれ、爪は全て剥がされており、何も食べてないのか、体はゴボウのように痩せ細っていた。
これはもう、罪の精算では無く、地獄の流刑である。
彼がもしここから出れたとしても、生きていけるはずが無い。生きているのは、ここが電脳空間だからだ。
「はぁ、はぁ、俺ももう見つかる。覚えておくといい。ここで死ぬと【無理やり蘇生させられ、そして死ぬを繰り返す】地獄を味わう事になる。自らが死んだ要因を永遠に繰り返すんだ。
死ぬのなら、楽な死に方をしたらいい」
「…肝に免じておきます」
そして、鏡の中の人間は、後ろのから出てきた、白い手に捕まれ鏡の奥に、連れて行かれた。
止めることはできない。例えその後、鏡の中から、耳を塞ぎたくなるような、悲鳴の慟哭が聞こえたとしても。
マーキュリーは、後ろを向く。そこには先程とおなじ白い手がある。
あれに捕まれば、自分も先程と同じ末路を辿ることになる。そしてそれは、他のふたりも同じこと。
「無事でいて下さいね。二人とも…」
◆◆◆◆
「さてと、どういたしますかね?」
ハヤカサは、お化けの首をヤンキーのように、掴んでいた。
…文字にすると意味がわからないが、要は触れないはずのお化けを掴める、ルールブレイカーである。
これには、圧倒的捕食者のお化けも――
「ア、アレー?」
――この通り、理解が出来ずキャラがブレている始末である。
何故お化けを掴めるかは、一旦置いておく。この状況をどうにかしなければいけないのが、お化けの役目。さてどうするか――
「ハ、ハナセ!」
……お化けって、捕食される側だっただろうか?
体からは汗が流れ、首を掴んでいる手が離れない為、叩いている。
その様子を見て、ハヤカサは確信した。
「やはりな。てめぇら幽霊じゃなくて看守だろ?
だから俺は掴めるし、殺せない。確かな実力差があれば、お前らなど取るに足らないんだよ」
そしてハヤカサは、看守の首を握り潰す。すると、看守はまるで灰のように消えていき、煙となってどこかへ飛んでいった。
「…はー、つまんね。ホラーゲームかと思ったら、お化け屋敷でしたとさ」
ハヤカサは、大きなため息をしたあと、床に唾を吐いて、ポケットに手を入れて、そのまま足を進めるのだった。
こうして
・何も分かってないクスノキ
・重要なことが少しわかっているが、それを生かすことは多分できないマーキュリーと
・何の問題もなくボス部屋に辿り着くハヤカサ
――これら三人の看守との鬼ごっこが今始まる!
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