電王VS固有魔法
ちょっとタイトル変えました。いちいち打つのだるかったので
割れた空間から出てきた俺の知っている少女。
その体は、誰よりも華奢でそれでいて、眼光は鋭い。牡丹のような狼…それがアルミシアである。
「電王…随分とせわしないのですね」
「誰のせいだと思っているんだ? お前が首を出せば、この国は俺の理想郷として平和になるというのに。
それとも、渡す気になったか? 先代電王がお前に託した【皇帝特権】を」
電王の軽い言動に少しづつ、アルミシアの視線が重くなる。
「ふざけるな。お父様が、目指した理想郷を壊そうとするゴミが。ブレインは渡さない。お前は、私が殺すのです」
電王は、ひとつため息をしながら、頭を抱える。
「…全く近頃の女は、品性というものがない。だから、そんな迷うんだよ」
「――もういい。【皇帝特権発動・クスノキとユーロのダメージをゼロに】第2Rなのです」
その瞬間、辛うじて聞いていた俺の体が、軽くなり絶好調レベルまで、体調が戻る。
それを見た電王は、1つ舌打ちをして戦闘体制に戻る。
既にユーロも復活していた。これなら――
「ありがとうございます。アルミシア」
「礼はいいのです。勝てるのです? 電王に」
「さぁ? でも、あれだけ打ち込まれましたから。一撃ぐらい与えたいでしょうよ」
「…ふっ。そうですか」
ここから、3対1の戦いが始まる。
「さてと、話は済んだか? 誰から死にたい?」
電王の挑発を無視して、俺達は話し合う。
「で? どうするよ。私達の攻撃はあいつには通じない。なのに、くすっちの顔面には一撃が入ったんだもんね」
「…最後の部分いりました?」
「あぁそれなら私が無効化しておくのです。だからさっさと行くのですよ」
成程それなら――
俺は拳を構えた。1発ぶん殴る形で。
同じくユーロも構えたが――
「ユーロ、私だけでいいです」
「ん? あぁそう。じゃあ任せたわ」
ユーロは戦闘体勢を止める。それを見たアルミシアは、何も言わずにこちらを見ていた。
悪いな、別にプライドでもなんでもないが、こいつは俺が一発思いっきりぶん殴りたいんだ。
だが、それを見ていた電王はプライドが傷つけられたようで――
「侮辱しているのか? 人間が」
「何の話ですか?」
「言ったはずだ。俺の名は電王。お前達が何をやっても叶わない頂上的存在――」
「あぁ、もういいので黙って下さい」
【固有魔法…勇者生誕】
一撃だった。クスノキの一撃が、電王の腹に直撃する。
あまりの衝撃と痛みに内容物を吹き出しそうになる電王。何が起きたのか分からず、大きく吹き飛んでいく。
クスノキの拳からは、湯気が出ておりどれだけの力が放出されたのかは、説明するまでも無い。
そして、
「…まぁ、当然なのです」と言うアルミシアに、「へぇ、驚いてないね」と返すユーロ。
アルミシアは、溜息をつきながら憂鬱そうに話す。
「認めたくはありませんが、彼女は死王すら打ち倒した者。状況さえ揃えれば、電王等に遅れをとる筈も無いのです」
それを聞いて、ユーロはクスノキを見ながら、一言ポツリと喋る。
「成程ね。あれが、死王すら打ち倒した力。クスっちの固有魔法…ね。(あれだけの出力…どれだけの代償を払ったんだか…)随分と難儀な力だ」
悲しい目で見る、ユーロの姿がそこにはある。
「ゲボ。ゲボっ! バカ…な」
クスノキの前には、今にも意識を失いそうになっている電王がいた。視界は二日酔いのようにクラクラとしており、口から内容物が零れそうになる。
(バカ…な。何だこの力は。アルミシアが無効化したのは、俺に攻撃不可能という自称だけ。
つまり、俺は単純にフィジカルだけで、吹き飛ばされたということ…有り得るのか? 俺は電王だぞ?)
自分の方へ向かってくるクスノキ。電王は初めて、恐怖という感情が芽生えてくる。先程まで、捕食者であり、捕食対象だと思ってた奴が蓋を開ければ自分より遥かに強い肉食動物だったのだ。
「まだ、やりますか?」
電王は知っている。クスノキの目を。見下し、電王が1番イラつく感情である【蔑み】である。歯ぎしりが強くなる。電王としてのプライドが降参を許さなかった。
電王は大きくジャンプする。クスノキは「まだやるんですね」と、見上げるだけで何もしない。それがさらに電王をイラつかせる。
彼の額には汗が流れ出るが、それを気にしているほど余裕も無い。
「ハハハ! まさかてめぇに俺の切り札を使わされる事になるとはな! 【権限発動】ブレインよ! クスノキの固有魔法を解析しろ!!」
その声と共に、クスノキの周りをレーザーが回り、彼女の体を隅々調べ始める。それをされても、クスノキは一切動かない。彼女にとっても都合がいいからだ。
「いいのか、クスノキ! このままだとお前の能力が丸裸にされるぞ!」
「…それは好都合ですね。実際私もこれの能力を知りたかったんですよ。あれは【発動すれば分かる】とか言ってましたし」
電王にはクスノキが、何を言っているのか分からないが、とにかくクスノキが電王を舐め腐っているのは理解出来た。
(だが、それも今終わる。お前の能力を全て無効化してやろう!)と、自信満々だった電王に、解析結果が、映し出される。
「……は? 【解析不能】…? バカな」
電王の思考がショートする。今まで、この解析で電王が臨む答え以外を示した事は無い。何故なら
(馬鹿な…ありえない。この解析は、俺の力では無い。ブレインという1つの国を、解析というシステムに置き換えている。つまり…こいつの能力は、ブレインという巨大国家を使っても解析出来なかったという事か!?)
電王が、驚愕するのも無理はない。クスノキの力は月王と魔王の力が宿っている。6王でも、2強である力。解析出来るわけが無いのだ。
だが、この結果はある意味、電王に選択肢を与える。もはや、プライドを守っている時では無いと。
だが、電王が下を向くと、既にクスノキはおらず自分より遥か上におり、彼女の拳で電王は下に落ちる。凄まじい勢いは、砂浜にクレーターを生み出す程で、風は爆弾のように広がっていく。
今起きたのはたった2発で、電王が事実上のノックアウトしたという事。つまりは、クスノキの力はアルピスの何倍も膨れ上がっている。
勿論彼女にそんな自覚はない。だが、今この状況。それが全てをものがっている。
「…くそがァァ!!!」
クスノキの前から、電王が穴に落ちたように消える。そして次の瞬間、近くから源泉のように同じ体勢で現れた。だが、その瞳は笑っておりクスノキも状況を理解して、目を鋭くする。
「電王、貴方本当に小物ですね」
「…ハァ…ハァ…小物でなによりだ。そして俺の勝ちだ勇者。いいぜ攻撃しろよ。【こいつ】がどうなってもいいのならなぁ!!」
電王が、右手に持っていたのは意識のないハクア。左手で手刀の様に構えており、直ぐに殺せる体勢になっている。
ピエロの様に笑う電王と、心底軽蔑するクスノキ。両者は睨み合い、拮抗していた。
「それで? 貴方の目的は?」
「ハァ…ハァ。本当に屈辱だ。まさか、お前如きに撤退をしなければいけないとはな!」
クスノキは舌打ちをする。だがもう遅い。既に電王は、撤退の魔法を使っており、どうしたってハクアを救出することは出来ない。
それは両者分かっていることだ。だからこそ、
「奪いに来いと?」
「あぁそうだ。こいつを返して欲しければ、刑務所に来い! 勿論俺はお前を全力で拒絶する。それでも、こいつを救いたければ、最下層まで来ることだな!! それから、ユーロと言ったか!?」
ここで、話を振られるとは思っていなかったユーロが「ん?」と、少し興味を示す。
「テメェの妹も、こいつと同じで最下層にいる。救いたきゃ降りてこい!」
「…言われなくても救うさ。お前をぶん殴ってな」
徐々に電王の体が沈んでいく。1度の別れが訪れる。目を閉じ、何も言わないハクアを見て、クスノキは1つ「必ず助け出します」と、小さい誓いを誰にも聞こえない声で言う。
「随分と、堕ちたのですね。電王」
「いや、俺は元々こうさアルミシア。幻滅でもしたか?」
「まさか、お前の幻滅など私が産まれる前からし終えているのです」
そして、電王は消える。最後に、三人を極限まで煽って
「じゃあな! 英雄共! 最下層で待ってやるよ! まぁ、次会う時にはお前達の首には、首輪が着いているだろうがなぁ! ギャハハハ!!」
胸糞悪い声と、終わった後の青雀が三人にまとわりつく。
フィジカル、戦略、器、全てにおいて三人が勝っていたが、勝負においては、
「すみません。負けました」
クスノキの完全敗北である。
ハクアは連れ去られ、電王を逃がす。だがその状況でも、クスノキはキョトンとした顔で、二人を見て話す。
それを見た二人は、
「まぁ仕方ないっしょ。助けに行くんだろ?」
「そうなのですよ。取り返せばいいだけの話なのです」
ブレインの楽しい旅は、一旦終了。ここからは、人間の欲がみなぎる地下刑務所に忍び込まなければならない。その為にも、
「二人とも、力を貸して下さい」
「おうよ」
「…仕方ないのです」
ここから、ブレインの戦いは幕を開ける。まだどちらも王手を打ててない状態。盤面を先に構築できるのは、電王かクスノキか…それとも?
???「いやー、すごい戦いだったねー。こりゃ不味い。あっしもここから退散ですなー。【楽王】も、暇なじゃないんだよなー。これがね!」
【次回 星の出て立ち編 2章 「刑務所編」開幕】
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