勇者VS死王(1)~攻略法~
闘いが始まった。
まずは簡単な組手から始めよう。
「行きますよ 死王!」
「来い、勇者! まずは小手調べだ」
死王に向かって走ると、奴は瓦礫をこちらに投げてきた。三つの大きな瓦礫を、二つかわし一つはぶった斬る。
そしてそのままフォールアウトで、死王の体を切る-――はずだったんだが。
「やはり斬れませんか」
「斬れるとおもったか?」
「まさか」
「だよな」
見ると死王の右足が、蹴りの体勢に移行していた。フォールアウトを鞘にしまい、手を十字にして蹴りを受ける。
「端まで行ってこい」
虫も殺さないような優しい蹴りの勢いだが、それは見た目だけで受けた俺は大きく吹き飛んでいく。
後ろにあった壁を突き破り、その衝撃が体に響く。
…どこまで吹き飛んだ? アルピスから出てはいないはずだが、先程まで見えていた家も、煙すら見えない。まさか、端っこぐらいまで吹き飛んだなんて言わないよな。
てか正直参ってる。強すぎないか? アリスやムーン以下と言ったが、それは単純な実力の話。それ以外のオプションがチートすぎる。
突破口はあるにはあるが、とりあえず攻略しなくちゃいけないのは、あいつの攻撃無効だ。切っても殴っても、全て無効化されている。というか当たってない事にされている可能性すらある。
もう一つは――
「なぁ、クスノキ」
と、もう来ましたか。随分と早いお着きだ。待ってりゃいいのにさ。
瓦礫の上を無音で歩く死王が到着した。
てか、なんで歩くとすらないんだ?
「何ですか?」
「お前はさ、バカとアホの違いってなんだと思う?」
「…なんですか? 藪から棒に」
死王は何も言わず、動くことも無く、こちらを見ていた。どうやら、答えを待っているらしい。
えー、バカとアホの違い? 言葉遊びじゃないだろうし、かと言って、適当に答えるのもだしな。
…たしかナポレオンだっけ? 「真の敵は無能な味方である」的なこと言ってた人は。これこそ、馬鹿の体現みたいな感じだが、それを明確に差分する基準がない。
要は、馬鹿と呼ばれるやつは、アホと呼ばれ無い根拠がないとダメだ。であれば、
「別に違いなんてないですよ。ただ、生き方の問題では?」
「と言うと?」
「私的には、同じ穴の狢だと思いますがね」
「そうか。零点だ」
そう言って、もう一度俺を蹴る死王。今度は振りかぶり、一瞬でこちらに移動してきたが、何とか耐える事に成功した。
だって、これより先に吹き飛んだら…端から落ちたらもうなるかわからんからね。つまり根性です。
痛いな。普通に、自動車が突っ込んできたように痛い。だが、死王は石のような冷たい声で続けた。
「零点だな。馬鹿と阿呆には明確な違いがある。それは、救いようかあるか、ないかだ。あるやつは馬鹿。無いやつは阿呆。後者は殺していい」
「…こっちの質問にも答えてくれませんか? なぜそんな質問を?」
「別に――」
俺の後ろに死王が移動した。手は既にグーになっており、今から殴りますという合図でもある。
…埒が明かないか。仕方ない、やってみるかあれ。
「――気まぐれだよ」
「そうですか!!」
拳を交わし、フォールアウトを抜く。剣を構え「またか…」と思っている死王の目を無視して、体を斬る。
だが、今回は違う。ただ斬るのでは無い。悪いがぶつけさせてもらう。
お前のせいで俺は、ホワイトハウスで地獄の2日間を過ごすことになったんだからな!!
「白刃流白船!!」
その声と共に、死王は目を開きその場から後ずさる。だが、それも遅く体がほんの少しだけ切れる。見た目は腹に紙で切った小さい傷だが、それは大きな一歩たった。
「手応えあり…ですね」
「俺の体に傷をつけたことは褒めてやろう。だが…その刀の太刀筋…見た事あるぞ。生きていたか! 生王!」
そう、俺の刀を鍛えてくれたのは、歴史の闇に沈む死王をサタンと共に封印したもう一人の英雄である。
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