死王の最後
ほんのちょっとだけ、サタンの旅路です。詳しくはもうちょい後に書きます
ある日の朝…
「魔王と勇者が戦うって?」
――うん。と、俺は答える。別に大したことじゃない。ただの文化祭での決め事。
あんだけ賑わっていたクラスは、夜八時過ぎという事もあり、静寂が学校を包んでいる。
ただ、その中に二人だけ。無断で教室を使用しながら、明日の予定を話している。
秘密基地だった。制服を着た男女は、そこであるシナリオを書く。荒唐無稽だが、二人はそれを書きたいと思った。
だって――
「普通に劇やってもつまらないもんな」
「だよね。どうしようか? なんかオプションをつける?」
「オプション?」
そう、と彼女は続ける。
それは、お星様の願いだと。何も言えず、ただこちらを見ているしかできない、星からの贈り物だと。
「そうだね。魔王と勇者が協力するのは?」
「敵はどこだよ」
「あ、そっか。敵…敵…敵っている?」
少女の純粋な疑問に、男は口を開ける。聞いたことも無い。劇で、勇者と魔王を使い戦わない劇などは。
「お前なー。さすがにダメだよ。みんなが了承しない。だって、それは物語として成立してないからな」
「勇者も魔王も、この名を背負うまでいっぱい傷ついたと思う。なのに、また戦うなんて――」
少女の言葉に、男はやるせない気持ちを出す。
理解は出来た。現実でも、戦わない道があるのなら、それが一番。ハッピーエンド直行であれば、誰でもそうする。
だが、現実はそうではない。これを出してまえば、劇は冷たくなり、誰も見なくなる。それは困る、だけど、
――それは嫌か?
――うん。嫌。
そうか。と彼は、1つの物語を語った。
その昔、死王というこの世の癌が居た。生きる事を望まれず、皮肉も死王が1番死を望まれている。
ある日、彼はある人間に出会った。それはまだ勇者と呼べないひよっこの青年。
「死王…。そうか、一緒に来るか?」
「…敵だぞ。俺は」
「そうだね。確かに君は敵だ。だが、討伐するのは旅を終えた後でも問題は無い」
あるだろ…と死王は思ったが、それはそれ。食うあても無かったし、流石にこれ以上一人は彼には辛すぎる罰だった。
よって、勇者と死王の二人旅が始まった。凸凹なんて物じゃない。不思議なコンビだった。
「敵なのに、一緒になったの?」
「それがお前の願いじゃないのか?」
「ううーん。激しく同意したいけど、裏切りそうだね彼」
旅は順調だった。様々な国を見て、そして滅びを見て、誕生を見た。
死とは何か、生とは何か。死王も旅をして、それを解りたいと思っていた。
「なぁ、勇者」
「ん?」
「死王たるものが、死を慈しむ。滑稽だと思うか?」
「滑稽…と言うよりは、本末転倒な気がするが、俺は笑わないよ。それもお前なんだろうさ」
そして、
「いいよ」
「……」
「結果は? もう時間が無い」
少女の答えに、何も答えず男は椅子から倒れ、地べたに落ちる。
大きな音がしても、誰も来ない。当たり前だ。この世界はこの二人以外の人類が存在しないのだから。
男は告げる。
「そうか、俺は死んだか」
「えぇ。死王、あなたは死にました」
「……そうか。やっと、、死ねたか」
ここは精神世界。行き着く魂の終着点。
朝が来て夜が来るように、生まれて死ぬように、死んで生まれ変わるように、全ては輪廻している。
そして、それは死王も同じ事。
彼は、ようやく死ねたのだ。神すら殺す誰も守れない力と離れられる。
なのに――
「そんなに、嬉しくなさそうですね。死王」
「まぁな。心残りはある。…最後まで見つけられなかったな。あの答え――」
「答え?」
「人は何故生まれ変わるのか…だ。まぁそれは生王が代わりに解き明かしてくれるだろうよ」
死王は、もうすぐ消える。この世界から完全に消滅するのだ。
彼は校舎の窓から、外を見る。意識は今も、流れ星のように徐々に削られているにも関わらず、彼の心はずっと穏やかだった。
死王は願う。ここに来ないようにと。いつかまた、誰かと会えますようにと。
そして、出来ればその相手は、勇者でありますように……と。
読んでいただき本当にありがとうございます!
――と、言う訳で、次より電脳国ブレイン。星の出で立ち編がスタートです。
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