表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永劫回帰は夢を見ない  作者: ユナ
涙花赤銅編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

248/277

魔王再誕

夜の国 アフトラザニア


ここは、道楽に溺れた金持ち共が自身の欲求を満たすために、作った大人の国。

奴隷が監禁され、次々に生み出される。それはまさに地獄絵図。

権力を持つものだけが幸せになる、この世の縮図と言ってもいい、国だ。

だが――この国は今日消える。だから覚えなくていい。


そんな国は、初めからなかったのだから。


そこに、一つの閃光が落ちる。質量を持った何か、急スピードで飛んできたそれは、王宮に衝突し建物を破壊する。

来たのは魔王。生首だけのクローンを持ち、王の死体を踏み潰す。

ようやく、ようやく魔王の称号が取り戻される。なのに彼の心は、喜びとは反対の感情が溢れ出していた。

近くにいた奴隷にすら気づかず、そこから見える少し綺麗な夜景を見ていた。

何も感じない。世間では、人生で一度は見た方がいい夜景と言われようと、彼の心は石像のように動かなかった。


「聖王…つまらん死に方をしやがって」

「…ひっ!」


その声に、魔王は目をずらしやっと奴隷を認識する。

だが、興味は無く冷たい雨のような視線で奴隷を見る。


「悪いな。興味が無い」


血飛沫が舞う。誰のか等、問う必要すら無い。

魔王の視線は、最初から空を見ていた。やっとだ。ついに念願が叶う。

これは天啓である。天の意思である。魔王の願いである。序幕の始まりである。


生まれたのか、蘇ったのか、それは分からない。ただ、称号が蘇る。

人々の意識に、魔王が入り込む。それは概念的に感染を始め、遂には――


「魔王ってまだ生きているの?」

「魔王が帰ってきた」

「勇者はいないのに」

「だれか助けてくれ…」


――魔王の枷が外れていく。重かった手は軽くなり、動かなかった足は徐々に自由が効き始める。

錆び付いた全身は、新品に変わっていく。心音が鳴り響く、絶望が這い上がってくる。


「俺か思うに魔王とは、人間が受けるべき傷である。滅ぼす悪でも無く、滅ぼされる悪でも無い、純粋な力の証明で無ければならない」


魔王は、自らの信念を呟きながら、進化の快楽に酔う。

覚えがあるはずだ。新しいおもちゃを買った時、その剣で敵を殺そうとした時が、頭の中の敵を皆殺しにした事が。



「あ? 退治?」

「えぇ、そうです。貴方には、もうひとつ世界を救って欲しいんですよ。1個できたのなら、もうひとつなんて楽勝でしょ?」

「何を根拠に――」

「出来ないのなら、今あなたをここで殺します。月王の名にかけて、めんどいのは嫌いなのですよ」

「……イカれてるよ。お前」


懐かしい記憶を噛み砕いて、今を見る。あの時、どの選択が正解だったかは、結局分からないまま。

それでも魔王は、前に進む。例えそれが、世界中の人間の非難の的であったとしても、彼の目を見て止めるヤツがいなければ、空気も同然なのだ。

進化が終わる。目を開ければ、いつもと変わらない景色。

当然だ。別に背丈や身体が変わったわけじゃ無い。寧ろ元に戻っただけ。


今より、アリスは【魔王アリス】として、本当に再誕した。生き動く地獄の兵器が動き出したのだ。


「さてと、()()()に行く前に、肩慣らしといくか」


王宮にSPが、入ってくる。多種多様な武器を持って、魔王を殺しにくる。

最初こそ、魔王の視線だけで震え上がったSPだが、臆病な自分を騙し攻撃に転ずる。


「死ね、魔――あぎゃ!」


最初に、ピストルを持っていた男の頭が弾ける。赤い花火は、周囲の服や顔に壁を汚して、悲鳴を連鎖させる。

魔王から見れば、生命の終わる時などいくらでも見てきた。今日も同じ。

世界は電力と同じ。回れば必ず抵抗が生まれる。だが、この世界にはそれが無い。ならば――


「来い、人間。俺の名は魔王アリス。お前達が世界を愛すのならば、おれが壊そう。世界終了の鐘を鳴らせ!」


魔王の魔力により、王宮の壁にヒビが入る。ヒビが入ったのは、SPの心にも。

逃げ出そうとする者がいる――


「逃げるな」


発したのは魔王。SPの動きが止まる。


「逃げたら殺す。そいつから殺す。立ち向かえ、これはお前たち人間が、殺すべき災厄だ。殺せ、やってみろ。お前の全身で俺を殺してみろ」


無理難題だ。これは蟻にICBMを止めろと言っている様なもの。

SPの表情は曇っていく。血流が上がり、アドレナリンの高揚効果も、最大まで登ろうと、恐怖と強圧が、全てをかき消していく。

痺れを切らしたSPが逃げ、殺される。


「――まぁ、そうだよな。人間は俺が思っている以上に強くない。勇者や、バカじゃない限り、俺を殺そうなんて発想は浮かばない。

だが、それはもうひとつの答えを生む。滅亡していいって事だろ?」


魔王は足を上げる。大きな足音を鳴らすと、地面に魔法陣が形成される。

これは、魔王の意思では無い。彼が動作を行えば勝手に魔法が発動するのだ。

魔王とは反対の純白の光。それが夜の国を包み込む。言い方さえ綺麗だが、この光は全てを滅ぼす醜悪の光である。

夜の国は今日終わる。眠る人、叫ぶ人、逃げ惑うやつ全てに平等な死を与える。


◇◇◇◇◇◇◇


塵となった国で、1人佇む魔王。

星が見える。その星は遠すぎるため届かない。それだけなのだ。それだけで、人は星を掴む魅力を忘れてしまう。

ただ、一言いえる。それは魔王にとって些細であると。

確実に魔王は見えている。目指すべき場所を。


「終わったか?」

「あぁ…」


追いついた怒王は、魔王と合流する。

先程まで自分が見ていた理想郷が、今では荒廃と化している。それを見ても、少ししか心は動かない。


「ここの料理好きだったんだけどなー」

「仕方ないだろう。これがここの運命だ」

「お前が、降りたんだろ!?」


魔王は、少し笑って怒王の横を通る。そして次なる目的地を告げるのだ。


「行くぞ」

「行くって、どこにだ?」

「魔王の称号を取り戻し、やっとやつの居場所がわかった。天空【パラダイス・ロスト】か。そりゃあ見つからんよ」

「何の話――」

()()に会いにいくぞ」


その言葉に、怒王は目を見開く。

称号を持つものなら誰でも知っている。それは――


「生きていたのか!? あれが」

「あぁ。俺と同じ始まりの100年の生き残り。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()全ての元凶だ。原初の王。名を――」


原王(げんおう) ワールド・プリテンダー〃



◇◇◇◇


「そういえば死王はどうなったんだ?」

「死んだぞ」

「殺したのは、お前か? それともムーンか?」

「どちらもハズレだ。あの勇者の卵だよ。殺したのは」

「…マジか。ここまで来ると会ってみたくあるな」

「いずれ会えるさ。まだあいつには利用価値があるからな」


読んでいただき本当にありがとうございます!


星を増やしてくれるとありがたいです。


面白かったと思ったらブックマーク!


感想やレビューもお待ちしております!


星ももちろん大歓迎!


具体的には広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にね。


そうするとロリのやる気が上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ