ダストボックス第1層攻略作戦(序)
「それで? どうでした。点呼は」
「……生きた心地がシマセンデシタ」
俺達が刑務所に侵入して早1週間。点呼も慣れたものだ。
事は一週間前、皆と別れた後の事。俺は直ぐにブレインの警察に捕まり、刑務所に直行で送られた。別れた時、アルミシアに「なにか急用があれば、一時間以内に消化しておくのです」って言われた時は、嫌な予感がしたがいきなり刑務所に入れるかね? 普通。まぁ、俺の罪は告げられず刑務所に送られたということだけ。それを補導したのはアクセサだったから、全てはアルミシアの計画なのだろう。
そして勢いのまま牢に入ると、
「あ、ども」
「……どうも」
こちらも状況が理解できずに、ポカンと牢の椅子に座っているマーキュリーがそこに居た。二人とも、宇宙猫のように頭がフリーズしていたのが鮮明に思い出せる。
捕まった時、付けられたのは一個の手につけるリング。金色を催すキラキラと輝いた輪っかは、天使を想像させる。少し触ってみようとすると、
「触らない方がいいですよそれ」
「……これは?」
「それは、GPSがついた発信機のようなもの。外そうとする意思があれば、すぐに刑罰が執行されますので」
言い過ぎだろ……と思ったが、マーキュリーの声で冗談では無いことが分かる。そしてそれに逆らう程、俺は愚かじゃない。俺はリングを触っていた右手を、話す。するとマーキュリーは、1度頷いて、口元が笑う。
この牢には椅子が二つあり、俺とマーキュリーは反対側の壁に向かい合って座ることにした。そして、
「マーキュリーさん! アルミシアは、あんな感じなんですか!?」
「あんな感じです!」
「そうですか! ありがとうございます! 後で一発殴ります!」
そりゃ文句も言いたいだろ。何も言わずに、いきなり牢にぶち込まれるなんて、SFじゃないんだからさ。せめて一言ぐらいあっても良くないか? と思ってしまう。
「ご迷惑をおかけしますね。客人よ」
その表情を察したのか、優しい声でマーキュリーは俺に語り掛けた。その表情は、どちらかと言えば、仲間と言うより妹を語る声である。
「あの子は、少し独善的と言いますか、事を急ぐ性格なのですよ。誰もがそうだとは思いますが、彼女の場合それが極端に伸びている。恐らくは過去の出来事が原因。自身の行動の遅さで、悲劇が起きたのでしょう。なのであまり責めないで上げてください。今回はこれですが、彼女の美徳でも有るんですよ?」
それは本当に悲しい目をしていた。近くにいながら、何かを止められなかった後悔の目。声も先程と同じ、柔らかく明るい声だが、少しどこか澱んで聞こえるほど感情が表に出てしまっている。
そして、これで更に彼女に言及する程俺は子供じゃない。それに、話してて気づいた。この人……目が――
「まぁそれはいいですよ。ホワイトハウスで慣れてますから。
それで? 私達はここで何をすればいいのですか? 罪を償えという訳でも無いでしょう?」
「えぇ、理解が早くて助かります。私達の目的はこの刑務所の第8層まで降りる事です」
8層まで? 何の話だ? と、思っていると、親切にマーキュリーが説明してくれる。ため息は、俺ではなく、あのおてんば娘にたいしてだろう。
「全く……あの子はこれも説明してないんですね。成程、ではこの刑務所について少しお話を――」
マーキュリーの話を要約すると大体こうなっている。
この刑務所「ダストボックス」は、第8層からなる超巨大螺旋構造建造物との事。要は、俺がいるところが第1階で、下にはあと7階のマンションがあると思ってくれればいい。
そして、この刑務所の1番の特徴が本人の努力次第で、刑期が短くなるという点だ。
「刑期が短くなるのは、当たり前では?」
「あなたが言っているのは、本人の素行や時間経過による当然の刑期の削減。これにはどうしようと時間がかかります。
ですが、ここは可能であれば一日で刑期を短くする事が出来ます」
「1日で? 合法的に?」
「当たり前です。第2層に降りる。それが刑期が短くなった証なのです」
第1層から第2層に、そして最後は第8層に降り続ければ、強制的にダストボックスから脱出できるとの事。これは、囚人達に与えられた当然の権利であり、例外は無く釈放……ね。まぁ――
「裏があるんでしょ?」
「それもそうですね。裏というか、刑期を短くすると言うことは、刑務所に挑戦するという事。失敗すれば、自身の何かを失う事になります。そう……私の【目】のようにね」
「……やっぱり見えないんですね。貴方の目」
「おや、目は隠してないので察せないと思っていましたが、仕草等で分かってしまうのですね。
そうです。私事マーキュリーは目が見えません。更に言うと、目の機能は死んでおりませんが、視覚を奪われたという方が正しいでしょうか?」
……随分ときな臭いな。確かに刑期を短くするという事にリスクが無いとは思っていなかったが、それにしても――な。
少しづつマーキュリーの雰囲気が重くなっている。まぁ、過去でも思いだしたのだろう。だが済まないね。もうひとつ知らなければいけない。
「それで? 第2層に降りる方法は?」
「それは簡単です。全ての層には、エリアボスという看守長がいます。それを倒す次の層に降りていく。それが、刑期を短くする唯一の方法です。そしてその為に、第1層の人間と結託して挑む必要があります」
つまりレイドのような物か。それを最低でも八回。相手のフィールドで戦う。うーん、長くなりそう。大丈夫かな? ハクア。
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「因みに1回貴方は外に出ていたということは、第8層まで降りたんですか?」
「いえ、私は脱出を諦めようとしていた時、アルミシアに問答無用で連れていかれ、訳も分からないまま脱獄してしまいました」
(昔からなんだなー。あの性格……)
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