邪王のお茶会
コツ…コツ…コツ。
暗い廊下に足音だけが響く。
矛盾している廊下。光はなく、廊下は黒で塗りつぶされているにも関わらず、何故か明るい。
廊下の外は黒い何かが蠢いており、目が合うと嫌なので、そいつは前だけを見て歩く。
「さて。時間通りか」
その者はシロと呼ばれた、狼の生まれ変わり。
ため息すら出ない任務に行ったらため息が出る結果に終わった苦労人。
死王は死に、処分しようとしていた狂王も死んだ。もはや失態この上ない物で、これから来る集会に足取りが重くなる。
(せめて、あいつがいなければ楽なんだが。今回は私の失態。見逃すようなやつじゃない…か)
足が止まる。大きな扉、ギギギ…と鳴りながら開き出す。
その先には【4人】の称号持ちがいた。
ディスガイアの5人の側近。
プリスを一撃で殺したシロでさえ、まだ四番目という魔窟である。
そして今日は、5人全員が揃うという本当に珍しい日であった。
「あら? 新人がいちばん遅いなんて…大きくなったものね」
「【女王】…私には任務があった」
「知っているわ。からかっただけよ。本気にしないでね」
赤いドレスに、黒い髪。目は星のように青い瞳。
ワインを持ちながら、挑発してくる彼女。
名を 女王 【ミスト・プラングニル】
ディスガイア側近ナンバー2である。彼女の右手に刻まれた2というマーク。
それが彼女の強さを証明しているのだ。
「任務!? それが遅れていい理由になるとでも!?」
女王の席は、右側の1番奥。そして左側の1番前が空いていた。
だがそこは、一瞬にして粘液が溢れ出しミストでさえ、目を細める。
そしてその粘液は直ぐに人型に変わり、いつも誰かを邪魔するガキに変わる。
名を 涙王 シャイミール・アクアマリン
ディスガイア側近ナンバー3である。
そして…シロとは文字通り犬猿の仲だ。苦しんで生き続けたシャイミールからすれば、直ぐに幹部になるシロなど、目障りで仕方ないだろう。
「新入りが遅刻をするなど言語道断! 死刑! 殺戮! 幹部降格です!」
「…お前に決定権は無いだろう」
「お前だと!? オオカミの癖に生意気だな!」
「スライムに言われたくない」
「あ?」
「あ?」
殺気が飛ぶ。
「あら…」と、ミストの持っているワインのガラスにヒビが入る。
方や原初の魔物、方や邪王に気にいられたオオカミ。
喧嘩が始まる。片方は、手の形が崩れ粘液と化し、方や背中の大剣を抜こうとする。
「――やめろ」
殺気が吹き飛ぶ。いや、正確に言えば二人の殺気が軽くあしらわれるほど強い殺気が、奥から流れ出る。
ミストの反対側、ディスガイア側近ナンバー1。
ディスガイアを除けば、クスノキが戦う敵の中でも最強。それは、星のバグとも言っていい、規格外の生命体。
【神王 アダム・テンドアース】
白髪の短髪に、ガタイのいい筋肉。右目は潰れ、眼帯をしている男性。
服は金色の鎧に、顔には少しの髭。目は普通。
「いい加減にしろ、お前達ふたりは何処まで俺を失望させれば気が済む」
持っていたナイフにヒビが入る。力を入れていない。ただ殺気だけで、全てを支配する。
次元が違うとはこの事。それだけで、狼王と涙王を萎縮させる。
「座れ。もうあの方が到着される」
言われるがままに、シロは席に着く。
今いるのは、
ナンバー1 アダム
ナンバー2 ミスト
ナンバー3 シャイミール
ナンバー4 シロ
ナンバー5には誰もいないが、シロは分かっている。あの席にはいないように見えて…まぁ実際はいないのだが、既にナンバー5は到着しているのだ。
「揃ったか」
扉とは真反対の奥から、歩いてくるディスガイア。
(毎回どこから来るんだ?)とシロは思うが、それを言うとまたシャイミールに噛みつかれる気がするので、黙っている事にした。
ディスガイアは、慣れた仕草で椅子を引いて座る。 そもそも彼に従者はおらず、側近も手伝おうとしない。
前にシャイミールが、でしゃばり椅子を引こうとして殺されかけた事すらある。
それ程邪王のプライドは高いのだ。
「さて、お前達を集めたのは、他でもない」
ディスガイアは、目を細め本題に入ろうとする。
その威圧にシロは唾を飲む。何が来るのか――
「貴様達の総称を決めたいと思ってな」
「「「「はい?」」」」
それが、側近達の言葉だった。
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