もうひとつの名
落ちた穴の先、それはよく分からん世界だった。
地下室とも違う、未知の物質で構成された大穴。
触れても何も感じない。触覚が機能していない。
「未知の物質に安易に触る。その馬鹿さは治ってないのですね」
「……私からお金を盗もうとしていた奴に言われたくないです」
「…!? いつの話をしているのです!?」
「最近の話ですが何か!?」
バチバチと、二人の関係性が目に見えており、それを見ても誰も止めるものはいない。
「なんか…あんなにげんきな隊長久しぶりに見たな」
「ねー」
等という始末。てか――
「あなたやっぱりこっちだったんですね。アクセサさん。アルミシアの名前でそっぽを向くなんて」
「ん? あぁ済まないね」
この穴の中にいたのは、四人。その内の一人は、先程よく見た人間で俺達を助けてくれた人間だ。アクセサ…そんな気はしていたけどね。
「因みに、どこまでが偶然ですか?」
「あぁ、アルミシアに案内をしてくれとは言われた。ただ、バグの処理はマジの偶然。悪いな、普通あんな所に湧かないんだが」
「へぇ――それが本当だと?」
「試してみるか?」
剣と銃が抜かれる瞬間、
「やめなさい。主はここで争う事を望んでいません」
止めたのは、他にいた二人。白いローブを被った顔の見えない女性。何も喋らないから、そういう人だと思っていたけど、
「喋れたんですね」
「喋れないとお気遣いしてくれたのは、感謝します。実際喋るのは、好きではありません。
私はブレイン解放軍の【マーキュリー】と申します。以後お見知り置きを」
「えぇ、よろしくお願いします」
――掴めない人だなと思った。声も、体も全く動かない。まるで、何も感じてないように、全てが棒読みなのだ。感情がないと言ってもいい。どうであれ、不気味な人間だ。警戒は――しておくか。
続けてアルミシアが言う、
「アロン…最後なのです。挨拶を」
「…アロンだ」
「他は?」
「……」
異質だった。そりゃそうだ。だって一人だけ、ゲームしているんだもん。ピコピコとゲーム機だけを見て、1度もこちらを見ようとしない。
一言でいえば粗暴って感じ。髪はボサボサ。目にはクマが、口からはため息ばっかりでている。
「はぁ、全く。これだから…すみません、クスノキ。あと二人のメンバーは、まだ社交的なのですが…今は、他の場所に言ってしまってるのです」
「別にいいですよ。個性的なメンバーですね」
「それ、なんのフォローにもなってないのです」
そして、アルミシアは息を整え、確認を取る。
「クスノキ、ブレインに来たということは、約束を守りに来たと取っていいのですね?」
「えぇ、文字通り助けに来ました。私の力がいるか知りませんが」
「ないよりマシなのです。特に私達はブレインを自由に動けない。まだ何も警戒されてない貴方たちは、ジョーカーなのです」
クスノキは、少し疑問に思う。確かに、アルミシアは顔が割れている可能性もある。
ただそれだけでは? と。実際アルミシアはホワイトハウスに来ていた、つまり国外へは出れたと言う事。
だが、アルミシアはそれを察知して先に答える。
「私がホワイトハウスにいる間に、状況が変わったのです。私達の顔が割れてしまいました。ゴミ箱の対応が早くなってきてるのです」
「…そのさっきから、ゴミ箱って何なんですか?」
「え?」
俺の問いに、目を開くアルミシア。どうやら余程衝撃だったよう。
彼女は、ため息をついた後、自分の手の甲を見せる。
「これは【焼印】ですか?」
「そうです。ゴミ箱に入ったものは、全員がこの焼印をいれられます。囚人の証なのです」
「囚人?」
「…ブレインには、もうひとつの呼び名があるのです。電脳国では無い、この国の【地下】
そこは――監獄なのです。データの世界で、入れば二度と脱げ出せない刑務所。名を――」
抜け出せないゴミ箱
「――環境最悪の極悪刑務所なのです」
「…嘘でしょ?」
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