魔王VSクローン(終)
「進化…ねぇ」
魔王はクローンを見て笑う。くだらない5割と、興味あり2割、そう考えている自分に3割。
思えば自分は進化したことがない。魔王と呼ばれたもきも、封印されてから時間が経っても、進化と呼べる成長を経験していない。
だからこそ、くだらないと思った。進化等しなくても、強い奴は多い。むしろ進化するということは、成長にミスがあったということ。
だからこそ魔王は進化しない。それこそ最強の完成された生命体だからだ。
ただ、相手とより長く戦う為に、加減する癖は進化してと治らないのであろう。
◇◇◇
魔王とクローンの戦いは激化していく。クローンの拳はどんどん早くなり、それを受け流す魔王も速さをましていく。
クローンの進化は速さに収束されている。受け流された拳は更に早く、避けれ無かった攻撃は、さらに早く防御し、さらに攻撃を繰り出してる。
そして遂に、クローンの拳が魔王の腹に入る。
(肋骨が逝ったか…!)
魔王は腹を抱えていた。ヨロヨロと体をよろめきながら、下がっていた顔を上げる。
その顔は、苦痛ではなく喜びの笑い顔だった。
魔王は笑いながら話す。
「ハハハ…いいね。舐めてたよ、流石進化だ。俺を殺す為に、死ぬ程学んだんだろ? であれば、これぐらい耐えれるだろ!」
魔王は指を鳴らす。
そしてクローンは構える。本能的に固有魔法の発動を察した。
ムーンを助けるために使った魔王の固有魔法。あれだけで国を滅ぼすことも出来るのであるが――今回は違う。
体に蒸気を纏う。水が沸騰するように、汗が出ては蒸発していく。
「これ使うとムーンが怒るんだけどな」
魔王アリスは、この世界でも異質。その要素は主に二つ。そのうちの一つとして【固有魔法を2つ持っている】という点だ。
固有魔法――魔王とは死の具現 発動。
その言葉と共に、魔王の周辺の因果律がバグっていく。それはクローンから見ても分かる。というか感じるの方が正しい。
先程までとは何かが違うが、それが何かは明確に理由にすることが出来ない。そんな状況だ。
だが、それでもクローンは攻撃を始める。足に力を込め、思いっきり踏み込み、一瞬で魔王の傍に移動し、先程と同じように腹に拳を打ち込んだ。
打ち込んだ、のだが、
「痛てぇな…って言うと思ったか?」
クローンの攻撃は確かに、魔王の腹に当たっている。だが、感触は壁のようで先程までとはまるで手応えが違う。
クローンはもうひとつの拳で腹を殴る。効果なし、さらに追撃、効果無し。連続で何回も殴ろうと、場所も威力も関係なく、攻撃が無かったようにされている感覚だった。
その表情を見た魔王は答え合わせをする。
「正解だ。お前の予想通りお前の攻撃は当たっているが、当たっていない。2次元が3次元に攻撃出来るか? 俺の固有魔法はな、少しだけ俺の存在を押し上げる。だから俺は、お前にも干渉出来ない――とでも思ったか?」
魔王はクローンの右腕を掴み、一撃を腹に足で入れる。軽く石ころを蹴るレベルの威力。そのはずだが、クローンは何も抵抗できず、遠くまで吹き飛んでいく。
数秒間吹き飛んだだろう。何十もの地下の壁をぶち壊し、クローンはたった一撃で動けなくなるほど消耗させられていた。
「お前の敗因は、俺の全力を固有魔法無しで考えた事だ」
壊れた壁から魔王が歩いてくる。瓦礫は彼の当たる瞬間に蒸発し、歩いた場所は全て平になっている。
明らかな異質。月王や涙王とはまた違う異常。それが魔王アリスである。
魔王は不敵に笑って、拳を握る。
「さて、そろそろ俺の目的を達成しよう。国は…そうだな【和平国 ハヤナ】はどうだ? あそこはクスノキも行かない戦争国だ。行こうぜ」
クローンの目の前に魔王がいた。移動ではなく、そこに居た。クローンの蹴りは無効化され、逆に魔王の蹴りで上に吹き飛んでしまう。
地下から地上にあがり、バリアを突き破りさらに上に上がる。クローンが初めて見た空は、皮肉にも上空500メートルに登る雲の上だった。
クローンの顔が掴まれる。魔王はいつの間にか目の前におり、思いっきりハヤナの方向にぶん投げられた。
魔王とクローンの話はここまで。ここからクローンとハヤナの運命は、魔王のみが決める。
ただここで言えるのは、本来ムーンを倒せるはずだった狂王の切り札は、魔王に手も足も出なかったという事実だけだ。
クローンVS魔王アリス 勝者アリス
◇◇◇◇
その時、アルピス付近が曇天で覆われる中、それを見ていた農家は、冷や汗をかいていた。
先程も何かがいきなり上空を滑空していた。あの国に何かが起きているのは確実であり、確認したいが行く勇気などなかった。
そしてその時、アルピスに向かう二人組を見る。目線は確実にその国を見ており、急ぎ足であった。
農家は親切心から忠告をする。
「おいアンタら! あの国は今はまずい! なんの目的があるか知らんが、やめておけ! 死ぬぞ!」
急ぎ足だった二人組のうち、1人の金髪の小さな娘は、こちらを見て少し止まりお辞儀をした。
「…ありがうございます。ですがそれなら尚更急ぎましょう エドさん」
そして二人組は農家の忠告を無視して、国へ走っていった。
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