表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
星の出で立ち編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

268/277

ダストボックス第2層攻略作戦(序)

少し詰め込みました。

「電王…」


「やぁ、目覚めはどうだい?」


  ダストボックス最下層で、初めて顔を合わせる2人。

 方や攫われた姫と、さらった張本人。和解などできる筈がなく、睨むハクアと余裕の電王。

 ハクアが動き、少し動く枷の金属音が気まずい2人の空間に少し、変化をもたらす。

  ただ、これでは何も始まらない。とハクアは自分を制し、口を開く。


「――目覚めという点では、最悪だね」


「うん、そりゃ良かった。これでいい目覚めなんて言ったら、人間性を疑っちゃうもん」


  これについて、電王は悪意は無い。ただ思っていることを言っただけ。ただそれが、ハクアのイラつきをさらに助長する。それは露骨に態度に出て、既に細かった睨みは、更に激度を増していく。


「で? 何の目的で私を攫ったの? 楽しく観光していただけなんだけど?」


「そうかい。君が呑気に気絶している間に、少し君に興味が出てきてね。本来だったら、殺すところを生かしているんだから、感謝してくれ」


 ハクアの第一印象は、(話にならない… )だ。攫った目的を聞いているのに、何故か自分への感情を露呈する。根本的に会話が成り立っていない。

 挙句の果てには、つまらない話のあとに感謝をしてくれと宣うのだ。これにはハクアも大きなため息が出る。そして冷めた声で、目を逸らしながら挑発する。


「はぁ、酔ってるのか? お前。私は、攫った目的を聞いているんだ。なのに、それが答えか」


「いやー、酔ってたらいいんだけどね。生憎に俺は酔う事が出来ない。酔王が羨ましいよ。で、君を攫った目的だよね? それは――」


  その瞬間、電王はなにかに気づいた様に真横を見る。遅れてハクアも見るが、そこには壁しかない。

 だが、ハクアには分かる。彼は()()()()()()()のだ。決してハクアには見えない、何かを。


「なるほど…ね。裏口から来たか…。大胆な事だ、人質がいるにも関わらず…ね」


「…何の話?」


「――ん? いやなんでもないさ。少し急用が出来てね。ここを離れなくてはいけない。君を攫った理由や、やってもらいたい事は、その時に話そう。では、」


 そうして、瞬間移動のように田横は消え、後はハクアと静寂だけが残る。

 彼女は、鎖を鳴らしながら近くにある壁を触る。彼女はここで目を覚まし、そしてあるぼやけた記憶が今も彼女の脳を攻撃していた。


(私は…アルピスで生まれ育った。それは間違いない。私の故郷はあそこだ。

  なのにどうして? なぜ私は()()()()()()()()()()()の?)


  ハクアのこの記憶。後に彼女の大きな選択の足枷になることをまだ誰も知らない。


 ◆◆◆◆


「つきましたね。ここが、リボンルームなのです」


  アルミシア達は、雨ゾーンからユーロの手で壁を掘り進め、ついにブレインの裏側に辿り着く。


 その世界は、まるで物流倉庫のようにデータが混在する世界。床を踏んでも足音はせず、自身が立っているのかすら不思議になる世界。

  まだ未完成の場所、そしていずれ必要になる場所。そこからバックルームとも呼ばれる裏側だ。


「久しぶりなのです。ここに来るのも」


「警備隊の立場でここにいるの知られたら…クビかー」


「凄。クスっちに見せたいなここ」


  三者三様の感想を見せる中、アルミシアは「リボンの制御件を奪ってくる」と、どこかに走って行き、残るはアクセサとユーロの二人だけ。


「……」


  思えばそんなに会話した事ない二人なだけに、最初は沈黙が流れる。会話は慣れ親しんだものでは無ければ、好きでするものでは無い。


「ねぇ」「なぁ」


  ただ、もう1つ。同じ趣味を持っていると、 会話というものはスムーズに行われる。言うまでもないが、二人にはある共通の好みがあった。それは――


「「お前強いか?」」


  ――強者が好きという、ネジが外れた異常者二人だ。

 場面は一触即発。きっかけがあればすぐに戦いが起こる、爆弾のような空気。

  アクセサは二丁拳銃、ユーロは拳。それぞれの武器を持って、相手に攻撃するその瞬間――


((!!?))


  空間が捻れる。二人の目の前にブラックホールのような、巨大な空間が出現し、そこから超巨大なゴーレムが出現する。

  見るからに硬そうな銀色の体に、当たれば一溜りもない巨大な拳。そして口からは大量の蒸気を発している。

 そして顔にある赤い目は、完全に敵意を示している。

 

【アクセサー!!!】


  アクセサについていた通信機から、アルミシアの怒号が聞こえる。思わず顔をしかめるほどの大声で、相手の怒りが声だけで感じ取れた。


「おや、どうしたアルミシア。そんなに怒るとシワが増えるぞ?」


【余計なお世話なのです! 貴方何をしましたか!? 何かいるのですよね!?】


「あぁ、この目の前にいるゴーレムの事かい? 目の前からいきなり現れたんだ。私やユーロでは無いよ」


【嘘つくななのです! どうせお前が変なスイッチを押したのでしょう!? もうすぐシステム掌握できますから、それ迄に倒しておくのですよ! 良いですね!?】


  そして無理やり ブツン! と通信が切られ、アハハと笑うアクセサと、(どうすんの?)という顔をしたユーロが居た。

  ゴーレムは動き出し、二人をターゲットとして認識したようで、中心に向かって歩き出す。


「戦闘は避けれなそうだ。二人で戦おうじゃないかね?」


  やる気のあるアクセサと、見るからに硬そうで殴るのが嫌なユーロがいる。


「えー? 1人でやれば?」


「おや、つれないね。君も戦うのが好きだと思ったが…ダンスは嫌いかい?」


「…さっさと倒しなよ。【君が変なスイッチを押した】と言うことなんだから」


「ふむ、そう言われると耳が痛い。では仕方ない――」


  アクセサは、二丁拳銃を構え、ゴーレムに走る。そして大きく飛び、ゴーレムの顔の前で舌なめずりをした。


「――さぁ、ゴミ回収といこう」


 ◆◆◆◆


 一方、ダストボックス最下層のアルミシアは、体育座りをして、檻の隅っこで脱出する術を考えている。だが、現住民ならまだしもまだ来てひと月も経っていない少女には、思い浮かばない難題だった。


【誰かいるのか?】


  アルミシアは顔を上げる。聞こえた。電王では無い、()()()から聞こえた声。慈愛に満ちた、誰かの声だった。


「…誰!? 誰かいるの!?」


【おぉ、人がいるか。珍しい、人の子の声を聞くのは何年ぶりか…】


「貴方は――誰?」


【私の名は…ギルティア・ブレイン。このブレインで、最初の電王と言われた者である】


「…え?」


 ◆◆◆◆


【ダストボックス 第2層】


「う…うぉぉぉ!!!?」


  クスノキ達は、第1層ボスを攻略し第2層へと足を進めた。

 だが、扉を開けたその先は、巨大な穴でありマンガのように3人とも落ちていった。

  そして今――


「げふ!?」


  ハヤカサが落ち、


「うぇ!」「うっ!」


 その上にクスノキが落ち、更に、


「受け止めてくださーい!」

「嫌だわボケ!」

「ギャン!」


  同じく上に落ちようとしたマーキュリーを、思いっきりボレーシュートして吹き飛ばす、ハヤカサであった。

 

「これは?」


  俺が落ちたのは、間違いなく【第2層はここから!】と言う看板から。変な文だとは思ったけど、まさかここまでとは。

  下の地面に触る。そこには小麦粉のような冷たいもの。つまり【雪】

  勘違いしていた。ダストボックスは、日本の刑務所のように、同じ階層がずっと続いているのだと。だが、ここは――


「極寒ですか?」


「はいそうです。ここは、ダストボックス第2層【絶対零度】と呼ばれるゾーンです。まずは上着を探しましょう。でなければ、私達は凍死です。

  そして…出来れば私を雪山から出してください。寒すぎる…」


  冷えた場所で、冷えた目で、冷える雪山から片足だけが出るマーキュリーを見る、俺とハヤカサの二人であった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ