勇者と規格外と箱庭の姫
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ブレインの地下深く。
誰も触れない地獄の世界。罪を犯した者共の出られない箱庭。楽園実験など程遠い。呻き声しか出ない大穴だ。
「助けてくれ…」
「いっその事…殺してくれ」
――そんな無惨な声しか聞こえない、地獄の蓋が今、開こうとしていた。
◇◇◇◇
「という訳でクスノキ、あなたは帰ってくれなのです」
「いきなり唐突ですね。まぁ、自由に行動してくれという意味ですよね?」
「それ以外になんの意味が?」
こいつ…と思ったが、俺は大人。もう、慣れたと言ってもいい。アルミシアの、フフッという表情も俺からすれば、少し鳴き声の可愛いオウムのようなものだ。
いや、そう思え。思うしかない。
「それとも、あとのふたりが帰ってくるまで待ちますか?」
「いえ、それは――」
【ピキッ!!】
俺とアルミシアは、音の方向を見た。なんか、壁にヒビ入ってるけど、気のせいだよね?
アルミシアは、小さく「は?」と言っているけども…
「これは、ヒビですか?」
「……嘘です。ありえない。ブレインの壁に、ヒビを入れるなんて――」
はぁ、もういいや。こんなことが出来るやつなんて、あいつしか居ない。相変わらずの規格外だ。
「戦闘準備!」とアルミシアが叫ぶが、俺が止める。てか、止めないとここが終わる。
来たのは、
「貴方、もうちょいお淑やかにこれないんですか?」
「いやだって、焦ってたし。クスっちが拉致されたと思ってさ」
はいはい、まずは謝りましょうねー。とんでもないことが起きて、思考がフリーズしている彼女に。
「アルミシア、大丈夫ですか?」
「…は、あ、ありえない。どうやって…ヒビを」
「ですって、ユーロ。どうやってここまで?」
「ん? そりゃ――」
と、ユーロは、両手をドヤ顔で見せている。おいおい、まさか脳筋にも程があるだろ。
「――クスっちの気配は感じていたから、手で掘ったんだぜぃ」
「…掘った?」
アルミシアが更にフリーズする。世ほど有り得ない事らしい。
だってその証拠に、鳩が豆鉄砲食らった顔してるもん。
「掘った? はぁぁぁ!!? 掘れる訳ないのです! このブレインの物質は、全てデータの塊! 存在していない。全て、オブジェクトとして管理されているのです!
つまり、それを掘ったということは、ブレインという概念に干渉したと同義なのですよ!?」
その怒涛の言葉に、ユーロは一つだけ答える。
「うん。それが出来たから、ここにいるんだぜぃ」
「…ありえない。電王ですら出来ないことを、部外者がやるなんて…」
ユーロは、その場にへたり込む。どうやら、余程の衝撃だったようだ。
クスノキは、ただ「なんかすみません」と、呟いた。そして右手でユーロの後頭部を持って、頭を下げる。
「なんで?」と言うユーロと、雰囲気的に謝っておこうと思うクスノキであった。
これは、十中八九サタンの力である。ユーロは掘れるから来た訳ではなく、なんか地面殴ったら、いけたから来ただけだ。
まぁ、それをアルミシアが知る由もないのだが。それもそのはず。ただの王女が魔王すら封印した勇者の力を受け継いでいる等、想像つくはずが無い。
アルミシアは、息を整えて話す。
「…まぁ、納得しましたよ――といか、するしか無いのです。ヒビを入れて、こちらに侵入したのは事実。味方であれば、頼りになるのです」
「ですって。私達の計画に乗りますか?」
「いいよ。どうせ刑務所には、用があるし」
◇◇◇◇◇
「それで良かったのですか?」
「…何の話です?」
クスノキ達が、ホテルに帰り、アクセサとアロンも違う場所にワープした。
残るのは、アルミシアとマーキュリーのみ。だが、その空気は悪く。緊迫と沈黙がその場を支配する。
アルミシアは、顔を見せずに背を向けている。マーキュリーは、目を閉じて、アルミシアを見ずに話を続けた。
「彼女の目的です。あれが本当なら――」
「えぇ、急がなくてはいけません」
「アルミシア……」
「………――それともなんです?」
アルミシアは振り返って、マーキュリーを見ながら、
「彼女の妹はもう死んでいる可能性が高いと、言えばよかったのですか?」
「………」
「まだ、可能性が消えた訳じゃないのです。それに、私達の助け出すべき存在も、刑務所にいるのですから」
マーキュリーは何も言えない。知っているのだ、アルミシアの現状を。彼女は決して、気まぐれでクーデターを起こそうとはしていない。革命を成功させなくてはいけない理由があるのだ。
アルミシアは、壁のヒビを触る。未だに、修復できないヒビを見て、落胆でもなく高揚していた。
「…まさか、壁を破壊出来るやつがいるとは。あの二人は台風の目です。活かさない手は無い。違いますか? マーキュリー」
「…どうとでも。私達のリーダーは貴方です。あの地獄から救出してくれた恩ぐらいは働きます。ですが――余り気負いせずに…ね」
そして、マーキュリーも消える。残ったのは、アルミシアと静寂のみ。
彼女は、手に力が入り、握った拳を見て誓う。
「そう、これは私の罪なのです。生きているかも、形があるかも分かりません。ですが、まだ助けを求めているのであれば、必ず助け出します――兄さん。そして、必ず殺してやるのです――電王」
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